PAY DAY!!! (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (407ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101036229

感想・レビュー・書評

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  • 初・山田詠美。新鮮。
    アメリカで映画化でもされそう。スパイク・リーあたり。

  • 給料日って何よ、と思っていたが、読み進むにつれ「これって今まで山田詠美の中でも最高じゃね?」と思いはじめた。
    南部の夕暮れ時の、ゆったりした時間の流れ方や、男女の双子の、女の子の方がちょっとませてて要領はよくて、男の子の方がぼーっとして鈍いようでいて地道に成長していく感じなんかも、素敵だった。
    解説:豊﨑由美

  • ハーモニーとロビンという双子の兄妹を中心に、二人の家族や恋人、友人たちとの関係をえがいた作品です。

    二人の父親のレイはアフリカ系アメリカ人、母親のソフィはイタリア系アメリカ人で、一年前に離婚し、ロビンは母親とニューヨークでの生活をつづけることを決めました。一方ハーモニーは、父親の実家のある南部に移り住み、湾岸戦争から帰還して以来アルコール中毒に陥っているウィリアム叔父や祖母とともに暮らしています。

    父のもとを訪れたロビンは、カフェで働くショーンという年上の青年との恋に落ち、ハーモニーは友人に連れられて立ち寄った中古車店で人妻のヴェロニカと出会い、彼女と不倫の関係を結んでしまいます。そんななか、ニューヨークで同時多発テロが起こり、ソフィのゆくえがわからなくなり、ロビンたち家族は悲嘆に暮れます。

    大小のさまざまな問題に心が揺れ動くハーモニーとロビンの兄妹が、経験を通じて一歩ずつ成長していくすがたが生き生きとえがかれていて、おもしろく読みました。「ペイ・デイ」(給料日)ということばで締めくくられていて、なんだか前向きな気分にさせられます。

  • 久しぶりに山田詠美の本を手に取った。この人の心理描写は本当に凄いと思う。次に紡ぎ出される言葉を楽しみに一気に読了。PAY DAYで結ぶストーリー展開に少し無理があると感じたので星4つとした。

  • 遭難して帰らぬ人となった兄を重ねて読んだ。人をそのまま受け入れて行くこと。自分の弱さを出せるほどに強くなること。自分なりに兄の死を受け入れて来たことを思い、まだまだ受け入れられなくてわだかまっている事にまた少しだけ向き合えた気がした。

  • 夏休みに父と双子の兄のいるジョージアにロビンが遊びに来たところから物語は始まる。
    アフリカ系アメリカ人の父とイタリア系アメリカ人の母は離婚して、兄のハーモニーは父とジョージアで、妹のロビンは母とニューヨークで暮らしているのだ。

    ニューヨークとは全く違う、アメリカ南部の暮らし。
    気候も、風習も。
    白人であるか黒人であるかで大きく暮らしぶりの違うアメリカの南部。
    彼らはそのどちらでもなく、またどちらでもある。

    夏休みが終わりロビンがニューヨークへ帰り、そして起きた9.11。
    南部にいてロビンとその母を心配する、父とハーモニー。
    ニューヨークにいて事故の現場を目の当たりにし、帰らない母を待つロビン。

    この事件が家族に残した傷の深さ。

    けれども、人生は哀しみばかりではない。
    恋をし、親友をつくり、人に優しくなり、強くなっていく二人。
    これは極上の青春小説だ。
    中学生や高校生にも是非読んでもらいたいと思った。
    ちょっと難しいと思っても、ゆっくりと丁寧に読んでいけば、きっといろんなことが伝わるから。

    そんなことを思って読んでいたら、解説に豊﨑由美が全部書いていた。
    “大事なことを、大仰な言葉なんかひとつも使わずに、普段着の言葉で、まっすぐに伝える。”
    トヨザキ社長、私が言いたかったのは、まさにそこなんですの!

    たくさん付箋を貼りました。

    “私は、絶対に自分の中の扉を閉ざしたくない。それは、自分が心にかけている人々から、自身も同じようにされたいからだ。”

    “「湾岸戦争の話、聞かせて下さい」
    「別に。ただの戦争だったよ」”
    父の兄であるウィリアム伯父は、湾岸戦争に従軍していたので。

    “彼女(お母さん)を疎ましく思い始めた頃、ハーモニーは、自分に期待されているものの多さに、いつも身震いしていた。そんなものを一向に意に介さずに、やんちゃなままでいられるロビンがつくづく羨ましかった。何も望まれない人になりたい。彼は、そう切望した。父といて嬉しかったのは、彼が自分そのものを面白がってくれたからだ。”

    “好きな人は、側になんかいなくたって、いつだって抱き締められるのよ。”

    “「約束って、未来のためにあるんじゃないのよ。今のこの瞬間を幸せにするためにあるのよ」”

    “自分は、何か困難が待ち受けた時、それに立ち向かおうとする。そして、それが不可能だと知った際に涙を流す。その涙は、主に、怒りや悔しさや後悔のために使われる。(中略)それでは、ハーモニーの涙はどうだろう。彼の涙には、もっと柔らかな出所があるような気がする。”

    “私は、既に、幸せな無知ではなくなった、とロビンは感じている。あんなことは、もう起きない。起こしてはならないと人は言う。けれど、起きた現実を肌で知るものには、こう言える。起きてはならないことが起きることだってあるのだ、と。”

    舞台はアメリカで、いろんな国を背負ったアメリカ人たちが出てくるけど、これは日本の小説だと思った。
    どうしてかなあ?
    夏から秋にかけて翻訳小説を固め読みしたけど、それとは違う、日本の小説って気が確かにする。
    村上春樹には感じないんだけど。なんだろう?
    ナショナリズムとは違う。
    根っこのところ、メンタルが、日本人っぽいのかなあ。
    日本人っぽいってなんだろう?

  • 山田作品でかなり好きなやつ。
    2~3回読み直したことあり。

    ちょっとキュンとするというか、各話のラストはpayday!で終わるつながりもなんとなく好き。

  • 家族や恋人間の、真摯に向き合う愛情に溢れたお話。911のあとの家族の絆が胸を打つ。アメリカの雰囲気や人種差別問題がとてもリアルに描かれていますね。
    作者の紡ぐとても深い言葉の数々は、一度だけではもったいないです。いつか人間関係に悩むとき、ぜひ読み返したいと思える一遍です。おすすめ。

  • どこまでも爽やかでまっすぐな主人公の2人が魅力的な青春ストーリー。「フルハウス」とかアメリンホームドラマのようなつくりで、登場人物もみな個性的でセリフまわしが小気味がいい。さすが山田詠美って感じで安心して読める。アメリカに対してあんまりいいイメージはなかったけれど、こうやって気持ちを率直にぶつけ合えるところは日本人にとっては羨ましく感じるところだろうな。個人的には堅実で真面目な父に好対照ないいかげんな叔父さんの存在がよかった。内田先生曰く、厳しい親に比してこういういいかげんな叔父さんの存在は寅さんがごとく子供の精神的成長には良いらしい。

  • 女性作家であるにもかかわらず、思春期の男性について非常にうまく書かれている。物語の中で、母の死は必然だが、9.11でなくても良いし、そうであってもよい。この物語での9.11の必然性がほんの少しでも描かれていたら、かなり完璧だと思ったのは、私だけではないはずです。でも、テロは、突発的に無差別で起こるので、このような書き方になるのは仕方ないかもしれないけど。。。うまいんだけど、いまひとつ心の奥底まで届きませんでした。

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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