つぎはぎプラネット (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 83
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101098531

作品紹介・あらすじ

同人誌、PR誌に書かれて以来、書籍に収録されないままとなっていた知られざる名ショートショート。日本人 火星へ行けば 火星人・・・・・・「笑兎(ショート)」の雅号で作られた、奇想天外でシニカルなSF川柳・都々逸。子供のために書かれた、理系出身ならではのセンスが光る短編。入手困難な作品や書籍、文庫未収録の作品を集めた、ショートショートの神様のすべてが分かる、幻の作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 10年ぶりくらいに再読。

    未来を描く作品が多かったが、
    70年代に書かれたものが現代実現している
    ことの多いことに驚かされる。

    今で言うYouTubeであったり、
    リモート会議であったり、スマホであったりと、
    それに近いものの話が多々あり、
    著者が未来(現代)に与えた影響も
    少なからずあるだろうと思った。

    さすがですね。

  •  ヤナーチェクの評論において、ミラン・クンデラが、「作者のあとに残された一切のものを掻き集めるという情熱の形で表れる」「忠実さ」について、批判しているのを思い出す。例えば、《棍棒体操のための音楽》のような重要でないものを「ヤナーチェク・ピアノ曲全集」に収録する「忠実さ」である。
     クンデラはひとりの創作者として、創作者ヤナーチェクに同情している。しかし私は愚かな享受者である。ヤナーチェクの作曲したものなら、《棍棒体操のための音楽》でもありがたがって聴く。面白くないけれども。

     そして神様には忠実にならざるを得まい。相手は「ショートショートの神様」だ。ということでできたのが『よせあつめプラネット』、もとい、『つぎはぎプラネット』、単行本未収録作全集に近いもの、である。改作されて複数ヴァージョンあるものをすべて収録まではされていないから「近いもの」である。
     星新一のご息女とここに解説を書いている高井信らが、「あとに残された一切のものを掻き集める」作業をしたわけだが、その成り行きについて書かれた解説が苦労を偲ばせてなかなか面白い。まさに「情熱」。
     冒頭に収められているのは「SF川柳・都々逸 101句」。星新一はこういうナンセンスが好きだったらしいが、当時の世相を反映していて、解説なしではわけのわからないものもある。作品が古びないように、時事的なことは書かないようにして作品を作っていたという星新一にとって、こういうのを収録されるのは不本意だと思うが、それをまた冒頭に持ってくるあたりに、編者たちの確信犯的自覚を読み取ることもできるだろう。どのみちいくら「神様」でも死んでいたら文句は言えないのだ。クンデラはまさにそのままならなさを怒っているのだが。

     あとの作品は発表年代順に並べられている。1957年の同人誌『宇宙塵』収録作から始まるので、習作といえなくもないのだが、未熟な作品というわけでもない。アマノジャクなクイズが流行る話を新聞社への投書のみで描いた「ミラー・ボール」は、かなり長く、後の作風とはいささか異なるものの、アマノジャクにこだわるあたり、いかにも星新一らしくて面白かった。
     しかし、である、その後、少年誌への寄稿作品が結構な数、続く。これはちょっとなあ……
     そのうちエフ博士とかエヌ氏とかが出てきて、「二○○○年の優雅なお正月」。ボタンひとつで朝食が出てくるというのは冷凍食品のチン、テレビのチャンネルの数が50ほどもあって、だが、あまりおもしろいのはやってなかったとはなんたる慧眼。映画は4ミリフィルムになっていて、安く借りられる、欲しい商品があればテレビについているダイヤルで商品番号を回せばいい……、35年前の予測は結構実現されている。
     1965年のソニーのPR誌に掲載された「ビデオコーダ−がいっぱい」。これも「YouTubeと監視カメラがいっぱい」にかえたらだいたい予測どおりだ。いやいやSF作家の仕事は未来予測ではないなどと、かつてさかんにいわれたものだが。

     少年誌の収録作のほか、だいたい1970年初頭くらいまでの企業のPR誌用の「明るい未来」的な作品が多く、残念ながら全体的には《棍棒体操》といわざるを得ない。星新一未経験者は『ボッコちゃん』とか『エヌ氏の遊園地』とかから読むべきである。

  • 星新一のショート・ショート。
    本著は「星新一の単行本未掲載作品を集める」ことを目指したものであり、故に星新一が生前に請け負った広告やPRのための作品も多く収録されている。

    広告であるからにはその題材やテーマが縛られているということである。それは一見、自由度が狭まるように思えるが、題材が縛られているからこそ彼の独創的な発想や切り口がむしろ際立つ。「ここからこの広告につながるのか」という新鮮な驚きがあった。

    「デザイン思考」に関する本を読んでいると、完全に自由な条件よりも多少の制約があった方が良いものが生まれるということはよく言われることだが、これは実は簡単ではない。
    その点、星新一は題材をSFという舞台装置に手際良く落とし込むことができる。これは彼の卓越したスキルと、引き出しの多さが為せる技だと言えるだろう。ここから学ぶことは多い。

  • 企業にも文章寄せていたんだなあ、というのは新しい発見だった。
    あまのじゃくゲームの話が一番面白かった。

  •  星さんの未収録作品が読める! うかつにも本書を知らなかった。初版の時期は和田誠がご存命だから、カバーイラストを任せればよかったのにと思う。
     読む。星新一が作品集から外した理由が見えてくる。児童向けは食い足りないし、未来の快適な1日を描く同工異曲の話が4つほどあった気がする。
     しかし、作品の終りに掲載誌が明記されているのは興味深い。PR誌の依頼なのか、作者が合わせたのか、裏の事情が読み取れてくる。
     解説。作品採択にまつわる苦労ばなしは面白い。

  • 星新一氏の本は中学生くらいの頃夢中になっていた。大人になってから読んでみてもやっぱり好き。「つぎはぎプラネット」は入手困難な作品や未収録の作品を集めたもの。私が生まれる前に描かれた未来の人々の日常には今も心がときめきます。

  • 星新一の未収録作品、入手困難作品などが収められ、デパートの広告や、企業の広報誌に載った作品も含まれます。子ども向けのお話も多数ありますが、子ども向けと言っても、切れ味の良さは変わりません。個人的には、「知恵の実」と「魅力的な噴霧器」が面白かったです。収集にあたっての苦労話も解説に書かれており、読み応えのある作品集だと思います。

  • 星新一氏の単行本未収録作品を集めた本。
    最初、星氏が単行本に入れなかった物を読んでもいいのかと戸惑いましたが、誘惑に負けて購入。だって、星さん好きですもの(笑)ですが、読み始めのころはイマイチ。文体も知っている星さんのものとは違う気がしたし、作品の統一感もなかったしで、なんとなくがっかりしましたが、良く考えたら、あちこちのPR誌等で書いたものを集めた、「つぎはぎ」なので仕方ないかと。
    しかも、中盤に差し掛かってくると、違和感の中にも星さんらしい表現がたくさん。もう何もいいますまい(笑)やはり読んで良かったです、

  • 様々なテーマによるショートショートが集まっていて、それぞれの短編が掲載された最終的な目的やテーマを知ったとき、思わず唸ってしまうようなスパイスがあったり、心がほっこりするようなものもあり、マイペースに楽しく読んだ。SF川柳・都々逸も、後から本人のツッコミがありおもしろかった。

  • 題名の通り、星さんが亡くなられてから大ファンの編集者の方々によって作品たちが「つぎはぎ」された作品集。何となく似たような作品を別で読んだことがあるようなものもあったり、雑誌に掲載されたりの歴はあっても、書籍化するまで洗練されていないのかな?と感じられるところがある。
    その代わり色々なジャンルを読むことができる。
    未来の生活を描いたものでは少し形は違っても実現している?というものもあればまだまだ夢物語のものもあるが、星さんにとっての理想の未来があったのかなと思うほど世界観に統一性を感じられた。

  • これは単行本未収録集らしい!
    やはりとても面白かった〜
    するするって読めてしまう
    やや似ているような作品があったけど、やっぱり発想が面白い
    2000年って出てくる作品があって、実現していることもあったけど、まだそこまで科学が発展してないところもあった。
    星さんやドラえもんのような世界が実現したら本当に面白いんだろうなぁとどこかで思ってしまう


    ミラー・ボール
    書簡で書かれてて、面白かった!
    『恋文の技術』や、『桐島部活やめるってよ』的な新しい感じを受けた

    狐の嫁入り
    その発想は無かった!本当にショートショートだけど面白い

    ビデオコーダーがいっぱい
    どんどん犯人に近づいていくのが面白い!

  • 中学生の頃一時期星新一さんの本には会ったことを思い出した!なんとも言えない星ワールドその名前のようにSF満載の日本ファンタジーの世界

  • 星新一の、正式に書籍としてまとめられることのなかった短編を頑張ってかき集めたもの。

    久々に星新一の本を読んでみようと手に取ってみたらこれだったので少し驚いたがこれはこれで楽しかった。

    小学生向けの雑誌に掲載されていた短編も多くあり、学習事項と絡めて話を組み立てているのが面白かった。

    まだ他の星新一をほとんど読んだことがなかったので他のものも読んでみたくなった。

  • 星新一作品を散々読みあさったオールドファン向け、かな。

    小冊子やらなんやらかんやら、いろんな媒体に作品を発表しておられたのですね。発表先の客層(?)に応じて、オチのつけ方や毒の量も変幻自在。

    昔は企業PR誌がたくさんあったのだなぁ。

  • 企業案件の作品たくさん読めてとっても満足。
    宣伝としても読み物としても、星新一の作風がとても好き。

  • 驚きもあり、笑いあり、星新一が一番わかるショートショート就活

  • 神様

  • 星新一のやわらかい文章が好き。

    クスッと笑える短編がたくさんあり、短いものだと1ページに満たず。

    私たちが生きている“今”はこの世界のたった一瞬なんだよなぁ。
    便利になっていく一方で、変わらない部分もあったりとなんだか人って愛くるしいよなって感じ。

    また星新一の本を読みたいと思う。

  • 星先生は賢くてダークな方ですよね。
    ミラーボールがおもしろかったです。

  • 星新一作品の中でも微妙

  • 「上品な応対」がシニカルでいい。

  • 星新一さん没後に、それまで書籍にならなかった話を集めて発行されたものだそうで。
    面白い話もありましたがいまいち夢中になれない物も多かったので半分ほど読んでやめてしまいました。

  • 星新一没後の新刊!
    ファンは垂涎ものですが、単行本未収録の理由はやはり物足りない作品な訳でして、星新一ファン以外はオススメしません。

  • 随分前衛的な作風だなと思いながら読んでたら1960年代の作品と知りびっくり。
    星新一作品は初めてだけど独特過ぎる世界観にハマる読者が多いのも納得。
    ショートショートだから当たり前と言えば当たり前だけど短い時間に頭の中に大量の物語が展開しすぎてちょっと混乱。
    1日1〜2話づつちょっづつ読むと良いかも知れない。

  • 1億人の大質問!?笑ってコラえて!で紹介
    文庫未収録の作品を集めた、ショートショートの神様のすべてが分かる、幻の作品集。

  • 星新一のいいところが、いっぱいに詰まっている作品。特に「タイム・マシン」は奥が深いと思いました。

  • SF

  • 未公開作品と有難がって発行したが、公開しなかった理由が明確にわかります。

  • 最近手塚治虫を読むせいか、どこか未来への想像力が薄い感じがしてしまう。でも、2000年にはこうなってたらいいなという夢を読むのは楽しい。

  • いろいろなお話があり、いろいろな内容があって、面白かったです。

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著者プロフィール

1926 - 1997。SF作家。生涯にわたり膨大な量の質の高い掌編小説を書き続けたことから「ショートショートの神様」とも称された。日本SFの草創期から執筆活動を行っており、日本SF作家クラブの初代会長を務めた。1968年に『妄想銀行』で日本推理作家協会賞を受賞。また、1998年には日本SF大賞特別賞を受賞している。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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