音楽 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050546

感想・レビュー・書評

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  • 徹底的に作り込まれた人物と世界観。それ故に現実感があまりなく思える。
    しかし内容は流石と言ったところか、美しい文で記述されるえげつない物語には天晴れ。
    「音楽が聞こえない」という比喩は、(もしそれが比喩であるとするのならば)漱石の「月が綺麗ですね」よりも好きかもしれない。

  • 哲学的な思考が乏しい自分にとって途中難解な部分もあったが、面白さはあった。

    哲学的な要素が多く、言葉も難しい。

    表現は美しいと感じた。

  • 快感と音楽はどちらも感覚的なものなので(音楽を聴くだけの人間からしたら)、音楽が聴こえない=不感症というテーマがおもしろく感じ、最初から最後まで興味を持って読むことができた。
    物語内で起きたこと全てに対して、事細かく精神科医の考えが巧みに表現されていて、最後まで飽きることがなかった。

  • やっぱり三島は深くえぐり込んでくる。
    不協和音なのに美しく酔わせる音楽みたいに。

  • 2022年11月2日読了。「音楽が聴こえない」症状を訴える患者・麗子を診察する医師汐見。挑戦的な彼女の振る舞いは多くの男たちに影響を与え…。映画化もされたという三島由紀夫の長編。勿論文章も古めかしく、「当世流行の精神分析を題材に小説を書いてみよう」という著者の山っ気も大いに感じられ、説明口調の部分はご愛敬という感じだが、それでも文章の巧みさ・展開のドラマティックさにいつの間にか引き込まれてしまう。著者自身の女性に対する屈折した感情、を想像しながら読むのは邪道な読み方かもしれないが、非常に楽しく読んだ。結果ハッピーエンドになってよかったね。

  • 「音楽」が聞こえないというヒステリー持ちの麗子を診察する精神科医。不感症である彼女を治すべく自由連想法療法を使うが、それでもうまくいかない…一体、彼女を苦しめている元凶は何か?
    音楽ほとんど関係なかった。不感症とあるので、性的な文が多いかと思いきや、自然な形で表現されているので読みやすい。
    精神病理学について触れているので勉強にもなる。

  • 三島作品の中でも読みやすい方だと思う。

    三島って自分の思考をそれぞれのストーリーに当てはめて人に"分からせる"ことが本当に上手だと思う、小説家の鑑、頭で考えてることとか自分の拘りのようなものを認識できても、それを言葉に変えて形造るってめちゃくちゃ難しいことなのに。内容はもちろん、その圧倒的才能に毎回ひれ伏す。

    三島の作品に出てくる、ヒロイン性のある人間の持つ魅力、抗えない色気っていうのかな、単に精神疾患者のカルテ、それに対する担当医の感想、みたいな乾いていて想像できるものじゃなくて、湿った甘美さを嗅ぐことができて、いろんな意味で満足感があった。文学を読んだ。

  • 音楽に例える三島のセンスに腰砕けって感じ。参りました。麗子嬢にイライラしながらも、だんだんと真実に近づいていくストーリーも純粋に楽しめたし、まあ本当に文章がうまいなと思いました。

  • これからずっと「音楽」を違う意味にとらえる呪いをかける本だな。

    花井の「先生伺いますが『治す』とはどういうことなんですか。精神分析の力で患者の抑圧を取り除き、『治癒させる』とはどういうことなんですか。」「多様で豊富な人間性を限局して、迷える羊を一匹一匹連れ戻して、コンフォーミズムの檻の中へ入れてやるための、俗人におもねった流行なんですね」「僕はひょっとすると、アメリカの精神分析学者は、政府からお金をもらっているんじゃないかと思う時があります」ってセリフが一番印象に残っている。私の「鬱を治すことってつまり、いつ誰が定めたかもわからん"普通の人"って人間に、労働に都合のいい人間に、無感動な人間に、無理やりされちまわねぇですか?」という取るに足らない思想は、こんなにおしゃれかつ感情が乗った文章になるのかと。花井好きだったな。

  • あまりにも面白くて一気に読んでしまった。
    三島由紀夫の描く狂気が好きだとひしひし思いながら読み進めた。
    登場人物に風変わりな人間が多く登場するが、不思議と異質な印象は抱かず、すっと胸の内に溶け込んでくるのは心理描写が非常に丁寧で緻密だからだと思う。狂気的な思いもわかりやすい言葉で表現されているからこそ、理解することができ、なおさらその恐ろしさを強く感じられた。
    また、タブーを犯した人間の背徳的な感情を美しく描いている点が好みだった。良くないことをしているのに、どこか神聖にも感じさせる文章を生み出す三島由紀夫の言葉の使い方はすごいと思う。
    『いいわ、きっといつか兄さんを矮小な赤ん坊に変えて、私の子宮へ押し込んでやるから』この一文に、『音楽』の持つ魅力が凝縮されていると思った。衝撃的なこの言葉を見た瞬間の爽快感が堪らなかった。
    良い本に出逢えた!と大声を出したいくらい、楽しめた物語だった。

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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