健康マネジメントを専攻し、コミュニティ特性と自殺率との関係性について関心を持った著者が、海部町の自殺率の低さに着目、自殺予防因子を明らかにするまでの報告書。
内容はガッツリ学術研究なんだけど、テーマの身近さや、インタビューを多用する研究手法、そして何よりその楽しげな語り口から、随分サクサク読めます。
海部の人たちの、人と自分は違って当たり前、という度量の広さ、困ったことは積極的に開示し、それを周囲も当たり前として受け取るところ、社会へ主体的に関わることで、何かを変えることができるという意識などが自殺予防因子としてあげられてます。これって、今声高に叫ばれている、多様性を大事にしてるってことで、引用されてるインタビューをみても、海部の人たちはカラッと明るく、確かにこういう環境なら、随分と人は生きやすいだろうと思う。
そして、今すぐ自分にもできることとして、「どうせ自分なんて」と言うことをやめてみることを提唱しています。
自分の意識を、行動で変えていく。行動することで、徐々に脳に刷り込んでいく。行動療法的ですが、すごく分かりやすい、取り組みやすいアドバイスだと思う。一気に難しいことを解決するのではなく、今すぐ出来ることを少しずつでもいいからやっていく。著者の真摯さや温かさを感じます。
研究成果自体も面白いけれど、研究を進める上での苦労話も、まるでプロジェクトXのようにドラマティックで、研究書というよりは、ドキュメンタリーのようでもある。
徳島にこんな町があるんだ、ということも含め、色んな人に読んでみてもらいたい一冊です。

2024年1月1日

読書状況 読み終わった [2024年1月1日]
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本屋さんで見かけて即購入。古代から現代までの様々なお菓子のルーツを探る本、これは、お菓子好き、歴史好き、うんちく好きとしては見過ごせないでしょう!
見開き2ページで可愛いイラストと解説があって、軽くどんどん読み進められます。よく知っているお菓子あり、初めて見るお菓子あり、お菓子が別のお菓子へ発展する話ありで興味は尽きない。お菓子って地域に根付いた文化なんだよなあ…。
この本はレシピが載っていないので、それが残念だけど、それはまた探してみよう。
巻末にはお菓子の分布図や索引もついてて、いたれり尽せり、何度も開いてみたくなる本でした。

2023年12月31日

読書状況 読み終わった [2023年12月31日]
読書状況 読みたい
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長らく積読してたのだけど、ビブリオバトルで紹介しようと思って読んでみた。読んでもないのに紹介しようと思うのもあれですが、まあ期待を裏切らないだろうと言うことで。
読めば相変わらずのホムホムワールド、自意識過剰と完璧主機と強烈な劣等感と自虐がぐちゃぐちゃになってるんだけど、でも何だか世の中の現象を俯瞰してる感じ、独特の感性がおもしろい。そことそこがリンクしますか、という飛躍は、さすが歌人の見立ての力だなあと思う。
あと、表現とか語感が可愛くて、ちょっと声に出してリズムを味わいたくなってしまう。
こういう、ある意味ネガティブことばかり書いてるのを読むのが面倒くさい、という人もいるだろうし好みは分かれると思うが、私はとても好きだ。ポジティブさを押し付けられるより、ネガティブさから勝手に想像の翼が飛び出しちゃうような本の方が、なんか疲れが取れるような気がするんだよ。
あと、装丁がすごくいい。
この強烈に主張してくる昔の蚊取り線香の缶みたいな雰囲気、一度は手に取ってしまうよな、と思う。
最後の又吉直樹との特別対談も、よい。なんだか世間からズレてるもの同士の対話ではあるけど、みんな多かれ少なかれそう言うとこあるよね、なかったことにしてるけどあるでしょ?って言う。もう少しそういうところが楽に出せたら、優しい世の中になるのにね。

2023年11月22日

読書状況 読み終わった [2023年11月22日]
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表題作は、芥川賞受賞作。
という先入観はともかく、また堀江さんの世界にどっぷり浸かったな、という感じ。
表題作以外に「砂売りが通る」「城址にて」の2編が収まっている。いずれも、フランスと日本を往還している著者を想起させる主人公で、「おぱらぱん」の続きを読んでいるようでもあった。
いずれの物語も、現在から、ぐっと過去に遡り、大きな事件というよりは小さな出来事の連なりがあって、また現在に収斂していく。語られる現在はいずれも不穏で、かと言って完全な不幸でもなく、少し欠けたところを抱えながらも毎日過ごしている、つまり、誰もが過ごしている人生そのもののようなんだけど、なんというか非常に映画的で美しい。フランスの風景がそうさせるのか、日本人とは少し違う、濃密な心のやり取りのせいなのか。
ストーリーを追うというよりも、情景を味わい、そこから想起される、自分の中にある感情を揺さぶられて、心地よくせつなくなるような本だった。

2023年11月1日

読書状況 読み終わった [2023年11月1日]
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悩める娘の参考になるかな?と手に取ってみた本。
人の目が気になって苦しんでいる人にはなんらかのヒントはあるかも。でも、ようは心がけ次第ってことなので、その心がけに至るのが難しくて苦しんでるんだよねぇ。言葉の定義一つ一つが、話の文脈で変わってくる感じがあって、文字通り読むと矛盾してるように感じるところもしばしば。
本を一冊読んだだけで悩みが解決するほど心は簡単じゃないし、悩んだからこそ自分のものになるものがあるんでしょう。

2023年10月22日

読書状況 読み終わった [2023年10月22日]
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タイトルを見て、きっと繊細で儚げで、でも少し残酷で、切なく愛しい物語なんだろうな…と想像した。なんせ小川洋子さんですし。
果たしてそのとおりの物語だった。
冒頭から、主人公の小鳥の小父さんの遺体が発見される。
死後数日経った遺体はそれでも安堵の表情を浮かべ、小鳥を入った鳥籠を抱いている。そこから、なぜここに至ったかが語られ始める。
小父さんには、兄がいて、兄の言葉は小父さんにしか理解できない。二人の間にあるのは小鳥の言葉。他には入る余地のないような、二人だけの全き世界で穏やかに満ち足りて暮らしていた。ただ、二人のあり方は周囲から見るととても危うく脆い。簡単に侵食され、傷つけられてしまう。
兄が亡くなった後、小父さんはいくつかの繋がりを得る。小父さんが鳥の本ばかりを読んでいることに気づき気にかけてくれた図書館の司書、鳥ではないけど、お兄さんのように一心に虫の声に耳を傾ける老人。しかし、いずれも、その関係を損なう小さなきっかけがあり、小父さんの意図に反して繋がりを失う。そのきっかけは、わざとではないにしろ、小父さんが大事にしていたものを拒絶したり、蔑ろにする行為であり、その無頓着さに胸が痛む。でも小父さんは恨まないし、取り返す行動にも出ない。諦観が身についているように。
その後小父さんは、偶然小鳥を飼うに至る。まるでお兄さんとの暮らしを取り戻したかのような、あるいはそれ以上に満ち足りた暮らしの再開。この大事な小鳥を奪われそうになって初めて、流れに逆らい、鳥たちを自由にするという行動にでる。そして…。
最後まで読んだら、必ずもう一度最初に戻ってしまうだろうと思う。そこまで読んで初めて、物語が完結する気がする。
この、世の中から弾かれてしまったかのような人が持つ完全性と不全性は、実は程度の差こそあれど誰にでもあって、その哀しさも憧れも自分の中に見つけられる。だからいつも小川洋子の物語は胸を打つのだ、と思う。

2023年10月4日

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読書状況 読み終わった [2023年10月4日]
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自分も相手も大事にするコミュニケーション。
これを読む限り、仕事のシーンでは、割とアサーティブなコミュニケーションができてる気がしたけど、家族にはすごく難しい。これまでの蓄積で、お互い言わなくてもわかるよな、と決めつけて話してることがいっぱいあるな、と。
自分としては出来てるつもりでも、実はそうありたいと思ってるだけで、実際咄嗟には出来てないこともいっぱいある気がする。
この本は、子供が読みたい、と言って読んだものを私も読んでみたもの。身につまされる。これから気をつけます。

2023年3月16日

読書状況 読み終わった [2023年3月16日]
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佐藤亜紀、初読。おそらく、私の読書の好みだと、まず出会うことのない本だったと思うけど、ビブリオバトルで紹介され、地方の出版社による復刊という珍しさもこともあいまって、入手した本です。
最初は、パズルのように様々なエピソードが語られるので、それを頭で組み立てるのが難しく、なかなか読み進まなかった。
日本の N****県が突然日本から分離独立、ロシアに支援を受け、14歳の主人公の少年は、それに対抗するゲリラに身を投じる、というのが骨格のストーリーではあるけれど、メインはそこではなく、自分を取り巻く地方社会独特の環境に倦んだ少年が、日常が瓦解した世界で、生き延びるために足掻き、何かを見つけて何かを失う物語、という感じ。
世間の常識を嘲笑いながら、結局は居心地悪い世間に残った主人公の諦観は、なんとなく共感を覚える人が多いのではないか、と感じる。
ゲリラ時代は活劇としても面白く、主人公の冷静さ、主人公の友人の人物像の造形、主人公に大きな影響を残す伍長など、読み進めるほどに登場人物の面白さも際立ってくる。

「戦争の法」というタイトルの意味が、分かったような分からないような感じで物語は終わる(読解力がないだけか)が、この伽鹿舎QUINOAZ版は、著者による解説もあるので、それも楽しめます。

2023年2月10日

読書状況 読み終わった [2023年2月10日]
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初めての人生の挫折である浪人生活のはじまりから、小説家デビューに至るまでを描いたエッセイ。
浪人時代はまんま鴨川ホルモーの世界でむちゃ面白い。
なんだろな、頭の中の世界と現実世界との接続具合が面白いんだよな…。頭の中は妄想に近いのに現実ではそこそこ打算的に動いてたりして、そしてそんな自分を冷静に俯瞰している様が絶妙。
無職になってから、鴨川ホルモーが生まれるまでのくだりから面白さが加速します。鴨川ホルモーを小説の新人賞に応募するあたりはほぼミラクル。事実は小説より奇なりというか、いつもの万城目学の小説の怒涛の展開とおんなじというか。
という感じで、エッセイだけどなんかいいクライマックス迎えた小説のようでした。

あ、あと私は「悟浄出立」がすごく好きなんだけど、これだけなんか作風が違うな、と思ってたら、万城目学が目指してた作家の列記をみて、なんか納得しました。

2023年2月4日

読書状況 読み終わった [2023年2月4日]
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タイトルが素敵で、小川洋子さんと堀江敏幸さんという大好きな作家のコラボとあれば読まずにはいられない!と読み始めたものの、まあ読み進まない…。
何だろう、観念的な風景の描写はすごく美しくて、読んでる時は楽しいんだけど、一旦離れると何の話だったか分からなくなって、サラサラとこぼれるようだった。届けたい言葉とか想いの共有は、表層ではなく、自分の深いところに潜って出会う、という、イメージだけが印象に残っている。
終盤で、この二人が離れて手紙を送りあっている理由のようなエピソードが語られ、そこから急に物語が像を結んで読みやすくなるんだけど、一方でやや物語が濁ってしまったような不思議な感覚にもなった。天上のものが地上に降りて来てしまった、とかそういう感じ。
大事な部分があった気がするけど思い出せないので、思い出したらまた書きましょう。

2022年12月1日

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読書状況 読み終わった [2022年12月1日]
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著者が企画したヨーロッパお菓子ツアーの旅日記。全編まるで講談のような名調子で、読みやすい、が、当時の言い回しが多用されてるので、今読むと赤面しそうなフレーズも多いですが…。良くも悪くも調子のいい本です。お菓子の話はどれも面白く美味しそう。それにも増して、著者の人脈の多彩さがもたらす人間模様が面白い。人間と人間が密な時代だったんだなあ、と、ドラマか映画を見ているような気持ちになります。こんなツアーに参加できた人たちが羨ましい。特に、スペイン、ポルトガルで南蛮菓子のルーツを探るツアーが面白そうでした。

2022年9月1日

読書状況 読み終わった [2022年9月1日]
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明治維新前後、犬と人間の関わりにどのような変化があったのか、膨大な資料をもとに紐解く本。
元々里犬として町の中で自由に暮らしていた犬が、西洋の犬のようにキチンと飼い主に管理されるようになったこと、西洋の犬がもてはやされ、従来の日本犬が淘汰されてしまったこと、ポチという名づけの由来、西郷隆盛と犬のエピソード…と盛りだくさんの情報が詰まっている。話しがあちこち飛びすぎたり、史実を独善的に捉えてるようなきらいがあって読みにくいと感じる部分もあったが、こういうテーマの本はなかなかないので、そこそこ面白く読めた。

2022年8月17日

読書状況 読み終わった [2022年8月17日]
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本を読む行為というのは、本当にただその文章を読んで読み終わることだけではない、と強く思う。
この本は長く読み進まなくて、面白いけど途切れ途切れにしか読めなかった。
さて、昨日(2022年5月26日)、私は「届かない手紙を書くこと」などをテーマにしたトークイベントと哲学カフェに参加した。
そこで語られたのは、書いても必ず言い足りないし、言いすぎること、誰かに宛てて手紙を書くと書きやすいが、その誰かは自分でもいいこと、書くことで形が見えて理解できてくること、書くことで後に残すことが出来ること、なんてことを話し合っていた。
さて、今日、私は、終盤に差しかかったこの本を読み始めた。
あれ…この話はもしかして、昨日の「書くこと」の話の別バージョン?書いても書いても辿り着けない、記述しきれない人間、という存在の話なの?
正しいかどうかは分からないし、そもそも小説に正解はないと思うのだけど、自分の中でそんな風にすごく腑に落ちてしまった。
昨日の今日で読まないと多分こんなふうには思っていない。今日というタイミングがなせる技というか。何かに導かれるように読むことがままあって、なぜ今日読んでみようと思ったのか、不思議でならない。

二編目
・良い夜を持っている Have a good night

これは、美しい風景を持つ思考実験である。

全てを記憶してしまう能力を持つゆえに、自分が無限に重なり何が自分か分からなくなっていく父。
では、自分を理解するためには、自分ではない外側を作るしかない、と自分に理解できない言語を自分の外側に築き続ける行為。

"夢の外に出るには、思考を外に出さねばならない。自閉した表の中では全てが広がり続けるだけだ。"
"あらゆる思考が風景として進行してしまうならば、風景についての思考はその外に置くより他ない"と。

そうしてできた言葉の壁の作り方を再現するように、あるいはほどくように、その息子は言葉の自動生成を試みる。

と、ここまできて、これは先の物語の前段か、と分かる。そこから急に、先の物語もこの物語も焦点を結び始める。
言葉は、書けば書くほど真実をすり抜ける。
記憶は、重なれば重なるほど現実から離れていく。
ということか、と思うけれど、どうしても理詰めでは最終的に理解出来なくてイメージだけが次々と浮かび、なんとなくわかった気になってしまう。
自分がわからない父も
父がわからない息子(叔父)もどこか切なくて
やりきれなくて、でも語られる風景や想いは美しい。
これは下手に頭で理解するものでもなさそうに思えて、ただ繰り返し繰り返し、言葉を読んでいた。随分長いこと。

確かにそこにあったのだ。父も、叔父も。
それが、赤いビー玉となって、姪の元からこぼれ落ちるのだ。

2022年7月1日

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読書状況 読み終わった [2022年7月1日]
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感じすぎる自分の気持ちを大事にする、ということが中心にある。HSPの人に限らず応用できる考え方。ただまぁ、中々こう気持ちに自分を持っていくのは難しいから悩むんだよね…。そういう気持ちになっていいよ、というだけで気持ちが楽になるんだろうか。娘の助けになるかしら。

2022年5月20日

読書状況 読み終わった [2022年5月20日]
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「傲慢と善良さ」が、現代の結婚がうまくいかない理由。
なるほどなあと思った。人間て、ある時代にある一定の特質を示すと思ってるんだけど、今はまさにこれだな、と。優しいのに息苦しいというか。そういうもどかしい物語。でも最後はおさまるところにおさまって、良かった。

2022年4月26日

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読書状況 読み終わった [2022年4月26日]
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語り口は軽くて、面白いブログ読んでるくらいの気軽さで読めるのに、文学的な視点からの切り口が、「そう読むのか!」とハッとすることが多くてさすがだなーと思う。侮れないなあ。
常々、枕草子はブログやん、と思ってたので、「景色を詠んだ歌はインスタ映えを狙った歌」、という解説には大いに頷きました。
自分が心を動かされたことを他の人にもシェアしたい、という気持ちは今も昔も変わらないんだなあ。そうして、いつの世にも共感されてきたものが古典として残ってきた。そういうことが、今の、主に若い世代の人にもわかりやすい例えやノリで語られる。これなら自分に近くて、いわゆるお勉強としての「文学」という畏まった感じではなく、楽しむもの、自分の気持ちを代弁する親しいもの、として感じられるんだろな、と思う。
後半の、亡き者を偲ぶ歌の解説あたり、特に「想いが芸術に昇華するとき」の項は、そういう意味で読み応えありました。

2022年4月6日

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読書状況 読み終わった [2022年4月6日]
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2021年12月27日、第1巻読了。
思ったよりずっと面白い。少し重厚な文面と、これから不穏なことが始まりそうな展開、主人公の異能のかっこよさ、これぞファンタジー。図書館司書としては、図書館が持つ知識が大きな力になってるってところにグッときます。あと、キリヒトとマツリカのやり取りがかわいい。これは映像化してないのかな。したら面白いと思うのだけど…。
2021年3月9日、全巻読み終わってすぐ振り返り読書中。
普段は、もう一回読みたいなあと思っても、なかなか読み返さないんだけど、今回は即、様々なところに貼られた伏線を確認している。そしてついつい読んでしまう。これはクセになる読み味。
一つの物語の中に、ぎゅっと詰め込まれたファンタジー、ミステリー、政治、言語学、哲学、そしてかわいい恋。これだけの要素があるから、読んでて飽きるはずもなく、アクションシーンは読み進めるのももどかしいほどだった。文章のリズムがまた良くて、難しい言葉も語られているように頭の中に響いてくる。昔、文字がなかったころ、物語はこうやって語り継がれたんだろう、と思うような、口に出したくなるリズム。
出てくる登場人物が皆魅力的で、映像化したらどんな姿かしらと想像しながら読むのもまた良かった。
こうやってワクワクさせる中で、随所に語られる、知識の大切さ。戦争を起こさせないために知識を使うこと。人間の知恵はなんのためにあるのか、どう使うべきなのか、本当に考えさせられる。今の世界情勢だからこそ、身につまされる。図書館の究極の目的は、次の戦争を起こさせないことだ、と言った人がいるけれど、まさにその通り。それをマツリカとその仲間たちはやってのけた。それぞれの役割を果たしながら。
これからの世界を守るためにマツリカとキリヒトは離れたけれど、二人の再会をぜひ読みたいなあと思いつつ、まだ読んでます。

2022年3月4日

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読書状況 読み終わった [2022年3月4日]
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