細雪(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005126

感想・レビュー・書評

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  • 2023.12.29 読了。
    大阪では名の知れた名家、蒔岡家の4姉妹が織り成す日常を綴った長編小説上巻。4人姉妹の三女の雪子の縁談がなかなかまとまらず次女の幸子夫婦は心配し色々と話を持ちかける。


    谷崎潤一郎作品は「春琴抄」しか読んだことがなかったので、そちらに比べるとドタバタと様々なことも起こるが日々を描いた作品なので穏やかな気持ちで読めた。
    作品の大部分は幸子目線で語られている。
    この時代は結婚の順番さえも上からでなければならなかったり、四女の妙子がお金を稼ぐという行為も職業婦人は貧困な家庭のものがやることだったり、上流階級の家では現代と色々異なり大変そうだなぁと感じた。
    現代でもニュースなどで未婚率や子どものいない家庭の多さを話題にするということは、細雪程は格式ばっていないが「結婚することがステイタス」という考え方は未だに続いているのだなと感じた。

    幸子・貞之助夫婦は互いに思いやりがある夫婦で素敵だと感じた。

  • 「若草物語」を読み終わったところで、そういやこれも四姉妹の話だったなと、本棚の奥にいたのを引っ張り出してきた。
    意外にもさらさら読める。
    何より東京生まれの谷崎が、ここまで関西人の、特に若い女性の趣味や性格を詳細に把握できていたことに驚いた。
    松子夫人というモデルがあるにしても、まるで神の視点を持っているかのようにありありと描き出すのだから不思議だ。
    新潮版は注釈も素晴らしく、昭和初期の感じをこまかく想像できて楽しい。

  • 図書館。自分たちの家系にふと重ね合わせたくなるノスタルジー。

  • 大阪の商家・蒔岡家の四姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子の人間模様を描いた小説。日中戦争勃発前後の時代ながら、時局の影もほとんど感じさせず、幸子は二人の妹の結婚に頭を悩ませつつも、のんびりとした日々を送っている。

    長い小説ではあるが、なにかと事件が起きるので飽きずに読める。ときに可笑しく、ときに感傷的なホームドラマ。

    また、(上流社会のものではあるが)当時の風習や価値観などがうかがえるのが興味深い。昔の人はのんびりしていたらしい。見合いの前に興信所に頼んでかなり詳しく相手方の身元を調べていたり、引っ越しの見送りに百人近く人が来ているのに驚いた。新潮文庫の注釈が詳しいのも良い。

    「何しろ本家の連中は昔風で悠長だものですから。」(p.79)

    上巻は雪子の見合いを中心に、妙子の弟子のロシア人家での食事会、京都への花見旅行、鶴子一家の東京転勤、幸子の流産など。

  • とにかく時間がかかった

    表現は相変わらず好き

    続き楽しみ

  • .

  • 海街diaryを読んで、姉妹の話ということでずっと気になってたこの本を手に取りました。
    大学が休みの間、時間をかけて全巻読もうと思います。
    雪子はPerfume のかしゆかでイメージしてます。

  • かつて富貴を誇っており、今は没落しつつある槙岡一家の美人三姉妹の生活を描いたもの。
    本家にはもう一人長姉がいるけれど、今のところ影は薄い。
    分家の長であり、槙岡家の次女の夫である貞之助が考えている通り、三姉妹には時間の感覚が希薄。
    そのせいで周りがやきもきすることもあるけれど、その緩やかさによって雪子のお見合いという現実的な主題にも関わらず、平安文学を読んでいるような気にさせられる。
    一文一文が長く、しかも優雅な言葉が遣われているのも、その感覚に寄与しているかも。
    花見の描写は、近現代のものとは思えない美しさ。

  • 「細雪」谷崎潤一郎
    ホームドラマ小説。弁柄色。
    B&Bフィクショネス文学の教室 課題図書。

    通読。当時の上流階級の風俗が事細かに描写されているとともに、これが書かれたのがまさに戦時下であり、贅沢な文学を書くことで体制に反抗するということが感じられた。
    ジャーナリズムにおいては「ペンは剣よりも強し」が(少なくとも戦局に陥る前は)求められていたところに対して、頑なに「文学性」を追求していることの意志があるように思う。

    谷崎は、結局、上流であることや雅であることに終生憧れ続けたんだろうな。
    同時期に、源氏物語の現代語訳で色恋ともののあはれを描き出しながら、対照的に、社会との間で翻弄され世間体の中で生きる家族を書くことで、自分自身の世俗さを赤裸々に反映していたのかもしれない。(4)



    以下読書会のメモ
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    人の話を聞くことの面倒くささの一歩手前の間合い → これが文章力か

    「不要不急の美」、中身がないにもかかわらず評価される美しい文学

    コロナ禍のもとで、状況と文学、や、体制と文学、という点において示唆に富む
    直截的な反抗よりも、より図々しく、より美しく、より高度な成熟した反抗

    善悪を文学に持ち込むとその二律から逃れられなくなるのだ、即ち、中身のない物語という形式による反抗である

  • 雪子さんの縁談が早うまとまってほしい。とりあえず、陣馬夫人の非常識ぶりには呆れる。

著者プロフィール

1886年7月24日~1965年7月30日。日本の小説家。代表作に『細雪』『痴人の愛』『蓼食う虫』『春琴抄』など。

「2020年 『魔術師  谷崎潤一郎妖美幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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