刺青・秘密 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005034

感想・レビュー・書評

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  • 谷崎の初期の短編集。
    これらの作品が発表された当時、世間はどんな反応だったのか。「少年」が強烈だった。
    頭から離れない。

  • 「刺青」と「母を恋うる記」が好きでした。
    男性視点からみる「女性」についての様々な話が収録されていた。

    日本語はこんなにも美しいのかと再認識させられるような本でした。特に「幇間」の春の描写は息を呑むほど綺麗。

  • 印象に残った言葉
    『秘密』から
    「あの着物を着て、女の姿で往来を歩いて見たい。」p.90
    「いつも見慣れて居る公園の夜の騒擾も、「秘密」を持って居る私の眼には、凡べてが新しかった。何処へ行っても、何を見ても、始めて接する物のように、珍しく奇妙であった。人間の瞳を欺き、電燈の光を欺いて、濃艶な脂粉とちりめんの衣装の下に自分を潜ませながら、「秘密」の帷を一枚隔てて眺める為めに、恐らく平凡な現実が、夢のような不思議な色彩を施されるのであろう。」p.92
    私にもそのような欲望があります。素敵な服、かっこいい服を着ている女性を見るとそのような願望が一瞬生まれます。こういう、誰にも言えない欲求みたいなのを表現してくれるから、私は谷崎潤一郎が好きなのかもしれません。

    『異端者の悲しみ』から
    「彼等はだんだんと章三郎を侮蔑しつつ、憎悪する事も忘れて来るように見えた。」p.161
    『それから二た月程過ぎて、章三郎は或る短編の創作を文壇に発表した。彼の書く物は、当時世間に流行して居る自然主義の小説とは、全く傾向を異にして居た。それは彼の頭に醗酵する怪しい悪夢を材料にした、甘美にして芳烈な芸術であった。』p.184
    『異端者の悲しみ』は作者の自伝的な作品であるらしい。主人公の章三郎はかなりのクズだと私は思う。友達から金を借りておいて、返さず放蕩し、挙句の果てにその貸した友達が死んでホットしている節がある。金は友達に貸さないようにしようと思った。

    感想
    この書籍に収録されている作品の中では、ダントツで『刺青』が魅力的でした。私も魅力的な美女に会ってみたいと思いました。『少年』『幇間』『秘密』『異端者の悲しみ』も魅力的です。谷崎潤一郎は、自分の性癖をさらけ出す感じがとても好きです。
    皆さんにも誰にも言えない性癖はありますか?私は結構あるのかもしれません。他の谷崎作品も読んでみようと思います。

  • 夏目漱石が「教科書に載っている文豪ナンバーワン」だとしたら、谷崎潤一郎は「教科書に載せてはいけない文豪ナンバーワン」である。

  • 「春琴抄」が忘れられず...
    だが、これは分からない...どういう気持ちになることを想定して描いたのだろう

  • 先日鑑賞した作品に『刺青』が引用されており、「そう言えば谷崎潤一郎は読んだことがなかったな」と手にとってみた。
    知識としてどういう作風かは知っていたつもりだったけれども、想像以上に耽美な世界観だった。サディズムとマゾヒズムがふんだんに織り込まれている。情景としてはおぞましいはずの場面も、滑らかな筆致でするすると飲み込まされてしまう。なんというか、ずるい文体だ。個人的には『秘密』が好き。
    『異端者の悲しみ』だけはすっきりしない読み心地でもやもやしたが、解説によると自伝的な作品であったとか。そういう見方をすると、確かに受け取る印象は変わってくる。
    谷崎潤一郎、女性と母親像とに物凄い思い入れがあることは全編通して強く認識した。他も読んでみるかなあ。

  •  この本のうち、『刺青』が特に有名だが、今回収録されている作品のなかでも、内容としては短めである。しかし、本作を一読すると、谷崎の、女性に対する見方の一端に触れられる。

  • 谷崎初期の短編集。反・自然主義的なロマン派的文体です。今の時代ではほとんど使われない漢文的単語が散見されますが、それを除けば平易な言葉で優美な文章が紡がれています。特に、『異端者の悲しみ』の序盤での状況や心情を描くいくつかの箇所は嘆息もの。さらには『母を恋うる記』での幽玄な雰囲気を醸し出す表現群にもうっとりする。気がつけば、かなりの時間をかけてじっくりと読み込んでいました。

  • 「刺青」
    短いお話ですが、冒頭の一文から引き込まれ、最後女の背中の刺青が朝日に照らされる一文まで読み終わると、ずっしりと妖しい空気感が残るような感じ。

    「秘密」
    素性を隠して自分を夢の中の女としてみせることで男を繋ぎ止めておこうとするなんていじらしくて可愛いと思ったけど、この主人公にはそんな平凡な哀れみの心はないんだろう。
    最後の一文から、この男はさらなる歓楽にも、きっと同じように夢中になり、全容を悟ってしまっては飽きてを繰り返してどこまでも堕ちていくんだろうなと思った。

  • 刺青
    話自体は展開の予想がついたが、いろんな後世の作品がオマージュにしているんだろう。そういうところではなく、言葉の美しさ(なんて言えるほど学はないが)を浴びるよさ。短さもあって音楽を聞いてるよう

    少年
    幼さからくる残酷さ、無邪気さ。普通そうはならんやろと思うが、閉鎖的で、階級が存在する社会ならあり得るか。和製、甘口蝿の王。

    幇間
    座の中心になる人っているけど、こういう下に見られるようなタイプは現代あまりいない、いたとしても終始とはいれないなぁ。やっぱりおもちゃにして遊んでるんだな。

    秘密
    探偵小説や、犯罪小説の読書を終始喜ばせる「秘密」「疑惑」の気分に彷彿とした心持ちで、私は次第に人通りの多い、公園の6区の方へ歩みを運んだ。そうして、殺人とか、強盗とか、何か非常な残忍な悪事を働いた人間のように、自分を思い込むことができた。

    前半と後半で「秘密」のもつ美しさと危うさが変わっていった。前半部の秘密は、経験はないがなぜかすごく共感できる。その自分だけが知り得るという優越感。
    後半部の秘密は、解き明かす側だからこそ焦がれる思いと、蓋を開けて失望する感覚。設定に現実味はないのに共感できるってすごい。

    異端者の悲しみ
    自伝なん?
    なんだかんだと理由をつけて、周りに迷惑かけてまで酒と遊びに溺れるシリーズ。本人はもちろんクソだけど、結局有耶無耶にしちゃう友だちもよくない。友だちづきあいには、価値観も金銭感覚も大事。

    二人の稚児
    信仰によって救われた…のかは解釈。とにかく信仰は本人がよければいいの。お金とか無理なことを強いなければ。
    現世ストイックで来世に備えるというのは本末転倒じゃないか。生まれ変わりでなく、無限地獄とか言われたらそりゃ嫌やけど。

    母を恋うる記
    キサラギ駅?こわーと思ってたら、まさかの夢オチ。母を恋うると、どうしてああいう描写になるのか。舐めたい足の裏?完璧な鼻?濡れたような髪束?

    痴人の愛、春琴抄も読んで「マゾヒズムは文化」と括ったら浅学か。

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著者プロフィール

1886年7月24日~1965年7月30日。日本の小説家。代表作に『細雪』『痴人の愛』『蓼食う虫』『春琴抄』など。

「2020年 『魔術師  谷崎潤一郎妖美幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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