青年 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101020020

感想・レビュー・書評

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  • 文豪、森鴎外の作品『青年』。
    実家の私の本棚から取り出しました。
    中学生のころに買って読んだ本です。
    一度読んだ本を、今の私がもう一度読んだらいったい何を想うか。


    主人公の名前が「小泉純一」。
    なんとなく、今は政界を引退した元総理大臣のことを思い起こさせます。
    私が本を読むときはあまり主人公のイメージを固めないのですが、
    この作品に関しては、元総理大臣の息子(芸能人のほう)のイメージが定着してしまいました。
    しかも、純一は地方のお金持ちの家の人。
    勉強ばかりしてきた育ちのいい、しかも外見がとてもよいお坊ちゃま。
    親の援助で東京に出てきて、「本を書きます」といいながらも
    なかなか手をつけることをしない。
    医師を目指す友人と議論をたたかせたり、
    人脈を広げ見聞を広げようと、いろいろな会合に顔を出すが、
    たいした収穫も無い。
    あげく、偶然であった魅力たっぷりの未亡人にもてあそばれ、
    傷心の坊ちゃまは未亡人のもとから逃げ帰る。
    自分を傷つけた未亡人へのあてつけで、ようやく
    本の執筆を決意する。
    「今書いたら書けるかもしれない」

    なんなんだ、この男、「小泉純一」。
    これが「青年」なのか?
    こんなんでいいのか?小泉幸太郎!!

    解説を読むと、文学的な裏づけがしっかりしていて、
    また当時の世の中への風刺がちりばめられている作品
    とのことです。

    すみません、私が不勉強でした。


    結論:私、中学生のころにはこの作品読んでいないと思います。

  • 1910-11年発表。西欧語と和装用語が満載の教養小説だが、美男子がもてまくりつつ自分の性欲に悩むという面倒臭い話でもある。当時の高等遊民の風俗や、イプセン、メーテルリンク、ヴァイニンガーあたりの知的インパクトが推し量られる点が興味深い。
    「人形食い」という言い回しが出て来て、他でも見かけたような気もするが、面白いなあと思った。少し前なら面食い、今ならイケメン好きと呼ぶところだが、今も昔も特に女性の性向として特化されるのはどういうわけか。もっとも、本作ではあくまで、男性から見た女性の異常性欲という扱いなのに対して、イケメンはむしろ女性同士の隠語のような気がするので、それはそれで、時代の流れと言うべきか。
    それにしても、本作はブクログではISBN検索でしか引っかからないし、iPadでは「性欲」は助詞付きで変換できないし(あ、「助詞」もだ)、何とも暮らし辛い世であることよ。

  • 森鴎外2冊目はこの『青年』であり、これを選んだ理由はただ目に入ったからです^^ どれが有名な作品かもわかりませんよっと\(^o^)/ でも、そういう境遇で読んだものの、なかなか興味深いものでした。もちろん、時代や環境がまったく違うものの、私は主人公に共感するところが多々ありました。よくこのような青年の心を書くことができると、つくづく感心させられます。あ、私はまだ青年の心を持っていますよーヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ

  • 私には難しかったなー

  • 漱石らしき人物が登場していることから、かなり漱石を意識しているようだ。
    本作の内容も夏目漱石の「三四郎」に比する小説だろう。住んでいるところはどちらも谷根千界隈で、女性に振り回されるところも一緒。
    地方から出てきた若者が思い悩むさまが描かれるところも似ている。
    ラストが唐突なのは、書くべきことは書いたということなのだろうが、「ストレイシープ」の方が、悩ましさが出ているような気がする。

  • 夏目漱石の『三四郎』に影響されて書いたとされていますが、正直いって『三四郎』のような深みはないですかね。

  • ストーリーや文体はともかくとして、やたらフランス語が出てくるし、同時代の作家のパロディみたいなのも登場するし、文学かぶれの同人誌に載るような作品に感じる。当時の評価はどうだったのかな。

    今なら袋叩きにあいそうな描写もあるし、注釈も、その言葉に説明がいる?と思うところも多く、いろいろ時代を感じる。
    そもそも、学校へ行くわけでもなく、誰かに弟子入りするわけでもなく、仕事もせずなんとなく東京で部屋を借りて一人度暮らすという身分。資産家の息子という設定でも、そういうのも時代を感じる。いや、そういうご身分の人は、今もいるのかもしれないけど。

  • 初めての森鴎外作品。まずは著者の文学、哲学・思想についての知識に驚愕。元々東大医学部卒のバリバリの軍医という経歴もさらに驚き、博識すぎ笑
    文章自体はそこそこ難解なところが多いけど、思想・心情について的確に描写しているという印象を受けた。田舎の裕福な家に生まれた青年が、普通じゃ嫌だといって小説家になるために東京に出てくる。文学の知識はあるから、作中の登場人物の行動や思想を批評したりして頭でっかち感がある一方、大村の言葉に素直に聞き入るといった受容性の高さもある。自らの哲学がまだ不安定なところで様々な女性との出会いを重ねていき、ありていに言えば「大人としての経験を積んでいく」。

    主人公は最後までなかなかモノを書くことから遠ざかっていた。それは最後の方でも少し触れられているが、とりあえず書こうとしているものはあってそれがなかなか進捗しないように思える。その原因のひとつとしては、思想的な迷いや技術の未成熟さがあると思われる。この点は大村との交流を含め、自身の哲学や心情を客観視しながら議論しており、精神的成熟が進んでいる。一方、モノを書く衝動みたいなものが欠けているのも事実。とりあえず東京に来た感、漠然と小説を書こうとしてる感は最初から拭えない。そこで未亡人との箱根での一件では、そうした浮ついた主人公に羞恥心、劣等感、嫉妬、虚無感、憤怒といった種々の感情が巻き起こり、創作意欲を駆り立てる。いわゆる、スイッチが押されたんですね。
    要するに、内面の成長と意欲を駆り立てるイベントが、どちらもいい感じに進んで、創作意欲が湧いたみたいです。このイベントが恋愛ごとで、いかにも青年っぽい青く初々しいものです。

    現代社会の我々も、勉強やOJTを通して知識や技術を会得しながら、何かしらで自分自身を駆り立てなければならないですね。

  • 田舎から上京してきた小説家志望の青年の、性愛を巡った内面の変化がじっくりと描かれていた。性愛といっても誰に恋をするというわけではなく、東京で出会う様々な女性や、気の合う男性とのやりとりに何かしらの性愛の欠片を感じ取っているだけなのだけど、そこがリアル。
    あとは上野、大宮、箱根などの身近な土地がたくさん出てきて、それぞれの街の大正〜昭和前期あたりの雰囲気が分かって面白かった。

  • ◆3/7オンライン企画「その相談、あの本なら、こう言うね。F/哲学の劇場」で紹介されています。
    https://www.youtube.com/watch?v=1K0qT4_6lEk
    本の詳細
    https://www.shinchosha.co.jp/book/102002/

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著者プロフィール

森鷗外(1862~1922)
小説家、評論家、翻訳家、陸軍軍医。本名は森林太郎。明治中期から大正期にかけて活躍し、近代日本文学において、夏目漱石とともに双璧を成す。代表作は『舞姫』『雁』『阿部一族』など。『高瀬舟』は今も教科書で親しまれている後期の傑作で、そのテーマ性は現在に通じている。『最後の一句』『山椒大夫』も歴史に取材しながら、近代小説の相貌を持つ。

「2022年 『大活字本 高瀬舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森鴎外の作品

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