- Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094088434
作品紹介・あらすじ
恐怖のゲームがはじまった
真面目なだけが取り柄の会社員・倉田太一は、ある夏の日、駅のホームで割り込み男を注意した。すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。
花壇は踏み荒らされ、郵便ポストには瀕死のネコが投げ込まれた。さらに車は傷つけられ、部屋からは盗聴器まで見つかった。
執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカーとの対決を決意する。
一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の疑惑を抱いたことから、窮地に追い込まれていく。
直木賞作家が“身近に潜む恐怖”を描く文庫オリジナル長編。
感想・レビュー・書評
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ほぼ私と同年代の主人公が会社帰りにある男を注意した後に、家族を巻き込むストーカー被害に遭い、会社では上司の不正を発見し、その渦中に巻き込まれていくストーリー。
普通の暮らしがほんのちょっとのことで一変するさまが、あまりにも普通に起こりそうでゾワっとします。
最終的なハッピーエンドは池井戸作品の真骨頂!
いつも楽しく終われる読後感が時々欲しくなりますね。オススメ!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
銀行から中小企業に出向している総務課長の社内&社内トラブル奮闘のお話
自己を守るため正当化するため大なり小なり悪いことする人おるよねー
まがったことは大嫌い!倉田さん貴方は男だよ!
池井戸ワールド面白いわぁ -
円満な社会生活を送っていくために、大人が身につけたもののひとつ「見て見ぬふり」。
ほとんどの人は「注意した方が良いよなぁ・・・」と思う場面に出くわしたことがあるはず。そしてそれはほとんどのひとが常識のある人だと言う証拠でもある。
だけど、実際に行動に移せるかというというとそれは別問題であり、行動に移せないことを責める人はいない。
だって、自分自身も行動に移せる勇気はなかなか湧いてこないのだから。
勇気を振り絞って行動に移したとして、それがトラブルに発展したら…、と思うとなおさら。
主人公の倉田も普段はもめ事を嫌い、控えめに暮らしていたはずなのに、ある時、自分でも思いがけず行動に移してしまった。
それがもとで、平凡な日常が一変する。
面白くて、一気読みでした。 -
久しぶりに池井戸さんを続けて読んでいる。
本作は8年ほど前の作品に加筆訂正をして文庫化したもののようだ。
私が池井戸ファンになったきっかけの『空飛ぶタイヤ』、大好きな『下町ロケット』、『ルーズ―ベルトゲーム』のように、窮地に追い込まれギリギリのところから解決へのきっかけをつかみ、さらに逆転劇へと進んでいくような、ハラハラ、ドキドキ、興奮の連続という華やかさは少々薄い。
少し前に読んだ『仇敵』もこの本と同時期のものようで、ストーリーの持つポテンシャルは似ていると思う。
主人公の倉田は銀行から出向させられた先の中堅企業の総務部長。
仕事を終えて帰宅途中で、電車に割り込んで乗ろうとした男を注意する。普段は、そういうことをするタイプではなく、気持ちのメーターがたまたま正義の方に揺れた瞬間、行動に出ていたという感じ。
しかし、逆切れした男に追い回され、自宅を知られ、いろいろな嫌がらせを受ける羽目になり・・・。
じわじわと身に危機が迫りくる恐怖。
心強いのは互いに支えあい、この危機に立ち向かおうとする家族がいることか。
特に、大学生の長男くんは、なかなか冷静で頼もしい。
また、倉田は会社で行われている不正に気づく。
外様で孤立無援に見えた彼にも、信頼できて片腕として動いてくれる優秀な部下が身近にいる。その上、古巣の銀行にも力になってくれる同僚がいる。
些細なきっかけから逆恨みされる恐怖。
逆恨みのエネルギーを取り去るのは、かなり難しそう。ありふれた毎日の中に潜む悪意。
こういうのを避けようとすると、人との関わりに消極的になってしまうもの。
けれど、会社での危機から解決策を見いだせたのも、複雑な人間関係を避けたい気持ちを抑え、自分を奮い立たせて正面から立ち向かえたから。
少しばかり苦手と感じる正義感の強い部下と、高圧的で全く自分を認めない敵との間に挟まれ、不正を見ないふりをすることもできた。それでも、信義に従って自分にできるベストを尽くせたことで、突破口を見つけることができた。
半沢さんほどのスーパーヒーローではないにせよ、これでも、現実的にはヒーローだなあと思う。
『仇敵』のように、若手社員が成長したり、本書のように家族のさまざまな課題を棚卸して、改めて強固な関係を築いたり、会社での仕事と人間関係で同時に結果を出したり、結局、仕事や家庭での危機を乗り越える過程で人間を十分に描いているところが、おもしろい。
池井戸さん
半沢さんはとても面白いです!!
最近の作品の人物造形のおもしろさや企業のさまは池井戸さんにしか描けない境地にあると思います。
それでも、今の池井戸さんが描く、こういう普通の人たちの成長も、また読みたいなあと思います。
進化系の普通の人たちも是非! -
池井戸潤の作品は、正義は勝つんだ!というヒーロー物語を読んでる気分になるけど、この本は主人公がすごく普通な人なので、日常に起こりそうな話に感じた。
これはこれで池井戸潤の良さが出ててよい。 -
そう言えば以前ドラマ化されていたっけ?と思い、手に取った本。
あっという間に池井戸ワールドに入り込んでしまう。
ちょっと気弱で真面目な主人公、倉田。
ある日、駅のホームで割り込み男を注意するところから事件が始まる。いつもなら、そんな行動は取らないのに…
次々に起こる倉田家への嫌がらせ、ストーカー行為。
この事件ともうひとつ、職場での事件。
池井戸作品らしく、倉田は銀行から中堅企業へ出向している。
その社内での不正疑惑。
気弱な主人公倉田は、この二つの事件に同時に立ち向かう。
終盤では、社内事件の解決に向けた盛り上りで、思わずストーカー事件の事を忘れかけてしまうほど。
もちろん、しっかりそちらも解決する。
本当に楽しい読書時間だった。 -
◾️サマリー
・主人公 倉田太一とその家族を取り巻く
ミステリー。
・倉田太一は、銀行から取引先への出向者。
・プライベート、ビジネスの両面で難題が起こる。
・救いは、主人公の近くに助けとなる人がいること。
・半沢直樹ほどのスカッと感はありません。
・勧善懲悪が好きな方にはオススメ。
◾️心に響く部分
・うまく行くときもあれば、そうでないときもある。
それがサラリーマンではないか。そして、それが
人生ではないか。
◾️所感
例えば電車に乗ると、そこには素性も名前も分からない名無しさんの集まりである。
村社会のように⚪︎⚪︎さん家の⚪︎⚪︎君は△△で…と何でもかんでも筒抜けだった昔とは異なり、SNSなどの情報が発達し名無しの集まりで構成された複雑な現代を象徴した小説であった。
この本を読み、世の中は身内や知人/同僚などの限られた存在を除き、名無しの寄せ集めで成り立っているという視点は、改めて気付かされた。
本書のようにちょっとしたきっかけで名無しさんとトラブルになることもあれば、別の名無しさんとは出会って付き合い、結婚して家族を作ることもあるのだから、本当に人生とは予想だにしない不思議なことだらけだと感じる。
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2022(R4)8.19-8.22
約2ヶ月ぶりの読了。
綾辻行人の『十角館の殺人』が読めずに挫折していたお盆明け。YouTubeの動画も見飽きたこともあって、就寝前の一気読みでした。
読後感はさっぱり気持ちよかったです。
特によかったのは、主人公が「スーパーサラリーマン」じゃないところ。逆に頼りないくらいで、ちょっと自分と似たところもあり、「それ分かるわ〜」と共感するところも多々ありました。
スーパーじゃないけど素敵な家族がいて(息子がスーパーだったりして)、ささやかだけど温かな幸せを守るために奮闘する主人公はカッコよかった。
2つの事件、というか問題が同時進行していく物語で、それぞれが互いの問題の伏線なのかな?と思いながら読み進めていきましたが、その構造については、個人的にはもうちょっとひねってほしかったなあと欲が出てしまいました。
よって、星としては「3.5」というのが個人的な評価です。 -
家庭と仕事の理不尽な危機
暗く陰湿な案件に毅然と立ち向かう主人公と家族
池井戸作品で無ければ最後まで読みきれなかったかもしれない題材でした
クライマックスは倍返し迄はせず犯人の自戒に任せた所は池井戸流の優しさか。それもあってか読み終わった後の爽快感は残らなかったのは残念でしたが良い作品である事は間違いかと思います