- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101001333
作品紹介・あらすじ
秋が終り冷たい風が吹くようになると、彼女は時々僕の腕に体を寄せた。ダッフル・コートの厚い布地をとおして、僕は彼女の息づかいを感じとることができた。でも、それだけだった。彼女の求めているのは僕の腕ではなく、誰かの腕だった。僕の温もりではなく、誰かの温もりだった…。もう戻っては来ないあの時の、まなざし、語らい、想い、そして痛み。リリックな七つの短編。
感想・レビュー・書評
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久しぶりに村上春樹さんの文体に触れたくて読んだ。
「螢」を読んでいたら「ノルウェイの森」につながっていた。
「納屋を焼く」は彼らしさ全開の短編。きっと実際に焼くのではなく、女性に関わる比喩なのだろう。
「踊る小人」これも面白い。非常にグロテスクで想像したくないけど想像してしまう。逃れられない小悪魔。
「めくらやなぎと眠る女」「三つのドイツ幻想」もシュールだった。
これらの短編が後に読み応えのある長編に成長していくことを思うと愛おしくもある。
やはり私の身体にも
踊る小人ならぬ踊る春樹が憑いている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久し振りに読みたくなった、村上春樹作品。
この世界観は誰にも真似できないなとあらためて
読み終えて感じました。
「螢」は、彼の代表作の「ノルウェイの森」にも通ずる物語で、これ読んだ後にもう一度「ノルウェイの森」を読むとより深く世界観に浸ることができると
思います。 -
メカトール酒
ダッフルコート
ビール
耳
病院の食堂
オーディブルで読みました(聞きました)
モヤモヤとした正体のわからない、わかろうとも思わない感覚が好きで、何度目かの再読
中毒性あります -
作者の短編集読み漏らし①
とにかく『納屋を焼く』が光っていて、謎めいた締めも作中のリリックも完璧。
『ノルウェイの森』の原案ともなる『螢』は、同作を読了後に読むとスケールダウン感は否めないが、他所からの参入や二番煎じが不可能な完成された世界観は流石としか言えない。 -
「蛍」ノルウェイの森の既視感。
「納屋を焼く」納屋を焼く男の話、パントマイムする彼女の消失。
「めくら柳~」耳鼻科に向かうバスで思い出した話。『めくら柳の花粉をつけた蠅が耳から潜り込んで女を眠らせる』 -
1983〜84年発表の短編をまとめた作品集。「蛍」と「踊る小人」が特に好みだった。
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「納屋を焼く」を再読したくて図書館より拝借。結局全短編再読了。あると思いこむのではなく、ないことを忘れる、ということを思い出して考え出すと、すぐ時間が経ってしまう。本作を原作とした韓国映画「バーニング 劇場版」もあらためて鑑賞。すばらしい作品だと思う。その、原作がこれで、こういうストーリーにもなり得るっていう、映画の可能性に感動。
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よく分からない、いや分かるような…と思って世界を眺めているうちに終わってしまう短編集。
村上春樹にしては回りくどくない文章(これは年代によるものかな?)で、テンポよく読めます。なんだか音読しても楽しそう。ちょっと奇妙な世界観がくせになる感じ。
踊る小人がいちばん読んでて楽しかったです。像工場という存在が面白くて、工場のなかを歩くところはとてもワクワクしてしまいました。自分でもなぜか分からないけど。
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再読。
螢の既視感が異様に強くて、2ページくらい読み進めてから、その理由に思い当たった。 -
「村上春樹流短編小説上級編」
星が三つなのは個人的な事情があってのことである。
作品としては星五つを頑なに提示したい。
だがこの感想は誰かの目にとまって、本を買うという行為を引き起こしかねない。
というのは当方、今まで数冊彼の短編集を読んだ。
その中でもっとも読むのに苦労したのが本著だ。
それゆえの星みっつ。
内容の感想として、手軽に村上春樹ワールドに浸れるので個人的には心愉しい読書だった。
だがもし、初めに手に取るには『カンガルー日和』『パン屋再襲撃』『女のいない男たち』などを薦めたい。