- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101092072
感想・レビュー・書評
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「銀河鉄道の父」を読み、せっかくなので、賢治詩集を。教室で出会った宮沢賢治にも再会しました。
一編は「永訣の朝」。妹さんの死を前にした作品ですね。ora orade shitori egumo が印象的です。
もう一編は「雨ニモマケズ」。小説を読んでからでは、印象が変わります。その様に生きたいという願いの作品である事が感じられます。
「心象スケッチ 春と修羅」の部分が、小説にあった自費出版して、返本が多かったという生前の一冊。自身で、心象スケッチと称して、詩と呼ばれる事があまり好きではなかったようなので、新潮さんもタイトルに使えば良かったのにと思います。
かなり推敲された方です。一つの作品の文字のレイアウトも美しさをもとめている様です。言葉の文字数も厳選されていると思います。
さて、小説読んだし、詩にも少し挑戦しようかと思っていたので読むなら今でしょ、とトライしてみましたが、お父さんとしっかり者の弟さんの印象が残っていて、賢治の自由な創作に充分な愛とお金で生活を支えた家族ありきと思ってしまいました。淳水堂さんの様に、絵本にすればよかったかなあ。 -
9月21日は賢治忌。(1896~1933年)『文豪きょうは何の日?』より。
今年は宮沢賢治没後90年ってことで!
敢えて詩集をチョイス。
賢治にはまるで、
顕微鏡でしか見られないレベルの微生物から、一瞬で成層圏を超えてはるか彼方まで見渡せるような、
六道全てが常に見えているような、
地球が生まれてからまた星屑となるまでの長い時間を一瞬で駆け抜けるような、
不思議な大きさを感じる。
それでいて清々しいのに悲しくて、透き通っているのに暗黒でもあって。
それからどの詩も、声に出して読みやすい。
読むとリズムが良くて心地良い。
『恋と病熱』
"透明薔薇の火"という言葉が、高熱にうなされることのメタファーとして使われる。
"つめたい青銅(ブロンズ)の病室で
透明薔薇の火に燃やされる"
ブロンズのひんやりとした静かな冷たさと、薔薇の、文字通り燃えるような熱さの対比が、
この世に存在しない"透明薔薇の火"を使っていながらも、これ以上無いほどに伝わってくる。
『春と修羅』
タイトルだけは知っていたが、恥ずかしながらきちんと読むのは初めてだった。
とても難しかったが、注解や、あれこれ用いてなんとか少しでも掴みたかった。
まずざっと読んで分からない言葉の意味を調べ、心を空っぽにしてゆっくり読んだ。
賢治が詠う景色を、文字のまま浮かべていった。
本作で賢治は涙をこぼしていたけれど、仏教用語や、鉱物や、植物、様々な色が登場し、私にはとても美しい光景だった。
美しいけれど、大地も空模様も殺伐としていて、大きく力強くて。
宇宙をも感じるくらいだった。
六道で"修羅"は争いの世界とされる。
そもそも心象スケッチなのだから、
春と修羅=理想と葛藤 なのかな。
それを岩手の風景になぞらえて表現したのだろうか。
自分の内から蔓が伸びている。
蔓植物は何かに掴まらなければ上へ伸びていけない。
「くもにからまり」は、"雲にからまり"なのか"蜘蛛にからまり"なのか議論があるらしいが、注解にもあるように"雲"だと感じた。
"ZYPRESSEN"とはドイツ語で糸杉とのことなのだとか。
ドイツ語が用いられてることより、イメージとしてはゴッホの描いた糸杉のような…と注解にはあった。
私は2005年の春に竹橋の国立近代美術館でゴッホの糸杉を見ている。
(フライヤーと半券をスクラップしている)
賢治もまた、あのように黒々とうねりながら空へ向かって伸びる糸杉を見ていたんだろうか。
しっかり理解したわけではないけれど、読むほどに「春と修羅」が好きになるのは何故だろう。
自分の感情が暴れるのをどうにも出来ない歯痒さや怒りは、私も知っている気がする。
その感情は苦しくて醜くて黒いものだと感じていたけれど、賢治の手にかかるとそれすらある種の美しさを感じるから不思議だ。
激しい感情が波打つけれど、(2度出てくる)"おれはひとりの修羅なのだ"と言い聞かせることで、静めようと(着地させようと?)しているように感じる。
文字の配置も同じように波打っている。
信心深くて、博学で、デリケートな彼には、この人間界はどのように見えていたのだろう。
私達とは全く違う世界(=我々とは宇宙そのものだ=釈迦の教え)を見ていたのかもしれない。
瞋(しん)は仏教用語で三毒のうちの1つ。
釈迦(シッダールタ)は結局のところ、煩悩はこれら三つに尽きると説いた。
貪欲・瞋恚・愚痴(とんよく・しんに・ぐち)が、それにあたる。
・貧欲
貪るように欲して飽きないこと
・瞋恚
自分のみを是とし、他人を非として生まれる怒りの心
・愚痴
道理をわきまえずに愚かなこと
(鶏は貪欲、蛇は瞋恚、豚は愚痴の象徴とされていて、東京事変ファンの方はご存じかも)
『永訣の朝』
"あめゆじゅとてちてけんじゃ"
"雨雪(霙)を取ってきてちょうだい"、という話し言葉が呪文のように思える。
淡々とした男性の声での朗読の途中で、そこだけ女性の声で台詞が入るかのように、
リズムが変わるような感じがした。
「永訣の朝」は、妹のトシを亡くして暫くしてから書いたものらしい。
賢治の頭の中には、
"あめゆじゅとてちてけんじゃ"が何かの呪文のように響いていたのかもしれない。
(詩の途中で台詞が入るという形をとっているのは、「永訣の朝」だけではないけれど。)
"Ora Orade Shitori egumo"
急にローマ字が現れる。
"あめゆじゅ…"と同じく括弧書きの為、誰かの台詞か。
この部分をどう解釈するのかは、まだ判明していないらしい。
私は2つの感じ方を得た。
1つ目は、妹トシの台詞。
「おらはおらで、一人でゆく」といったトシの言葉を、賢治は受け入れがたくて、
前の台詞よりも更に呪文のようなローマ字表記にしたのではないか?
2つ目は、賢治の台詞ではないかという考え。
独り言だった為、トシに聞こえないように呟いた(あるいは思った)為、
解りづらいローマ字表記としたのではないか?
ただその後の括弧書きである"うまれでくるたて……"がトシの台詞である為、ローマ字部分も同じようにトシの台詞なのだろうか。
ちなみに"うまれでくるたて……"は、
"今度生まれてくるときは、こんなに私のことばかりで苦しまないように生まれてくるね"という意味だ。
歌曲『星めぐりの歌』
この曲には思い出がある。
高校生の頃、演劇部(今思えば、ほぼミュージカル部)に属していた。
とある台本を手にした時、劇中で宮沢賢治の星めぐりの歌を歌うシーンがあった。
けれど、台本には歌詞はあれど譜面がなかった。
今ならYouTubeもある。サブスクもある。
メロディーを見つけるのは簡単だが、当時はネットすらなかった。(いや、社会にはあったのか???)
結局誰がどう見つけてきたのか覚えていないのだが、『雨ニモ負ケズ』の次に私が宮沢賢治の詩だと意識したのは、
『永訣の朝』よりも『春と修羅』よりも、この『星めぐりの歌』だった。
今もそらで歌える。
厳しくも美しい北国の自然が、鉱石などの様々な物質に例えられる。
その科学的な響きが、それらを一層キラキラと美しいものに感じさせてくれる。
賢治が詠ってくれている北の風景は、だいたい頭の中に浮かべることが出来る。
ただ、難しいと感じるのは何故だろう。
この目でその雄大な自然を目にしていたら、もう少し掴めるのだろうか。
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ですね!
何の日様々です♪
春と修羅、コピー取ってしまいました。
こうして持ち歩くのは、池澤夏樹のスティル・ライフ以来。
久々きたー!ですね!
何の日様々です♪
春と修羅、コピー取ってしまいました。
こうして持ち歩くのは、池澤夏樹のスティル・ライフ以来。
久々きたー!2023/09/21 -
傍らに珈琲を。さん、おはよう御座います。
初めまして。
こんなにじっくり書いたレビューは、初めて見たので私もひとこと。
「永訣の朝」のローマ...傍らに珈琲を。さん、おはよう御座います。
初めまして。
こんなにじっくり書いたレビューは、初めて見たので私もひとこと。
「永訣の朝」のローマ字は、
中学生のときから読んでいますが、
普通に「もうあの世に行くんだな(人間の言葉ではなくなるんだな)」という感覚で読んできたように思えます。という私の読み方でした。
「春と修羅」については、青空文庫で私も読んでいます。2023/10/13 -
kuma0504さん、はじめまして。
おはようございます。
コメント、フォロー頂きとても嬉しいです。
徒然なるままに状態なので、いつもレビ...kuma0504さん、はじめまして。
おはようございます。
コメント、フォロー頂きとても嬉しいです。
徒然なるままに状態なので、いつもレビューが長くなってしまいます(汗)
人間の言葉でなくなってゆくとのお考え、成る程!でした。
とても文学的で、沢山本を読まれてきたのだなぁと感じます。
こうして考えを交換できること、とても楽しいです。
有難うございます!
私も是非フォローさせてください。2023/10/13
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「永訣の朝」は素晴らしい。
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)の呪文のような声。
妹とし子への愛が深く感じられる。 -
詩のことは詳しくわからない人間だが、文学フリマで岩手に行った時に行った文学館で得た情報も併せて、
賢治はとにかく表現をしたくてたまらなくて、さまざまな形態を模索して(詩を書いたり、童話を書いたり、詩の形態もいろいろ)、生き急いだ人生の中で、あふれ出る表現へのエネルギーをこれでもかと詩にぶつけている、生きざまのように感じられた。 -
久しぶりに詩を読みたいと思い、宮沢賢治を選びました。
有名な詩も沢山掲載されています。
国語の教科書に掲載されていた永訣の朝、懐かしかったです。
賢治の崇高な魂は透明な結晶となり、降り積もります。
日本語はとても美しい。
改めて思わせてくれます。
順番に読まなくても、好きなように読み進めることが出来るのも詩のいいところだと思います。
注釈も丁寧です。 -
「眼にて云う」、特に素晴らしい詩だと思います。
是非多くの人に読んで欲しい。 -
どうか声に出して
この美しい文を
あなたのことばを使って読んでください。
この空想スケッチと題された詩のような何かを
あなたができる限りの力で読み上げてください。
きっと新しい読み方を知ることができます。
呼ばれてやってまいりました 笑
宮沢賢治は文庫本でも読みましたが、絵本や児童書も見て、これイメ...
呼ばれてやってまいりました 笑
宮沢賢治は文庫本でも読みましたが、絵本や児童書も見て、これイメージに合う!とか、これちょっと違うなあとか色々探してます。
そうか、「詩」ではなくて「心象スケッチ」なのですね。心象スケッチも読まなければだなあ。
ミキハウス絵本
https://www.mikihouse.co.jp/pages/pickup-miyazawakenji
岩崎書店 宮沢賢治のおはなしシリーズ
これも良いです。
https://www.ehonnavi.net/sp/sp_special.asp?n=234
呼んだの聞こえてしまいました?^_^
一昨日、賢治の詩集を片手に 淳水堂さんの宮沢賢治の絵本のレビュー読んだんですよ。...
呼んだの聞こえてしまいました?^_^
一昨日、賢治の詩集を片手に 淳水堂さんの宮沢賢治の絵本のレビュー読んだんですよ。
私が悪戦苦闘しているのに、なんか楽しそうだわ。
って、思っていたもんですから、ついつい。
情報ありがとうございます。ミキハウスの絵本が美しそうです。読んだことがない作品も多いので、是非読んでみます。
宮沢賢治さんは、作品がわかるものと、さっぱり?なものが、あります。賢治は音読するとより一層良さがわかるということも理解しているのですが、音読が苦手なんですよね。音に出してしまうと、頭の中に残らないんですよ。もはや、能力の問題ですけど。