- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101005140
感想・レビュー・書評
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やっと読了した。これで蒔岡四姉妹との付き合いは終わった。
読み終えて、「で、一体作者は何が言いたいのだろう?」と思ったが、解説を読み、そもそも谷崎文学は作者が言いたいことを表す文学ではなく、作者が主観を消すことによって、「ものがものを語る」物語文学として成功しているのだ、これこそ「源氏物語」から続く日本の物語文学の伝統なのだということ。ふーん、なるほど。
34歳にもなって、お見合い相手を怒らせるほど内気でなかなか結婚出来ず、かと言って自活する気もなく、何時までも姉たちに頼りきって気位ばかり高い、腹が立つような、でも美しい三女雪子。(結局、最終的には貴族出の男性との縁談が纏まりました。ま、親の財産を当てにしている、似たようなタイプです)
板倉が突然亡くなったあと、また、ボンボン啓三郎とのよりを戻したかに見えて、バーテンダーとの子供を宿した、名家を破壊するような生き方ばかり繰り返す四女妙子。
蒔岡家の人等が皆、おっとりして気位が高く「そんなに簡単に縁談に載ったら、軽く見られてしまう」などと気にしている間に、サバサバと事を進め、渡米までの10日間ほどて見事に雪子の縁談を纏めてくれた、やり手美容師の井谷婦人。
人が良く、雪子の縁談のために、妙子の火消しの為に、あっちこっちの人とこっそり会ったり、手紙を書いたりといつも奔走してくれる、幸子の旦那の貞之助さん。
人物の容貌、性格、言動の描写が細く面白かった。でもストーリーとしては昼ドラのようであった。
谷崎潤一郎は「エロチックの天才」と言われているらしいが、妙子がお産で死ぬほど苦しんでいるときには、口から「蟹糞」のようなものを吐き出すし、最後、雪子が婚家へ出発する日には「下痢が止まらない」。花や蝶みたいな綺麗な物を描くだけでなく、そういう肉体的にも内面的にもドロドロしたものを含めた生命を描いてこそ、エロティックというのかな。私は子供だから?(えっ?)理解するのはちょっと難しい。-
わたしもちょうど読み終えたばかりで、にたような感想をもちました(特に三女にイライラ、次女夫に感心)。
>谷崎文学は作者が言いたいことを...わたしもちょうど読み終えたばかりで、にたような感想をもちました(特に三女にイライラ、次女夫に感心)。
>谷崎文学は作者が言いたいことを表す文学ではなく、作者が主観を消すことによって、「ものがものを語る」物語文学として成功している
とは知らなかったです。目から鱗でした。2021/05/27 -
えみりんさん、はじめまして。コメント有難うございます。
同じタイミングで読み終えられたのですね。新鮮な感想を分かち合えて嬉しいです。
「上流...えみりんさん、はじめまして。コメント有難うございます。
同じタイミングで読み終えられたのですね。新鮮な感想を分かち合えて嬉しいです。
「上流社会のお嬢様方も大変やな。私に関係のない世界の話やな。」と思いながら読んでいたのてわすが、妙子が赤痢になったあたりから、上流社会もお嬢様も関係ないような赤裸々な部分まで描写され、綺麗な人だからこそ、こっちが恥ずかしくなってしまうような、醜いといえば醜い、エロチック?といえばエロチック?なやはり昼ドラとは違う芸術作品なのかな?とあとから考えると分かる作品でした。
正直、あまり好きにはなれませんでしたが、文学史を勉強したと思ってます。
2021/05/27
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昭和16年という時代が、ただそれだけで胸をつまらせる。
幸子の抱えている悩みが、なんて平和でのんきで取るに足らないことか。
あの頃に戻りたいと間もなく思うようになると思うと、小説内の日々のすべてが愛おしい。
崩壊寸前の滅びの美の内包、挽歌的な切なさ、まさにそれ。
幸子も結婚前はブルーだったと知ってホッとした。
また読む。 -
はぁー面白かった! あらすじから受ける印象とは比べ物にならない面白さだった。下巻後半になると上巻にあったおっとりした雰囲気が消えることもあり、ほぼ幸子視点で妹二人に気を揉み続け。途中で「ちょっと待てよ」と我に返る隙も与えられず、妙子の行状が明らかになるシーンでは幸子同様にショックを受けてしまった。『細雪』は閉じた人間関係の不健全さを流麗に描いて傑作なので、日本の美とか興味なくてもどろどろホームドラマが好きならおすすめ。
それにしても妙子。有能なのに人の気持ちに興味がなくて、それでおかしなことになり、姉さんたちも妹がかわいくて波風立てたくなくて、きちんとフィードバックを返さないために事態を拗らせて。家族って互いの短所を強化してしまうところがあるから怖い。
最後のあれは、聖女を人間の女に引きずり下ろしてるんだな、と思いました。 -
長女が東京で子育てに追われ、
次女が家の体面を保ちつつ生活をし、
三女が幾多の縁談を避けながらも変化を過ごし、
四女が我を通して望まれない恋愛をする
そんな蒔岡家の日々は、最後のページをめくった後にも続いているような、巡る人の世に終わりなど無いと思わせるような、不思議な読後感。 -
初めてまともに純文学というものを読み、その魅力に気づけた一冊。
上中下と読むのは大変だったし、話自体も起承転結とかがあるわけじゃなく、蒔岡四姉妹の日常をつらつら描く、という感じなのだけど、読んでいて全然退屈しなかった。
日本人、特に関西に住んでいる方はぜひ読んでみるべき。そして谷崎潤一郎の文体、何だかとても好き。男の人なのに何処か文に女性のようなたおやかさがあるからなのかな。他の作品もぜひ読んでみたいと思った。 -
だいたい1930年代後半~40年代初頭を舞台にした、芦屋の金持ち四姉妹の話。船場老舗商家の蒔岡家。主人公姉妹の父の代までは豪奢に暮らしていたが、晩年には既に経営は傾いていたようで、父の死後は後を継いだ長女の婿が店をたたんでいる。妹たちはそれが面白くなくて、他にもいろいろ(非理性的なものも含めて)理由があって妹たちはこの義兄とはあまり仲良くない。
長女(40くらい?)の婿は銀行員。この夫婦は「本家」。子だくさん。転勤で東京渋谷に引っ越す。
二女(30後半?)の婿は会計士。この夫婦は「分家」。芦屋に住む。娘がひとり。
三女(30ギリ前半くらい)と四女(ギリ20代くらい)は未婚。本家と東京が嫌いなので分家に住んでいる。
多くが二女視点で書かれていて、三女のなかなかうまくいかない見合い、四女の奔放な恋愛沙汰、それらの監督責任を本家から問われるかも、といったことに悩みながら、ピアノを弾いたり芝居を見たり鯛を食べたりお買い物をしたり習い事をしたりして暮らしている。専業主婦ね、と思うなかれ、主婦業は当然、女中のお春どんやらお久どんやらがやるのです。
「これは当時の最高級品だった」とか「これを当時持っていた家庭は数パーセント程度だろう」とか、そういう巻末注釈ばかりふられる生活の描写。
四女が丁稚あがりの男と恋に落ちようものなら「あれはまったく種類の違う人間だと思っていたからそんなこと想像もしなかった、まさか蒔岡家の娘がそんな、」と慌てふためく。
…と、こう冷静に書くとなかなかいけすかない女たちのようにも思えるのだが、読んでいる間は不思議とそんなふうには感じなくて、結局「お嬢さん育ちで人が好い」ということなのか、作者の筆力ですっかり芦屋ライフに引き込まれているからなのか、いろんなエゴも「人間臭くて共感できる」というくらいに感じられる。
戦争はどんどん激しくなるのだが、洋裁の修行のためにパリに洋行したかったけど危ないなとか、お隣さんだったドイツ人家族が帰国していったけど達者だろうかとか、あまり華美にするとやかましいご時世だから父の法事を盛大にできなくて寂しいとか、婚礼衣装を新調できないとか、恒例の花見でいつも行っていた料亭は今年はやめねばとか、、、切迫感に欠ける。
何が面白かったか、と聞かれるととても難しい。でも面白かった。映画を先に観ていたおかげもあるだろう。そしてこの、起伏のない長編を、市川崑はきれいに映画にしたもんですね。すごいなー。
原作のほうもまた最後の終わりかたがねー。そうやってこの長編を終わるんか!っていう。やってくれる。(別にどんでん返しとかじゃないですよ。) -
細雪。読んでよかった。
最後まで読んで、ただ仲の良い姉妹というだけでなく、小さなことから事件に至るまで様々な場面での会話や行動を通じて、良いところもそうでないところも知って、イヤだなと思うこともあったけれど、それも全部ひっくるめて彼女たちが好きで、鶴子、幸子、雪子、妙子、みんな幸せになってほしいなぁと心から思う。まるで、古くからの友人みたいな感覚。まだまだ読んでいたいし、時代としてはこれから戦争で大変なことになっていくはずだから彼女たちがとても心配。小説だからこれで終わりなんだけれど、ずっと彼女たちがコロンバンでお茶をしたり、手紙のやりとりをしたり、お花見をしたり、変わらずいきいきと生き続けているような気がしてならない。ラストは悲しい出来事もあったし、良かったと思えることもあったけど、結末ありきの小説ではないから、それは大きなことではない気もする。
幸子は谷崎純一郎の奥さまがモデルになっているのだとか。
それにしても、ここまで女性を描けるのはスゴイと思う。
この四姉妹が好きなのはすでにレビューした通りだけど、細雪の文章もとても好き。
読み終わってしまうのがとても惜しい。
退屈だなぁと思って読んだ上巻。今改めて読むととても楽しく読めそう。
下巻単体でいうと☆4かなぁと思うけど、トータルでは文句なしの☆5です。 -
もう、もう、もう全てが素晴らしくて美しくて、
谷崎作品へのイメージがガラリと変わりました。
出会えてよかった小説! -
本書は他の谷崎作品のようにアクの強いキャラクターは出てこないが、この巻にきて妙子の毒婦的な要素が現れ、やっぱり谷崎だ❗️とファンには嬉しい展開。雪子も別の意味で嫌味な部分が表面化してきた。
ただ、妙子みたいな女は現代では当たり前のように存在するけど、時代が時代だけにとんでもない不良のように扱われ、些か彼女が気の毒になった。格式だの面子だのに囚われている人間って、本当に愚かだ。それは形は異なるけど現代にも通じる。
『痴人の愛』や『卍』のような強烈なキャラも出てこないし、それほど衝撃的な事件も起こらないけど、ページを捲る手がすらすらと進んだ。 -
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妙子の本音、気になりますよね~。しゅうこさんの感想はそうそう、と共感するところが多いです。神戸文学館に細雪のコーナーがあるんですね。いつか行...妙子の本音、気になりますよね~。しゅうこさんの感想はそうそう、と共感するところが多いです。神戸文学館に細雪のコーナーがあるんですね。いつか行ってみたいなぁ。2016/07/05
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マヤさん
感想が軽くてお恥ずかしいです。マヤさんのレビュー、わたしが言語化できなかったようなことをするりと書かれておられるので、わたしもそ...マヤさん
感想が軽くてお恥ずかしいです。マヤさんのレビュー、わたしが言語化できなかったようなことをするりと書かれておられるので、わたしもそうそうー!と思いながら拝見しております。
神戸文学館、着物の話や、モデルになったホテルや料理屋の写真なんかも展示されてました。2016/07/06
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美しい4姉妹の物語。義理の兄までもが大きく巻き込まれて縁談の話をまとめるために奔走する時代が、そう遠くない昔にあったのだということにまず驚きました。それに関わって、あれこれ思い悩む次女の心中が細かく描かれています。
あれこれ思い悩むことがあると、こんなに悩んでいてはいけない、と思ったりもしていましたが、悩むだけ悩んで、人にも相談して、よりよい対策を練るという手順を踏んで日々の生活を送ってもいいじゃぁないかと思えるようになりました。
これは、名作と言われる本書の本道の読み方ではないかもしれませんが、読んでよかったです。
神戸育ちなので、地名や駅名がわかって頭の中で風景を想像できるのも楽しく、また姉妹の関西弁が頭の中に自然にはいってくるので、関西を離れて暮らしている自分にはとても懐かしいような心の落ち着く文体でもありました。 -
絵巻の最終巻。
三女雪子と四女妙子のその後の顛末はもちろんの事、雪子の結婚の世話と妙子の奔放な生き方の始末に翻弄し、本家の姉夫婦と板挟みになりながらその間を取り持つ次女幸子とその夫の苦労や尽力も見どころ。
開戦となる直前でこの絵巻を終わらせているのも、この美しき世界が間もなく一つのピリオドを打つ事を文字なき文字で伝えている気がして物哀しい。
読み終える頃には、谷崎潤一郎の流麗な文章の世界にどっぷり浸かっていた。とても良かった。日本文学って素晴らしい。 -
図書館。
違和感を覚えつつも自分の記憶力に自信がなくて、最後まで読んで一言。中巻あるんかい!!!!!!!!!!!!!!!!!! -
昔ほど羽振りは良くないものの旧家としての誇りを持つ姉妹を巡る物語。身分や財産が伴侶を決める第一条件で、人柄や相性が二の次なことに驚かされるが、昔はこれが当たり前だったのかしら。就職のようなものと思えば何とかなりそうな気もする。
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4姉妹の日常物語の終結。 下巻は中巻以上に様々な事件が起こり、また4姉妹の人間関係が浮き上がってきます。 雪子の見合い話にやきもきする幸子。 妙子の天真爛漫(と、言っていいのかはさて置いて)な振る舞いに、不満を募らせる幸子。 東京からなかなか姿を現さない鶴子。 物語は突然に終わってしまい物足りなさもあるけど、そこはタイトルの細雪"の通り、4姉妹の儚い日常を描いたものだと感じました。 もっと色々書きたいですが、何を書いてもネタバレになりそうなので自重します。 また数年後に改めて読み直したい作品でした。"
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特に起承転結はなく淡々と進むお話
但し、終わった後の余韻と喪失感は、所謂名作の印何だと思う
相変わらず「文」が素晴らしく、文学というものは文でも魅せられることを改めて認識させる本