或る「小倉日記」伝 傑作短編集1 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109022

感想・レビュー・書評

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  • これは素晴らしい短編集。特に「石の骨」でふみ子が残す「うれしいわ」という一言に至る流れは涙なしには読めない。どの作品を見ても、読み終わってからも着々と心に根付き、消えていかない。

  • 実話を元にした作品もあるとのこと。境遇に翻弄され、脱却できない人たち。「砂の器」の描く「宿命」にも通じるように感じる著者の作風。11.1.25

  • この短編集に入っている「或る『小倉日記』伝」「菊枕」「石の骨」「断碑」の4編は、いずれもモデルが存在する実話です。人は誰でも弱点やコンプレックスを持っています。しかし、そこから生まれる怒りや恨みを放っておくと、猛獣のように荒れ狂って、結局、自分自身が滅ぼされてしまいます。そのことに気がついた松本清張は、4編の主人公に自分を重ねながらも、人間が落ち入りやすい悲劇を見事に描いています。就活に、そして人生に、必読の1冊です。

    (九州大学 大学院生)

  • 図書館でひょっと手にとった松本清張文庫。或る「小倉日記」伝。松本清張はこの作品で芥川賞を受賞し文壇に登場した。主に推理小説を数冊読んだ程度。「砂の器」が映画化された折、映像の美しさと内容に深さに号泣したことがある。忌み嫌われた業病ゆえ、ふるさとを追われるように放浪の旅に出た親子の姿に、同じくふるさとを離れ母と暮らした心もとない歳月が重ね合わさったのだろう。四季にわたる流離の旅が美しい映像で表現されていた。

    国鉄蒲田操車場で二人を結びつける老人の死体が発見されるところから物語は幕を開ける。
    戦後の高度成長期の最中、息子の邪魔になってはいけないと四国の隔離所でひっそりと沈黙を守って生きる父がいた。いまわしい過去から逃げるため戸籍をねつ造し別人となって生きる息子がいた。四国の隔離病棟に住む父親と大都会で華々しい出世途上にある息子。音楽家として栄光の頂点に至る途上に現れた一人の老人が彼と父親を再び巡り会わせることになる。それは、この世では二度と再び出会うことのない邂逅だった。次第に明らかになってゆく人間模様。なぜ、老人は殺されねばならなかったか、なぜ父は息子に会おうとしなかったのか、息子は一度として父に会おうとは思わなかったのだろうか。松本清張の作品に底には人の世の悲しみの河が深く静かに流れているように思える。今年来年にかけて全作品を読んでもいいかなと、そう思った。無意識に手にした一冊の本が世界を広げてくれる、そういうことだってあるだろうさ。

  • 収められているのは12編。

    その多くの作品に共通するのは、非凡な才能を持ちながら世間から正統な評価を受けられない人を描いている点である。

    評価されないのは生まれ、貧乏、学歴、身障の故である。

    貧乏な家に生まれて、高等小学校卒業後すぐ働きに出て、苦労しながら小説を書いた氏の境遇が色濃く反映されていると思える。

    その思いは相当深く鬱積しており、屈折しているようにも見える。

    怨念といってもよいだろう。この劣等感にも似た想いの深さが氏をして原稿用紙に向かわしめたのか。

  • 2009年12月31日(木)、読了。

  • 偶然(小さな事)が人生を大きく変える。

  • 松本清張の芥川賞受賞作品を収めた短編集。

    どれもこれも過剰な人ばっかりである。

  • さすがです。お勧め。

  • 松本清張の本って、どこか冷たさというか、ひんやり感があって、最後まで気が抜けない。
    短編集だから読みやすかった。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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