破船 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117188

感想・レビュー・書評

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  • 信仰とは、外部の人間から見たら、根拠がなく滑稽にも見えるものかもしれないけれど、本人たちにとって祈りは希望なんだよね。

  • ノンフィクションのようなリアリティがあって怖い。貧しいムラのやるせない怖さが淡々と書かれている。でも最後のシーンに余韻があって読後の満足度は高い。

  • 何気なく食事しているが感謝の気持ちを忘れずにいただくことを思い出させてくれた。それから、一生懸命働こうと思った。

  • 2022/6/20読了。
    民俗学的関心を刺激する。前時代の閉塞的な漁村の中の常識と雰囲気が硬質な文体で有り有りと描き出されている。

  • 豊かな現代との違いに戸惑う一冊。こんなに過酷な生活なんだから、お船様に対する犯罪なんて、大したことじゃないような気もしてくる。なす術もなく運命に翻弄される不幸。

  • 最後の最後で畳み掛けてくる残酷な展開に、泣いてしまいました。
    村ぐるみの犯罪の代償とはいえ、あまりにもむごくて涙が…。

    作品の舞台となった村は、閉鎖的ですごく貧しくて。
    今日の食べ物にも困るくらい貧しくて、慢性的な貧しさが続いてきた村の生きる術が「お船様」だったのだろうと思う。
    許されるようなことではないけれど。

    ずーっと暗くてずーっと不穏で、明るい場面も刹那的に感じられてなんだか悲しかった。
    すごい本でした。

  • 生きるために罪を犯すことと、それに対する因果応報の話。
    主人公が幼い少年なので、成長につれ読者と一緒に貧しい漁村の恐るべきしきたりを知ってゆく。夜にわざわざ塩を焼く仕事があること、それが近くを通った船を誘って破船させ、積荷を奪うためのものであること。この漁村にはわざわざ縁起を担いで船の転覆を祈願する儀式(妊婦がお膳を足でひっくり返すというもの)まであった。

    このあたり、どういう心持ちで読めばいいのか、多少困惑させられる。年単位の出稼ぎや身売りが少なくないほど貧しい村で、生きるためには仕方がないという気持ちと、船をうまく誘えずがっかりする村の様子に鼻白む気持ちと。これは暦とした村ぐるみの犯罪であるが、その善悪の価値観すらゆらぐ気がする。

    そして、最後はこの生業が招いた恐ろしい災厄。主人公にとって悲劇的な結末となるが、遠からずそうなるべきだった、という妙な腑に落ち感がある。母親が終盤妙にいきいきとしていたのになぜか共感した。苦界を生きることからの解放、ということもあるのではないか。

  • 2022年本屋大賞発掘本

    ところで『破船』あっちゅー間に読了
    195ページくらいからの恐ろしさは筆舌に尽くしがたいが、お船様による疫病は今作において一つのヤマではあるがメインではないと感じた
    そして相当稀だろうが私ラストぼろぼろ泣いてしまったよ。なんかもう感情のやり場がなく。9歳ですよ、伊作は。あと母の強さ。
    9歳と書いたけど、それはスタート時点の話で、最後に伊作は11歳になってます。めぐりゆく四季と、過酷な労働。年端もいかぬ子が、一家の大黒柱として働かざるや得ない村の状況。私は村から出たいの!とか、学校に行きたいとか、言い出す子なんかいるわけない。だって知らないんだもの、他の生活を。
    コミュニティとしてのありようと、それをそのまま受け入れ、粛々と暮らす人々の姿がすごかったです。言い方がとても悪いだろうけど、アリの巣のような、独自で厳格なルールと統制を感じました。すさまじい不測の事態に対する、恒常性のすさまじさ。すさまじさVSすさまじさ。

    本屋大賞授賞式のスピーチが本当に素晴らしかったです。
    おめでとうごございます!

  • とても淡々と語られるのに、背中が薄ら寒くなるような感覚を覚えた。お船様にしろ、村の行く末にしろ。村が閉ざされているからこそできたこと、閉ざされているからこそ招いてしまったことに、胸がふさぐ気持ち。

  • 913-Y
    文庫

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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