刺青・秘密 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005034

感想・レビュー・書評

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  • 谷崎潤一郎なんて男女の性愛についてとかでしょ?あんま興味ないかなあなんて思ってたけどそんなこといってないで早く読めばよかった。
    面白かった。

    文章がすごく綺麗なので、いやこれどうなのって状況でもすごく綺麗に感じる。

    『異端者の悲しみ』は自伝的な話らしいけど、本当に谷崎がこんな感じだったのだとしたらなんとも嫌なやつだなぁという印象。
    この年頃は誰しもいろんなことに悩んだりおかしなことをしたり悪ぶってみたりするものだと思うし、年齢や当時の状況を考えるとしょうがないのかなとも思えるけど…。
    それにしても傲慢、自尊心、他人への思いやりのなさがすごい。
    女性に関しても何より谷崎が好きなのは『女の綺麗な肉体』であって、女の人格やらなんやらはどうでもいいってことなんだなあと。
    たぶん『自分を責めて悦ばしてくれる綺麗な道具』くらいの認識なんでしょうね。

    好きだったのは『少年』と『母を恋うる記』。
    『少年』は少年少女の無邪気な残酷さがぞわぞわするほど綺麗に描かれていてまさに耽美という感じでよかった。
    『母を恋うる記』は幻想的で綺麗な雰囲気と文章ですごく好き。
    情景の描写もだけど音の描写もとにかく綺麗で、その場面の風景がみえて音が聞こえてくるかのようだった。
    美しくて切ない。
    これをラストにもってきてくれてありがとうございます。

  • わたしにとって谷崎潤一郎の作品は読むまでに時間がかかるのだけれど、一旦読み始めると途中で止めることが出来なくなる中毒性のあるもの。それは狂愛の世界。今回もドキドキさせてもらった。谷崎の文章は美しいなとしみじみ思う。残虐性も恐怖も破綻も憂鬱も谷崎の前では綺麗に透き通ってしまう。顔を踏み躪られようとurineを飲まされようとmasochistである人物たちの恍惚とした精神を高尚的なものとして昇華させてくれる。
    刺青や少年などはまさにそれである。わたしをゾクゾクとした甘美な世界へ連れ去ってしまった。また二人の稚児も美しく儚いラストの情景が強く印象に残っていて好きだ。

  • あったあった、ちょっとカビ臭いけどね。高校生以来、印象に残っているのは刺青だけ。
    刺青 足だけを見て恋した女、刺青した女の変貌、妖しすぎ
    少年 こんな気味の悪い話は嫌い。なのに病的に倒錯した世界に取り込まれて行く妖しさ。
    秘密 秘密を持つことの魅力、秘密がわかった途端に褪せる気持ち、秘密等と言うて温い快楽が血まみれの快楽に変わるってどうなるの?
    二人の稚児 これは綺麗、少しほっとする。

    これらがホントに作家になったばかりの頃の作品だとは。細雪は映画見ただけ、痴人の愛はドラマかなにか、ほとんど谷崎知らないのだな

  • Kindle版表題の「刺青」「秘密」と「少年」を読んだ。今風に言うとプレイ小説。主にマゾの心情。艶めかしくマゾの心情をこみ上げさせるのは流石谷崎。「少年」は、やはり汚い折檻などは少年時代であっても自分的にはありえないなとか。しかし、それらを感受する心の鋭敏さがなにやら読んでいるこちらをくすぐるような心持ちにさせる。「刺青」はタイトルの持つ色彩が作品の美しさをより引き立たせているように思えた。「秘密」も趣きのある作品のように思えた。

  • 怪しくも美しい世界。
    これが明治とか大正の、約100年くらい前に書かれた小説かと思うと、驚いてしまう。鮮やかな色づかい、音、質感の描写は映像として感じられるほど。
    「母を恋うる記」は、あの、夢独特の、空間の不安定さ、時間軸の永遠と一瞬が交錯する感じ、そして自分の深いところに潜って何かを切望する心持ちが迫ってくる。

  • 官能的!

  • 日本語の巧みさ、美しさを散りばめられた
    変態大谷崎の処女作であり、初めて読んだ本。
    背に大蜘蛛が彩られる情景の文には
    日本語の美で描く官能の色を感じさせられた。

  • エロスというよりマゾヒスト、フェティスト、覗き見、と妖しげな女性への美意識に足を突っ込んだ作品です。
     三つ子の魂百まで、といいますがデビュー作からこんな感じで突っ走ってる人ので、文科省推薦作家(教科書に載る作品を書く人)になるはずがなく、あえて自分から手を出さないと一生食わず嫌いで終わる可能性のある作家です(同じ類の大家に、永井荷風がいます)。
     とにかくノーベル文学賞候補に何度ものぼっ文章力は伊達でなく、’’天賦の才溢れる変態’’といったところでしょうか。この本の中では’’少年’’が好きです。これも妖しいですよお

  • 耽美というと昔はとにかく美しい世界、花や宝石や月や星、美男美女のめくるめく愛のようなものを想像していた。
    それも間違いではないのだが、実際は美の概念というものを考えさせられる世界だ。
    醜悪な姿や心やグロテスクなおどろおどろしい話、そんなものの内に美を見出すのはどういうことだろう。
    考えてみると、それが人間の理性を超えた世界だからかもしれない。
    倫理や秩序を超えた根源的な欲求、それを満たす陶酔や解放感を、美とあらわすほか言葉を知らないだけかもしれない。
    人間の本質は秩序からかけ離れたところにあるのかもしれない。

    この作品を読んでいて思い出したのが、映画「ブラックスワン」と「ドリアン・グレイの肖像」だった。
    そのどちらかが好きな人ならば耽溺できる世界観だと思っている。

    谷崎氏の文章の魅力はその放埓さと、絢爛な言葉遣いにある。
    「刺青」は最後の一文がいつまでもからだの裏側で冴え渡っていて、視覚の一部を盗まれたような心地がした。
    「秘密」もまたあやうくたまらなくエロティックで、極限までその期待とおそれとをふくらませてからの呆気なく残酷な幕引きが余韻を残す。
    やはり表題作のこの2点が印象として強い、と感じた。
    「少年」もまた無垢な残忍性から記憶に残る話ではあるが、好みから少しずれていたので、おそらく再読はしないと思う。

  • 面白かったです。描かれる倒錯した世界にうっとりしました。寂しさも感じつつ、耽美。「刺青」「秘密」「母を恋うる記」が特に好きです。「母を恋うる記」の月夜の情景が淋しくて美しかったです。終わり方も悲しくて好き。

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著者プロフィール

1886年7月24日~1965年7月30日。日本の小説家。代表作に『細雪』『痴人の愛』『蓼食う虫』『春琴抄』など。

「2020年 『魔術師  谷崎潤一郎妖美幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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