歌行燈・高野聖 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101056012

感想・レビュー・書評

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  • はじめて泉鏡花さん
    高野聖だけ二度読みました
    ぞくぞくする世界

  • 歌行燈には特に心を打たれたが、他の作品もよい。しかも泉鏡花の作品の中では読みやすいのではないか。

  • 泉鏡花の描く、女の美しいこと。
    妖艶な美、嫋やでありながらもしなやか、そして底知れぬ恐ろしさと儚さがすべての作品で共存している。
    代表作である『高野聖』はたしかに妖話ではあるがそれ以上に、彼が描きうる女の真の美を突き詰めた作品と言えよう。

  • 泉鏡花の作品を初めて読んだ。まず言葉が難解。同じ日本人の言葉とは思えない多様な言葉を操り、さまざまな情景を表現しているが、私のような浅学にはストーリーを追うだけで精一杯だった。

    高野聖はそれでもまだわかりやすい。特に妖怪女性の魅力的な表現には読んでるこちらも魅力された。馬が薬売りとは思わなかったが。

    一方、歌行燈は登場人物を追うこともままならない、難しい内容。喜多八が2人?誰が誰?按摩が何人?登場人物と時間軸を掴むのが非常に難解であり、混乱してしまった。日本語をもっと学ぶ必要があるなと痛感した。

  • 明治期は、近代化が急速に進む中で、変わりつつある世界を肯定的に捉えるところと、否定的に捉えるところがあり、泉鏡花のこれら短編小説には、それが、女性観、恋愛観、義などのテーマとして描かれている。

    「歌行燈」では、芸に対する真摯な姿勢、義理人情、そして内面の強さがうまく描かれていて、それらは人間の美しさとして感動を呼ぶ。そして、その美しさは時代の超えて恒久的なものだ。

    泉鏡花の作品は、舞台、映画、朗読に取り上げられることが多く、それは、独特の文体、表現の豊かさ、ストーリーのテンポ、があるからだろう。

    多分に読者の想像力に任される部分があり、現代社会では想像力が追い付かないところが、難解となる理由になる。
    自分の場合も、「高野聖」や「歌行燈」については、Youtubeで過去の映画や舞台を映像を観つつ、二度、三度と読んで、初めて全容が理解できるようになった。

  • 以前、高野聖を読んだことがある。
    それ以外には、三尺角。
    それくらいのお付き合いしかない文豪。

    高野聖は、蛭の林や山家でのことは記憶に残っていたが…。
    こんなに本編に入るまでの語りが長かったっけ?
    まずここに驚いた。

    そう考えてみれば、どれも独特な語りのリズムを持つ。
    たらたらと雫が滴るように文が続き、終わったのか、続くのか、定かではない。
    古語なのか、方言なのか、見知らぬ言い回しは、逝って戻らぬ過去の世を思わせる。

    何か、江戸の建物にランプが置いてあるような、江戸のにおいがする明治の町中に迷い込んだ感じがする。
    そうして、語りに導かれ、町の路地をそこここと、どこへ向かっているかわからない気持ちで歩いていると、急転直下、思いがけないところにやってくる。
    表からは隠されている住人の生活の秘密を見てしまったかのような感覚に襲われる。

    吉田精一解説、三好行雄注。
    戦後直後の注釈とすれば、今はもう少し丁寧な注も出ているのかな?

  • 鏡花の作品で最も有名な「高野聖」。十数年ぶりに再読してみて「こんな話だったのかー!」と当時の自分の理解力の低さに愕然となった。正直「高野聖」は苦手だと思った。森の中で蛭がたくさん落ちてくる描写などかなりリアルで気持ち悪い…。本作で一番好きなのは「売色鴨南蛮」と「歌行燈」だ。典雅で美しい文章から生きる人間の悲しみが滲み出ていて切ない気持ちになる。「紺の筒袖の上被を、浅黄の紐で胸高に一寸留めた甲斐甲斐しい女房ぶり。」は帯してないってことなんですね。祖母もですが昔は帯はよそ行きの時しかしなかったみたいです。

  • 理解できたかと問われれば自分の教養が足りないために理解できない部分も多かったと答えるしかないが、それでも独特の文体から溢れる色香や怪しさ、彩りの鮮やかさ、皮膚の温度、水の温度を感じることはできた。

    高野聖が一番わかりやすかったが、怖さや怪しさよりもヌメヌメとした質感の方が勝り、読んでいる間中ぞわぞわとした感覚に襲われた。

    売色鴨南蛮も切なく印象的な話だった。

  • 瞼(まぶた)に颯(さっ)と薄紅(うすくれない)。

    CMのコピーのような文章がさらっと出てくる。でも嫌味でなく自然。自由自在な言葉使いにノックアウトされました。天才肌の人なんでしょう。カメラのカット割を考えたかのような場面の切り替わりが印象的。

  • 『歌行燈』が素晴らしい。
    解説にもある通り、映画的であり能楽的。2つのストーリーを同時展開しながら、徐々に急迫な調を帯びつつ、クライマックスに向けてストーリーを統合しながら盛り上げていく、その演出力とリズム感。
    文章自体のリズム感、というか詩的表現力(言葉遣い)も素晴らしい。
    一言でいえば、センスがいい。
    神憑った逸品。

    『高野聖』も良い作品です。
    泉鏡花はほんとにセンスがいいです。

    なお、泉鏡花の作品は「想像しながら読むのが大変」という印象。
    先に漫画や演劇などでイメージや粗筋を掴んでおくほうが、読むには楽だと思います。

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著者プロフィール

1873(明治6)年〜1939(昭和14)年)、小説家。石川県金沢市下新町出身。
15歳のとき、尾崎紅葉『二人比丘尼色懺悔』に衝撃を受け、17歳で師事。
1893年、京都日出新聞にてデビュー作『冠弥左衛門』を連載。
1894年、父が逝去したことで経済的援助がなくなり、文筆一本で生計を立てる決意をし、『予備兵』『義血侠血』などを執筆。1895年に『夜行巡査』と『外科室』を発表。
脚気を患いながらも精力的に執筆を続け、小説『高野聖』(1900年)、『草迷宮』(1908年)、『由縁の女』(1919年)や戯曲『夜叉ヶ池』(1913年)、『天守物語』(1917年)など、数々の名作を残す。1939年9月、癌性肺腫瘍のため逝去。

「2023年 『処方秘箋  泉 鏡花 幻妖美譚傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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