- Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101104409
感想・レビュー・書評
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全5巻通してのレビュー
昭和初期から敗戦までの期間は苦手であるし、小説を読むのも躊躇っていた。
第二次世界大戦に突入せざるを得なかった経緯も、戦時中の「大本営発表」も、その言葉を聞くだけで嫌悪感でいっぱいになるほどだ。
適切な表現が思い浮かばないが、
シベリア抑留中のまさに物理的な「不毛地帯」で過酷な運命にも関わらず生き延び、そして、近畿商事に入社後の精神的な「不毛地帯」にありながら、主人公の壱岐さんが、どれほどの重荷を背負っていたか…想像を絶するものがある。
シベリア抑留中の苦悩や肉体的・精神的なダメージはもちろんですが、帰還後の商社での活躍における裏の部分での苦悩や精神的ダメージは計り知れない。
どうしてここまで、頑張ることができたのか…
主人公の大きな支えは朔風会の谷川さんをはじめ、シベリアで共に苦労をした仲間との絆であり、近畿商事内部における、信頼できる人間関係と組織。
文字通り四苦八苦しながら、清濁合わせ飲み、戦中・戦後を生き抜いた壱岐正という人物から伺えるのは、筋の通った人間だからこその生き方でもある。
それが一番顕著に伺えるのは、自分の辞表と引き換えに、大門社長へ社長退任→相談役への就任にとりつけながら、自分もひっそりと表舞台から消えていくところだろうか…
色々な方々の犠牲の上に成り立った結果ではありますが、ワンマン経営体質の会社から、組織経営の会社に変貌させた壱岐さんの力量に脱帽である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シベリア抑留された元軍人が戦後日本で商社マンとして活躍するという触れ込み。ただ、1巻は入社するまでの回想でほぼ終了。シベリア抑留についての壮絶な描写が心に残る。特に、収容所で形成されていった、新左翼じみた自治組織が非常に怖かった。そしてそのような状況の中でも、信念を保って帰国の日まで耐え忍び続ける人々の姿には胸打たれるものがある。戦後中国大陸にいた人々の苦悩と奮闘は語られることが少ないが、これらはもっと知られるべきだと切に思う。
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ブクログに登録するため読み返し。
この第1巻の中心は主人公である壹岐正のシベリア抑留時代であり、シベリア抑留の悲惨さがリアルに伝わってくるため、本巻はあまりじっくりとは読みたくない。しかし商社に転じてからの壹岐正の生き方へ影響する大切な話である。
この第1巻ではまだ近畿商事へ再就職したばかりなので、この巻での壹岐ははっきり言ってダメサラリーマンである。だがそうした壹岐の能力を見抜いてスカウトした大門一三の眼力の鋭さと商社マンとしての非凡さが読み取れる。 -
2019.8.29 読了
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2018/12/27
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・シベリア抑留のことについて書かれた、初めて読んだ本。参考文献、人にしっかり当たっており、その過酷さが現実のものであったことが実感されて、恐ろしいほどであった。
→ミッドナイト・エクスプレスの過酷さが霞むほどであった。
・商社→戦場のようなもの
→飲み会を差し引いても、心身を酷使するのは間違いなさそう。 -
大本営のエリートが、ビジネスでものし上がっていくお話し。こうゆう人もいたんだろうなと思わせる作品。テレビ版は、故原田芳雄の恰幅のある演技と、岸部一徳のゴマスリ演技が秀逸でした。
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2016
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シベリア抑留の過酷な様子が伝わってきた。
1945年に戦争は、終わったけど、ずっと苦しみ続けていた人たちがいたことを知った。
壱岐正が、第二の人生を商社マンとして、一から歩もうとする真摯な姿を見て、
自分も、自分の仕事や人生と真っ直ぐに向き合っていきたい。と思った。 -
元大本営参謀の壹岐正と、近畿商事社長の大門一三の出会い。11年にも渡る地獄のようなシベリア抑留生活。そして日本帰還後新たに始まった商社マンとしての第二の人生。600ページを超す内容だが、無駄のない上品な文章が読み手を惹きつけて離さない。