- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101033129
感想・レビュー・書評
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そもそも写楽の謎とは何か?をわかりやすく説明しながら、写楽の正体を解き明かす。
構想20年で資料収集した著者によって推論を交えた写楽の正体に迫る論理展開は、フィクションでありながらも、「もしかしたら本当に写楽はこの本の通りなのか?!」とさえ考えさせられる。
序盤の描写の生々しさが痛々しい。
また、登場人物のバックグラウンドや回収しきれなかった伏線については後書きで続編の執筆を著者自ら明かしているので、期待したい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
取材の緻密さに脱帽。自身の研究過程をうまく物語に取り入れていて、謎に迫るプロセスを楽しむことができる。浮世絵や江戸文化知識も楽しく知ることができてよい。研究の表現方法て、こういうカタチでもいいんだと。
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読みやすくて面白かった。
でも写楽についての記述が冗長な印象。
伏線がわかりやすいのに、同じことを何回も繰り返していてくどい。
写楽の正体について迫っていく展開が急ぎ足だったので
余計に前半のダラダラ感が目立つ。 -
六本木ヒルズの回転ドアの事故からストーリーは始まる。
全てに捨てられた男が写楽の謎に挑んでいく。 -
写楽の謎にせまるお話。
前半は主人公の佐藤さんの悲劇がつらいです。
なんとか浮上してほしい・・・。
落ちるところまで落ちたなら、きっといいことがあるはずって
願いながら読み進めていました。
写楽の書いた浮世絵は印象深くて、
私も美術の便覧?でみた中でもすごく好きでした!
でもまさか
こんなに謎めいていた人・・・絵・・・だったなんて。。。
江戸時代の政策や他国との関係、町民の様子、状況などなど
いろんな角度から本当の写楽について迫っていくのが
面白いです
江戸編?と現代編?のストーリーで
ただ解決させるだけじゃないところがなお読みやすいのかも。
下巻に期待! -
世界三大肖像画家、写楽。彼は江戸時代を生きた。たった10ヶ月だけ。その前も、その後も、彼が何者だったのか。誰も知らない。歴史すら、覚えていない。残ったのは、謎、謎、謎-。発見された肉筆画。埋もれていた日記。そして、浮かび上がる「真犯人」。元大学講師が突き止めた写楽の正体とは…。構想20年、美術史上最大の「迷宮事件」を解決へと導く、究極のミステリー小説。
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島田荘司さんの写楽に対する思い入れがひしひしと伝わる
というか伝わりすぎる!
らしいといえばらしいが少々くどい。
でも写楽の正体は気になる
がんばって下も読んでみるべし。 -
かなり面白い。浮世絵、勉強したくなります。
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表紙がとってもかっこいい。上下巻並べると一枚の絵になる。
東洲斎写楽は言わずと知れた正体不明の浮世絵師。1794年5月からわずか10カ月の間に150点近い作品を残し、大ヒットを飛ばした後に、忽然と消えた。その中でも第一期の大首絵の構図の斬新さは、当時活躍していたどの浮世絵師の流れも汲まず、そして忽然と消えた後も、誰も写楽の流れを追随しなかった。
現代人から見ればそれほど特異に見えない写楽の浮世絵は、当時の人々には奇怪に映った。例えば、見栄を切る場面を強調したところからもわかるように、様式美が求められる役者絵に、滑稽さを持ち込んだ。それが新鮮だった。
想像してほしい。歌舞伎役者は当時のアイドルだ。かっこよくて美しく描かれなくては浮世絵は売れない。そこに写楽はどアップで変顔をしたアイドルスナップ集を出したようなものなのだ。
様々な研究者が、これは歌舞伎への深い洞察がなければ描けないとか、役者の表面ではなく本質に迫った素晴らしい絵だ、と絶賛している。写楽=歌舞伎玄人説は暗黙の了解事項と言っていい。
しかし本当にそうなのだろうか。
そもそも、写楽がレンブラント・ベラスケスと並んで世界三大肖像画家と言われるようになったのは、1910年にドイツ人のでユリウス・クルトが『Sharaku』を発表し、絶賛してからだ。
それまで日本では写楽なんて忘れ去られていた。そんなところに海外から逆輸入される形で、写楽の再評価が始まった。だから写楽の評価にはクルトの影響が多分にある。
島田荘司は、この説を小説の中で否定している。
否定どころか、これは歌舞伎のど素人が描いた絵だ、と言っている。
これ以上はネタばれになるので書けないが、諸説ある写楽は誰だ?論を対話形式で(小説だから当たり前だけど)わかりやすく解説しているので、すっきりするし、とても面白い。
欠点は最初の100ページくらいは、写楽とは全く関係ないストーリーが続くこと。下巻の最後まで読んでも全く無意味な話だった。
あと写楽の肉筆画に描かれた文字から、江戸時代のある有名人にたどり着くのだけれども、たぶんこれは作者の創作だ。
下巻のあとがきで参考程度だが、虚実の選別は示してある。でもちょっと足りない。