破船 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 166
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117188

感想・レビュー・書評

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  • なんかもうずっとつらいのよ。大自然のペースに合わせてしがみつくような生き方とか、村ぐるみで犯罪を隠したりしてるとか。お船様で一時は生き延びられるかもしれないけど、それが永遠ではないってわかってるところとか。
    それでも好きな娘との淡い交流とか、漁の腕前が上がったとか、友人との関係が穏やかなものになっていったりとか、きらめく瞬間がある、あったのにさぁ~~…

  • 物語はフィクションであろうが、舞台にとっている設定は必ずしもフィクションとも言い切れないのかも。
    貧しい漁村が生きるために、冬の荒れた海を航行する船に向かって火を灯し灯台と勘違いさせて座礁させその積荷を奪ったという苛酷な生きる知恵とその悪行に対する大きな報い。

  • 2024.2.25読了

  • なんだろうな...海の恵みの描写とか四季の移り変わりの描写とかうつくしい風景目白押しのはずなのに人々の暮らし描写の陰鬱さがそれに並ぶ不思議。村から出たいとも思わず村長を中心に一致団結することで暮らしが成り立つ不思議。地方の因習ネタのホラーとか好きなんだけど現実に即するとなるとこうなるのか...

  • 引き込まれた‼️
    淡々と静かな作品‼️

  • 一人前の漁師/大人になるという自覚が芽生え始めた少年が主人公。出稼ぎ(身売り)により父が不在の三年間を描く物語。

    読み進めて早い段階から、自然現象に左右される寒村という共同体の、心細さと危うさが重くのしかかり息苦しさが続く。それでも、主人公が徐々に成長して生活は安定に向かうのかと思った矢先、ついにお舟様が到来し、寒村の日常は狂い始め、あまりにも悲劇的で無情な幕引きへ。

    村人の自死シーンでサラッとギョッとすることが書いてあったり、村人達の犯す大罪がテキパキ機械的に進んだり、文体/描写はかなり淡々としていて、だからこそ抵抗できない暴力の怖さ不穏さを強く感じた。一方で、クライマックスの母の健気な強さには胸を貫くような切なさがあり、あわや落涙するところだった。
    230ページとは思えないくらいズシンと重厚/濃厚な一冊。

  •  本作は少年の視点から綴られる僻地の寒村の3年間の物語だ。大人が年季奉公で廻船問屋に売られ、未成熟な子どもが一家の労働力として漁をせざるを得ない貧困。村に大きな幸を齎す“お船様”(難破船)を求めて祈り、実際に到来したなら情け容赦無く積荷を奪い取る共同体全員での犯罪。その“お船様”によって富ではなく疫病を齎され、村があっという間に崩壊寸前にまで追い込まれる厄災。これら苛酷で不幸な日々が無駄を削ぎ落とした簡明な文章によって描写され、読者に強烈なリアリティーを与えてくる。

  • 会社の先輩からお借りした一冊。

    この作者の本は、漂流から2冊目かな?
    漂流もこの先輩からお借りした本だった。

    漂流もリアリティ溢れ、臨場感が半端ない小説だったが、この本も凄い!
    目の前に情景が現れる。自分がその村に迷い込んだような錯覚を起こす。

    すっごい惹きつけられる小説なのだが、常に恐怖感が付き纏っていた。

    何処か不気味で、何かに怯えながら読んでいた気がする。何に怯えていたのかは、読み終わった今も謎だけど(^◇^;)



    北の海に面した、貧しい村が舞台となる。
    痩せた土地には雑穀しか育てたない為、村民は鰯やイカ、タコ、秋刀魚などを採り、隣村まで売りに行き、穀物と交換してギリギリの生活を送っていた。
    いや、ギリギリ以下の生活だったのだ。

    そんな村だが、冬の海が荒れ狂う頃、貨物を乗せた船が座礁し、荷を村民で分かち合うことができた。
    それはお船様と呼ばれ、村民はわざと天候の荒れる日に塩を作るために火を起こし、船を村の方へ誘い込むのだった。

    そんな村にある日災が起こる。。。

  •  「破船」は2022年の本屋大賞の「超発掘本!」選ばれた本でもあります。本屋大賞の「超発掘本!」とは、ジャンルや刊行年を問わず今読み返しても面白い本が選出されるものです。
     日本海沿岸の閉鎖的な貧しい寒村。土壌が痩せて作物もうまく育たず、魚介類もその場しのぎ程度の漁が精一杯の土地。村人たちは近海を通る貨物船の船荷をあてに座礁を祈る。
     生きることがこんなに苛酷だとは...。ちょっと気分が暗くなってしまいますが、海外でも広く評価され、多くの国の言語に翻訳された作品でもあります。

  • 既に記憶も定かでないが、ひと月ほど前、
    どこかで絶賛レビューを読み、興味を持ったので購入、
    読了。
    しかし……
    そのレビューを最後まで読まなければよかったと後悔。
    何だかよくわからない状態で本編を読み進めた方が
    終盤の衝撃が大きかったのでは……と。
    そう、つまり、当該レビューは
    ガッツリとネタバレしてくれていたのです……(怖)。
    もっとも、購入時点で帯の煽り文句を読んだら、
    ネタバレレビューに接しなかった人でも
    オチには見当がつくはずで……。

    作者の名前はぼんやり見知っていた程度。
    で、(未読だけど)
    かの有名な『羆嵐(くまあらし)』の作家か、
    そうだったのかと今回初めて認識(←ぼんやりしすぎ)。

    さて。

    藩という語が出てくるので、設定は江戸時代と思われる。
    九歳の少年・伊作(いさく)の目に映る、
    生まれ育った海辺の寒村。
    三人称一視点で淡々と進行する、さして長くない物語は、
    容赦なく貧しい村の厳しい状況を活写する。
    飢えから家族を守るため、性別問わず若くて体力のある者は
    年季奉公という名の身売りで村を離れていく。
    伊作の父も三年契約で峠を越えた。
    父が報酬を得て達者で帰るまで、
    伊作は母と共に幼い弟妹を守らねばならなかった。
    伊作は漁に出、
    民(たみ)という名の少女に仄かな恋心を抱き、
    製塩にも携わり、弟・磯吉に漁の手ほどきをし……
    やがて、行事を通して村落の秘密に接する――。

    終盤の大惨事は、村民一同が長年に渡って積み重ねた
    罪業に対する罰のようにも受け取れる。

    もう少し詳しいことを
    後でブログに書くかもしれません。
    https://fukagawa-natsumi.hatenablog.com/

    • さすらいのもちぶたさん
      このレビューを読んでいたので、前知識なく、本裏表紙のあらすじも読むことなく、全くの前知識なしで読めた…!ありがとうございます。あらすじも、し...
      このレビューを読んでいたので、前知識なく、本裏表紙のあらすじも読むことなく、全くの前知識なしで読めた…!ありがとうございます。あらすじも、しっかり読後に読んだほうがいいですね。
      2023/10/28
    • 深川夏眠さん
      いらっしゃいませ、フォロー・♥・コメントありがとうございます。
      ある程度の情報がなければ興味を引かれることもないわけですが、
      あまり詳し...
      いらっしゃいませ、フォロー・♥・コメントありがとうございます。
      ある程度の情報がなければ興味を引かれることもないわけですが、
      あまり詳しく教えてくれるのも考えものだなぁ……
      と思うことが多々あります(苦笑)。
      難しいですよね。
      2023/10/28
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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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