- Amazon.co.jp ・本 (494ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101067148
感想・レビュー・書評
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本作は、1975~78年に雑誌「新潮」に連載され、1979年に刊行されました。
著者が40代後半に書かれた作品になります。
本作を読んだのは2006年で、当時の私の年齢は45歳位ですか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『帰らざる夏』でも感じだが、作者は物量のある文字を読ませるのが巧すぎる。
筆致は重い上に医学のキャリアに裏打ちされた真実味があるが、数百ページをサクサク読ませるリズムがある。
作者が度々扱う精神の穿孔についての描写がとにかく興味深い。
確定死刑囚と医官で主客が入れ替わる構成。 -
3.81/236
『独房の中、生と死の極限で苦悩する死刑囚たちの実態を抉りだした、現代の“死の家の記録”。
全員が殺人犯のゼロ番囚たちは拘置所の二階に収容されている。死刑宣告をうけた楠本他家雄は、いつ「お迎え」がくるか怯えている。女を崖から突き落とした砂田の暴力、一家四人を殺した大田の発作、そして他家雄の奇妙な墜落感等、拘置所の医官で若い精神医の近木は丹念に見廻る。生と死の極限で苦悩する死刑確定囚たちの拘禁ノイローゼの実態を抉り出した現代の“死の家の記録”。全三巻。』
(「新潮社」サイトより)
『宣告』
著者:加賀 乙彦(かが おとひこ)
出版社 : 新潮社
文庫 : 494ページ(上巻) 上中下巻 -
重厚な筆致というのでしょうか。ぐいぐいと引き込まれます。登場人物のことをもっと知りたいという気持ちに知らないうちになってしまっています。
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透明感があるのはなぜだろう。
ゆっくりと、時には早く時を刻む死刑囚の監獄。実際の時間の経過は早いのか遅いのか分からない空間での、囚人達の状況、気持ちが自然に描写されている。
人間をあらゆる自由と文明から隔離し、ただ死だけを待つ、、そのために人間の本質がよく見えるからか、この小説には透明感すら感じる。読んでいくうちに感覚が研ぎ澄まされる。なぜか落ち着いてくる。あらゆる感情が波のように現れては消えていく。生とは何か。死とは何か。暗い場所なのに光が見える。絶望なのに希望を感じる。対極なものを見せつけられるともっとそれを比較することができる。悪あっての善。まるで聖書を読んでいるかのような、安息を感じる。
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挫折
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大学生1年生早速授業をサボって読んでいたっけ、懐かしい思い出です。
その頃に読んでいたので、汗のジトっとした印象があります。(当時の読んでいた記憶)
安藤という若い青年の生い立ちから事件を起こすまでが書かれるのえ、てっきりその人が主人公かと思っていた。
群像劇…とまでは言わないが、主人公(に近い)楠本他家雄とその周りの人々のエピソードが並行して進んでいく。
上巻では、終わり1/4くらいが、楠本の回顧録という形で綴られていく。
色んな人の思い(込み/記憶のすり替え)等があるので、何が正しいのかはわからないが、強弱ありながらも話は進んでいく。 -
拘置所医務技官であった著書が実体験をもとに
書かれたもので、
死刑囚の心の微妙な描写が
言葉でうまく表現されている。 -
上中下読了。かなりのボリュームでしたが、読ませる力を持った本でした。
刑務所の中に方々を描いているのですが、ラストは涙が止まらなかった。
死刑とは人を2度殺めること…という主人公の言葉が印象的でした。
死刑が決まってからその日を迎えるまで、想像を絶する心理状態なのだと思います。 -
初めて読んだ加賀乙彦で、かつ一番好きな本。
実際にあったアプレゲールと言われる世代のバーメッカ殺人事件を元にした小説。
戦後、正しいと思っていた事が全て覆る、価値観の変わり方は多分私には想像できない。
慶応を出てなに不自由ないと思われた主人公がこのような犯罪を犯したのはその価値観の変遷についていけない、繊細な部分があったのかな?とも思う。もちろん大多数は順応していったわけだし罪は罪なのですが。
加賀乙彦という人は陸軍幼年学校在学中に敗戦を迎えた人だ。
だからこそ、精神科医になったのかな。 ここまで書きかけ。