和解 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101030012

感想・レビュー・書評

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  • 父子の確執と和解をテーマとした短編?私小説。
    男は父親と対峙・葛藤してこそ一人前なので(カッコいい!笑)、少し期待をこめて読んだのですが、葛藤と和解にいたる心境について、私小説ならではの肝心の内面の部分の深みが足りない気がして(むしろイジイジしているきらいすらある)、短編(中編?)ということもあり、少し物足りませんでした。また、代名詞の多用と、短フレーズの文体、場面描写の唐突感なども状況をわかりづらいものにした一因だったような気もします。
    ですが、本書の構成は、諍い→長女の死→次女の誕生→和解と、見事な三角形になっており、盛り上げから着地にいたるまでの描写がきれいですね。特に、長女の死と次女の誕生の場面は生々しく、本物語の両柱として主人公の心情の変化をリアルに転換させているところは面白かったです。それに、祖母、義母、妻、妹たちといった周囲の女性陣も、父子の諍いに一喜一憂し、和解に向けてやきもきする立場がとても良い。

  • 淡々と男の生活が書かれていて特に面白いこともないけどなんか読めるな、からの父との和解の場面の突き刺さり方が凄かった。
    平凡な日常が和解の場面を盛り上げていて、読み始めよりずっと読んでよかったと思える。

  • 私にとっての、志賀直哉入門の一冊。

    白樺派の代表ともいえる彼の、生涯のテーマである父との確執を描いた作品。
    次第に和解していく様子が、何故だか分からないけど自身に投影される。

    リアルでは父と仲良しなのに不思議。それだけ広く解釈させられる文体であるということかな。

  • 写実主義。今では医療が発達していて助かっていた命も昔は助からなかった。内容は著者の実体験だと思われる。中でも子供が亡くなるシーンというのはかなり詳細に描かれていてて、痛々しくて、さらに親の気持ちというのは計り知れない。家族間の負の感情というのは家族以外の誰かが解決できるものではないが、生まれ故郷の違い、時代の流れの違いから親子間のすれ違いが生まれる。
    子供は思い通りに育たないというのが常だが、親も親で子供のいうことは聞かないのだ。とある家族のやり取りを表現したものが大衆的にも文学的にも世界に影響を与えた志賀直哉の中編小説。

  • 不仲な父親と息子の和解まで。

    頑なすぎるぞ二人とも!

  • 父親との確執を和解する代表的な私小説。そんなシンプルな題材だが、もう一度読みたいと思うくらい面白かった。

  • 志賀直哉は人間だった…。
    とても繊細な人だった。神経質ともいう。
    山手線に引かれたこと結構トラウマになってた。

    慧ちゃんのシーンは他の人の書いた文だったら途中で集中力が続かなくなって飽きていたかもしれないけれど志賀直哉の細かい描写とリアルで実況されているみたいで引き込まれたままだった。

  •  今のところ、志賀直哉の作品はこれが一番好き。

  • その当時のものの考え方、家族(父と息子)といったものが伝わってきます。対立が解消される話は読んでいてもほっとしますね。背筋が伸びる文体。

  • 仲違いする者を前に「解せない」と喧嘩腰になる。
    しかし心の奥底に「仲が良いにこしたことはないんだけどな」という気持ち(調和的な気分)がある。
    残るは、相手も同様に調和的気分を抱いているかという不安要素。
    仲直りする事が「それまでの不調和よりも進んだ調和である」と双方思えるか。

    和解に際し、「仲介/歓迎してくれる者」「理屈でない、感情による直接対話」「調和的気分の自覚」という三点。
    最終的には本音の吐露が道先を決する。
    理論は大抵、感情を予測できない。合理的な一本の理論が予測するまま、その通りに進む感情はあるまい。殊に和解の場において。

    『和解』。
    物語において起こさなくてもいい悲劇を起こすのではなく、自然発生した出来事や事件をそのままに描き、それ以外、平時の事柄も平等に並列してしっかりと描かれている。
    悲惨を並び立てたり、あれこれ書かず、有ったことをそのままに自然記述する。部分に焦点を当てず、幸/不幸、全体を平等に照らす。

著者プロフィール

志賀直哉

一八八三(明治一六)- 一九七一(昭和四六)年。学習院高等科卒業、東京帝国大学国文科中退。白樺派を代表する作家。「小説の神様」と称され多くの作家に影響を与えた。四九(昭和二四)年、文化勲章受章。主な作品に『暗夜行路』『城の崎にて』『和解』ほか。

「2021年 『日曜日/蜻蛉 生きものと子どもの小品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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