ある一日 (新潮文庫 い 76-11)

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  • Amazon.co.jp ・本 (141ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101069326

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  • こんどこそは、この世に生まれてきてくれる――。ひとつの命の誕生という奇跡をのせて、天体は回転しつづける。人生最大の一日を克明に描きだす、胸をゆすぶられる「出産小説」。

    出産前に読んでおきたくて、予定日まであと17日というところで読了。
    いしいさんの作品で現代が舞台のものは初めて読むから、どんな感じなのかなぁと思ったけど。くるくると情景が変わっていって、やっぱり不思議な感じ。
    陣痛〜出産シーンは壮絶…。〝お腹の中の小さな「いきもの」〟目線がとても良かった。
    バースプランは泣いた。

    2020.7再読
    こないだ読んだ「京都ごはん日記」のすぐ後の出来事。
    いしいさんと園子さんの赤ちゃんのお話。

    前に読んだ時は出産前だったけど、出産後のいま読むと陣痛の描写にうんうん頷いていた。
    『だんだん人間でなくなっている、見まもる慎二はおもい、いっぽう園子には、そんなことはもうとうにわかっていた。』
    『気絶できればまだ楽なのに、からだは燃える筒のように覚醒し、痛みとまぶしさのあまり目をつむることもできない。』

    お腹の中の「いきもの」の目線。
    『あらゆるものと一体だった自分が、いまはもう、すべてから切り離され、そうして、その切り離されてしまったものの影武者ばかりが、まわりにどさどさ無秩序に転がっている。』
    確かにそう考えると、いきなり外に出され今まで一緒にいた紐やぶよぶよと離れて心細いし泣きたくもなるよね。
    妊娠出産は神秘。

  • 前半ははもとまつたけを食べる2人が印象的。
    そして園子さんの出産シーン。私もつい3ヶ月前に体験したのが誇らしく思えるぐらい、神々しくて、奇蹟に近い営みなんだと思わせてもらえた。
    母親目線だけでなく、これからまさに産まれ出ようとする胎児の目線で書いてある文章はものすごかった。手に汗を握るぐらいドキドキした。
    また読み返したい。

  • 自分と関係のないものばかりのこのひどい場所で、かぼそいその光の筋だけが唯一好ましく、あたたかみを帯び、じっと見守っていてくれる感じがした。

  • 読み進めていくうちに、タイトルの「ある一日」を実感してハッとした。

    1つ目は、この小説が一日ちょっとの出来事であること。
    いしいしんじの言葉巧みな描写が、「ある一日」にこれほどの読み応えを与えている。

    そして、もう1つは当たり前だけど「ある一日」の過ごし方は人それぞれ違い、どこかで違うドラマが起こっているということ。
    登場人物以外の時間の存在を認識することで、「ある一日」の奇跡をより感じた。

    記憶はないけど、何故か「いきもの」に共感する傍ら、
    読者としてこの奇跡に純粋に感動できる、そんな物語です。

著者プロフィール

いしい しんじ:作家。1966年大阪生まれ。京都大学文学部卒業。94年『アムステルダムの犬』でデビュー。2003年『麦ふみクーツェ』で坪田譲二文学賞、12年『ある一日』で織田作之助賞、16年『悪声』で河合隼雄物語賞を受賞。そのほか『トリツカレ男』『ぶらんこ乗り』『ポーの話』『海と山のピアノ』『げんじものがたり』など著書多数。趣味はレコード、蓄音機、歌舞伎、茶道、落語。

「2024年 『マリアさま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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