お目出たき人 (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101057149

感想・レビュー・書評

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  • 話した事もない女性へ恋心を爆発させる男の「超・妄想純愛劇」

    世が世ならPTAの皆様が意気揚々と出版社に凸しちゃう粘着ストーカー小説の題材になりそうだが…

    本主役はひたすら純粋で夢見がちでポジティブで高尚な侍か賢者だ。少し笑えて、割と切ない。

  • 誇り高き失恋ロマンチスト、武者小路実篤!
    友情、愛と死に続いて3作目読了。

    あ、目が合った!
    いま、絶対俺に微笑んでくれた!
    俺のこと好きに違いない!
    結婚だ!やったぜ!

    他の方と婚約しました…orz
    ってゆーお話。

    これは、本当におめでたい。主人公が笑けるくらいおめでたい楽天的夢想家。
    鶴という恋する女性をこれでもかってくらい理想化し偶像化して、チマチマあーでもないこーでもないって一人で考えて何のアクションも起こさぬまま振られるっていう、救いようの無いストーリー。

    巻末の阿川さんの解説がなんとも痛快。

  • おめでたい人ってこういう人のこと言うんだなぁと、微笑ましくなる恋愛コメディ小説。これが、明治時代の作品と聞くと、何とも明治時代に親しみが湧いてくる。

  • 2019/7/27
    全然モテなかったと噂の武者小路実篤の本は前にも友情で読んだことがあるが、それに近いような、簡単に言うとウジウジ妄想男の話?
    もともと月子という女性を好きだった26歳の主人公は、月子にフラれた後から近所に住んでいた鶴に恋をするのだが、別に鶴との関係が進展したり後退したりというような内容ではなく、言ってしまえば一目惚れした後、特に鶴との接点もないままにどんどん主人公が妄想や想像を膨らませていき、鶴が別の人と結婚したという知らせを聞いて勝手にショックを受けた的な感じの話です。
    主人公と鶴の関わりがあったとするところもいくつかありますが、電車の中で偶然に遭遇した、とか、代理の人に結婚したい的な手紙を送ってもらってお断りの返事をされた、とか、会釈をされた、とか、とにかく直接的な関わりが一切ありません。
    妄想だけでこうも話が進むものかと思うのですが、現代の小説ならきっと内容が薄っぺらくてつまんないなとか感じてしまうであろうところを、明治期のこうした文学作品は何でかつまらないと感じさせないところがあると思います。
    どうしてそう感じるのか色々考えてはみるもののよくは分からず…。でも色々な描写がすごく丁寧に書かれているからなのではないかなという気はします。読書素人ですが、こうした文学作品に時々触れるのも良いなと思います。

  • なんの為に貴君達は生きているのですか。
    国の為ですか、家の為ですか、親の為ですか、夫の為ですか、子の為ですか、自己の為ですか。
    愛するものゝ為ですか。
    愛するものを持っておいでゞすか。

    私は自分が勝手に恋し、勝手にもらいたがることによって例の人を不幸にしたくはありません。
    私は恋人の喜ぶことこそ望みますが、恋人の悲しむことを望みませぬ。

  • とにかく主人公が本当におめでたくてめちゃめちゃ面白い。独り善がりな妄想、思い込み、勘違いのオンパレードでアイタタター!な男なのだけど、片想いってこんなものでは?

  • 『お目出たき人』
    「女に飢えている」男。男の妄想。恋する相手は鶴。友人に仲介を頼み求婚するが断られる。そのまま妄想を抱き鶴を思い続ける。

    付録
    『二人』
    お互いを意識しながら結ばれなかった一郎と夏。

    『無知万歳』
    甲乙の会話。

    『生まれなかったら』
    自分が生まれなかったらという妄想を抱く中田豊男。

    『亡友』
    天才だった「あいつ」の思い出を話す男たち。

    『空想』
    自分を慰める妹を妄想うする男。

     2010年7月25日読了

  • (内容)
    自分は女に、餓えている。この餓えを自分は、ある美しい娘が十二分に癒してくれるものと、信じて疑わない。実はいまだに口をきいたことすらなく、この一年近くは姿を目にしてもいない、いや、だからこそますます理想の女に近づいてゆく、あの娘が…。あまりに熱烈で一方的な片恋。その当然すぎる破局までを、豊かな「失恋能力」の持ち主・武者小路実篤が、底ぬけの率直さで描く。
    (amazon.comより)

    (感想)
    女性に振られて、それまで何とも思ってなかった女の子に懸想し、一心に想いを寄せる男の話。
    タイトルは、「おめでたい奴だな〜」という皮肉な言い方で使われる"目出たさ"を意味していると思われます。
    この話、ぶっちゃけてしまうと、ずっと青年の女の子への妄想なんですが。
    "友情"もそうですが、ムシャの作品パターンとして、
    男が若い女に片想い⇒熱い妄想を膨らませる⇒振られる⇒泣く
    まさに、こんな感じです。
    ただ、色んな妄想をしながらも、自分を律したり、強烈な美意識を発揮したり。そこら辺が、まさに純愛な妄想というか。
    清らかな妄想。相手を凄く好きだからゆえの妄想であるところが、共感を覚えさせるのでしょう。
    どちらかといえば、好きな人のことを全肯定したい、好きな人が好きなものを理解したい。好きな人の色に染まりたい……ってなタイプの人は、ムシャの作品は気に入るんじゃないでしょうか。
    この主人公を見て、"さっさと告白しろよ!"と思うタイプか、"本当に好きだから下手に告白出来ない(ガラス細工を触るような感じ)気持ち、分かるな〜"と思うタイプかで、結構、その人の恋愛観が表れる気がする。

    しかし凄いな〜と思うのは、基本的に主人公のタイプは、"友情"も"お目出たき人"も同じなのに、それぞれ別の作品として一気に読めてしまうところ。
    プロレスで言うならば、凄い試合巧者。リック・フレアーみたいな感じです(分かる人しか分からない例えですいません)

  • 主人公の「自分は女に飢えている」のリフレインに、そして話したこともない娘と自分が結婚する運命でそれが彼女の幸福でもあるというおめでたい思い込みや幾多の馬鹿げた妄想に、驚いたり呆れたり苦笑いしたり、なのにだんだんと主人公のことが認められるようになり、恋に破れる場面にほろりと来て、主人公が繰り返し自分に送っていた「幸あれ!」のエールを送ってあげたい気分になります。お目出たさの背後にある人としての辛さの描き方、そして描写とストーリーの緩急が巧いのです、武者小路先生。最近では一番「面白かった」小説。主人公に似たところのある人、そんな人物に嫌悪感のある人には特にお薦め。

  • 武者小路実篤の思考と自分の思考はきっと近いんだと思う。
    本編の主人公が書いた(ということになっている)付録が面白い。

著者プロフィール

東京・麹町生れ。子爵家の末子。1910(明治43)年、志賀直哉らと「白樺」を創刊、「文壇の天窓」を開け放ったと称された。1918(大正7)年、宮崎県で「新しき村」のユートピア運動を実践、『幸福者』『友情』『人間万歳』等を著す。昭和初期には『井原西鶴』はじめ伝記を多作、欧米歴遊を機に美術論を執筆、自らも画を描きはじめる。戦後、一時公職追放となるが、『真理先生』で復帰後は、悠々たる脱俗の境地を貫いた。1951(昭和26)年、文化勲章受章。

「2023年 『馬鹿一』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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