冬の鷹 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117058

感想・レビュー・書評

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  • 前野良沢くらいなあ。でも、なにjかひかれるものがある。

  • 駿台時代にこの本のことを知って、読みたくなってから3年越しくらいだ。前野良沢を主人公とした、『解体新書』にまつわる物語。辞書もないのに、どうやって立ち向かっていったのか、それに打ち込む情熱はどこから来たのか。その辺の試行錯誤とかが知りたくて、吉村昭なら書いてくれるだろうと期待してた。読んでみると意外な感じだ。ただ単にどうやって解体新書ができたかを書いていくだけでは、たぶん単調な話になってしまうのだろうが、色々と盛りこんであって、単に苦労話だけでなくそれぞれの生き方も丁寧に描いてあって、良い意味で期待を裏切ってくれた。『解体新書』が成るまでの話も面白いが、この本で秀逸なのは後半、良沢と玄白の交流がなくなってからだと思う。ひとまず「ターヘルアナトミア」の翻訳ができあがったとき、玄白は医学の発展のために出版しようとするが、学究肌の良沢は翻訳の不完全さを理由に訳者に名を連ねるのを拒む。こうして『解体新書』には中心人物である良沢の名前は載らず、玄白の名声ばかり高まる。良沢と玄白という対照的な2種類の人間のその後の人生が、後半に描かれている。多少の功名心をのぞかせる玄白はさらに目立ちたがりの平賀源内とも似ているが、源内が悲惨な最期を遂げるのに対し、玄白は幸福な晩年を送る。良沢は高山彦九郎との交流が描かれ、最後までオランダ語研究に情熱を注ぐが、晩年は孤独。さあどの生き方が僕にはあっているだろう。良沢の探究心には憧れるが、その成果を世に出さないのはあまり感心できない。学問は独りでやるもんじゃないと思うから、ファラディーが"Work, finish, publish."と言ったように、世に問うてみなければだめなんじゃないか。一方で源内みたいな生き方は僕も嫌いだし、彦九郎のような行動力はないし。玄白みたいな感じか? 玄白のような、集団をまとめる才覚みたいなのは絶対にないと思うけどね。とりあえずこれは座右の書にするかな。解説は上田三四二!

  • 半年ほど本屋さんで探し中。そろそろ注文します。

  • 解体新書を翻訳したのが誰か知ってる程度の知識だったので
    非常に興味深かった。同じ事業にかかわりながら、それをきっかけに
    人生が真っ二つに分かれていき、対称的な晩年を送った二人。
    どうしてそうなってしまったのだろう?
    人生を考えさせられる一冊。

  •  「解体新書」といえば杉田玄白。学校の歴史では確かそう習った。実際、出版したのは杉田玄白だ。しかし、オランダ語の原書を翻訳したのは前野良沢だった。前野良沢という名はなんとなく聞いたことがあったが、彼が何をした人物なのは全くといっていいほど知らなかった。
     この2人の人生の岐路となったのが「解体新書」の出版だったのだ。同時に、それは2人の能力というより性格、さらに言えば生き様の違いを浮き彫りにした。
     いかに生きるべきか、人生に何を求めるのか。江戸時代の2人の「医者」の物語を通じて深く考えさせられる。

  • 前野良沢と杉田玄白。このような関係と人生だったのか、と初めて知った。二人の人物の価値観の違いが読ませる。

  • 前野良沢に感情移入。

  • ★★★
    今月1冊目
    解体新書を出した、杉田玄白と前野良沢の本。
    世の中では杉田玄白がという感じだが実際は前野良沢が翻訳。杉田玄白は弟子。
    が、人生の明暗を分けたのは考え方。
    おもろかった

  • 「解体新書」の訳者前野良沢が主人公。
    困難に向かい、医学の進歩に貢献する翻訳の大事業を成し遂げたが、名声を得たのは杉田玄白。
    両者の人物が対照され、前野良沢にスポットをあてたところがところが著者らしく渋い作品だと思いました。

  • 20201029

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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