- Amazon.co.jp ・本 (669ページ)
- / ISBN・EAN: 9784096580752
作品紹介・あらすじ
近松の世話浄瑠璃の魅力を存分に伝える心中物と姦通物14編を収載。
元禄十六年に上演された近松の『曾根崎心中』は、大阪で起きた醤油屋の手代と遊女の心中事件を題材に取り入れた人形浄瑠璃。これが大当たりを取り、以後、近松は市井の事件を題材としたいわゆる世話物を作り続け、数々の傑作を生み出します。 「この世のなごり。夜もなごり。死にに行く身をたとふれば……」という情緒てんめんたる道行文の『曾根崎心中』は、人間の破滅の原因を、それまでの世話狂言のように金銭のトラブルに求めないで、男女の一途な愛情ゆえとするという、画期的なアイデアの芝居でした。評判に意を強くした近松は、人間関係の複雑化、主人公の内面性の深化と作劇法に磨きをかけ、リアルな表現や演出に創意工夫を加えていきます。『心中天の網島』『堀川波鼓』『心中宵庚申』『鑓の権三重帷子』など、今でも歌舞伎や映画などでなじみ深いこれら世話物こそは、この天才芝居作者の独創をいかんなく発揮しているものです。 『近松門左衛門集』は(1)と(2)で、近松の世話浄瑠璃全二十四編を収録し、新しい注釈と口語訳を施しました。
感想・レビュー・書評
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https://japanknowledge-com.ezproxy.kyoritsu-wu.ac.jp:2443/lib/display/?lid=80110V00750013&scale=0.3&top=-26px&left=459px&angle=0&mode=0詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新編日本古典文学全集では、近松門左衛門だけで3冊をラインナップしている。
今回紹介する近松門左衛門集<2>は、心中モノが中心。
「曾根崎心中」「心中天綱島」「鑓の権三」など、14編を収録。
原文はもとより、注釈・現代文まで掲載してあるので、古典初心者にも読みやすい体裁となっている。
特に面白かったのは、「心中綱島」。
遊女である小春は、治兵衛と恋仲におちる。
治兵衛には妻子がおり、妻の家業を手伝っていることもあり、姑には頭があがらない。
遊女と婿養子の不倫である。
治兵衛の妻さんは、夫の遊女狂いをやめさせようと、小春に長い手紙を書く。
小春は来世での約束を取り交わした治兵衛を大切に思う一方、治兵衛の妻さんの手紙に胸打たれるものがあり、小春は本心を隠して治兵衛を振るのであった。
これで一旦は丸く治まったかに見えた治兵衛とさん夫婦。
ところが、小春は太兵衛に身請けされることとなった。
太兵衛は、治兵衛にとっての恋敵。
小春も泣く泣く嫌いな太兵衛へ身請けされることに。
この話を聞いた治兵衛の妻さんは、自分が書いた手紙が小春と別れるキッカケになったことを夫に告げる。
さんは、夫との平穏な生活を望む一方、小春が好いてもいない男に身請けされる姿を、女として黙視できなかったのだ。
さんは、家の家財道具一切を売り払い、その金で小春を見受けするように、夫の治兵衛に迫る。
すべての経緯を知った治兵衛。
有り金のすべてを持って小春のもとに駆けつけようとするが・・・・・。
近松文学の中核をなしているテーマは、「人間が人として全うに生きるとはどういうことか?」ということではないだろうかと思った。
近松は作品の中で、人と畜生というのを対比させて登場人物に語らせる。
人には義理・人情・面子などがあり、これらを欠いた人間というのは、畜生にも劣る存在であるとこき下ろされる。
近松の主人公たちは、この葛藤で悩み・苦しみ、そこから自由になることが心中という行為に結実されるのである。
現代社会では、「恋」というものを諸手をあげて賞賛する風潮があるが、近松文学では「甘美な毒」である。
「家」を最小単位とした社会から「個人」を目覚めさせ、恋を全うさせるためには親兄弟を敵にまわすという、社会通念から逸脱した行為へと走らせる。
この社会通念から逸脱する道を選ぶ決断する男女の原動力こそが、「死」であり、死によって本当の自由を得ることで、恋を全うできるというのが近松の恋に対する基本スタンスではないのだろうかと思う。
死を覚悟してから死に至るまでの男女の時間は短い。
ただ、そこに流れる男女の濃密な時間にこそ、最も甘美で充実した何事にも代え難い一瞬が存在するのであろう。
「恋」という究極の自由への希求と、「社会」を描くことで、時代を超えても読み手に様々な感動を与えてくれる近松文学、恋愛小説好きの方には、特にオススメです。 -
曽根崎心中しか読んでいません
「色に焦がれて死なうならしんぞこの身はなり次第」
「帯は裂けても主様とわしが間はよも裂けじと」
縁の下の徳兵衛にはつが
ほかの人にはわからないように語りかけるシーンが
印象的
狂気を孕んでいるけれど、とても純粋な話だと思う