R62号の発明・鉛の卵 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121093

感想・レビュー・書評

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  • 「棒」とか「耳」とか好き。表題作はナンセンスすぎて分からん。

  • 「君は安部公房という小説家を知っているかい?」
    「名前は聞いたことがあるな」

  • R62号の最後の衝撃。脳の回路、生産性、重役。頭取は何に感動していたのか?
    戦後の労働や生活環境といった時代を感じる。そしてその奥に隠された寓話や教訓。設定も落ちもユニークで、読み進めてしまう。

    「パニック」パニック商事。Kの痕跡。三日間の放浪。
    「犬」人間くさい犬。「妻の顔」妻と犬のいれかわり?
    「変形の記録」一番教訓や話の落とし所がつかみにくかった話。戦争のすなぼこり?
    「死んだ娘が歌った……」掃除の授業、お弁当詰めの授業、心のイワシ、朝まで遊ぶ娘。工女の哀れさ。
    「盲腸」羊の盲腸。
    「人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち」
    「鍵」盲目の娘と疑い深い親父。
    「鏡と呼子」田舎小学校ながくて良く分からなかった
    「鉛の卵」800万年後の人類。

  • 小学校の高学年くらいに「棒になった男」や「他人の顔」が紹介されていたのを読んで興味を惹かれて手に取った一冊。
    ファンタジーやSFか、カフカのような不条理モノか、乾いていながら、新宿ゴールデン街的な雑さと人間の粘度ある文体からにじみ出る別世界、でもそれは非常に身近で、そんな世界の話に引き込まれた。

    ご本人も亡くなり、あまり話題にのぼるという事も無い気がする作家だが、新潮文庫に変わらずあるのが嬉しく、また懐かしく、最近読んだスタージョンあたりに刺激されて久々に手に取ってみた。

    又吉くんオススメの帯がついていたが、これをきっかけに読者が増える事を期待する。

    また、ラジオドラマ「R65の発明」はYouTubeにあげられているが、非常に良く出来た脚本、演出、俳優さんで、良い意味で?ゾッとする。

  • タイトルから得る印象と得られるものの仮説(問題提起/仮説)
    気に入った文の書き抜き(具体的事実)
    感想(自身の受けた印象とそれから為る主張)
    仮説とのすり合わせ(検証とまとめ)
    おすすめポイント、おすすめしたい人
    ネクストアクション

  • アヴァンギャルド。

    もはや死語であったはずの前衛がこの2020年に再読して生き生きとしてしまう。

    「天は人の上に人を作らず」

    ある種の人たちは自らの事を選ばれた人間だと思ってはいないだろうか。

    実際には誰もが誰かを選んでいるだろうし、同時に誰も誰かを選んでなどいない。

    無知のヴェールという概念がある。生まれる以前に人間は平等だが生まれた直後に不平等となる。

    生まれた国、地域、親を選ぶことはできず、ヴェールを被された状態である。

    だからこそ、明るみに出た瞬間に、恵まれた存在は公共性を保持するために努めなければならない。

    無知のヴェールについて、日本人はあまりにも知らなすぎ、考えが浅はかすぎるのではないか。

    この短編集を通してそんなことを考えてしまう。

    貧困、搾取、復讐。

    こんな時代は去ったと言えるのだろうか。

    「死んだ娘が歌った・・・」
    からは自由意志のもとに搾取され続ける貧困農民が描かれる。

    P.138『「働きながら貯金ができ、働きながら勉強できてありがとうございます」と大きな声で言い、それに続いて、みんなも同じことを声をそろえて言いました。」』

    グロテスクで悪趣味だ。

    しかし、これと同じことを技能実習生なる制度のもとで行なっている。

    ある学校教育でもこのレトリックが美徳であると教育している。

    我々日本人の本質的なグロテスクさはいっこうに変わることなく生き続けてしまっているのではないか。

    自己責任論が好きな新自由主義とは、昭和ではないのか、すなわち、近代への退行でしかないのではないか。

    「人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち」
    立場(階級)の差異が人の共感性を阻害してしまう。さらには高度に組織化されていればいるほど痛みや苦しみを感じ得ないようにされている。

    これは単なる幻想に過ぎないのだろうか。

    プレモダンな世界。

    猜疑心、同調圧力、搾取、無関心。

    これらは決して過ぎ去ったものではなく、この現在も継続・保続されているように思えてならない。

    安部公房というアヴァンギャルドがリンボ界へ忘れ去られる時を迎えることはできるのだろうか。

  • 中学生の頃砂の女を読んでから触れてこなかった安部公房。
    もう一度読みたくて手に取った。
    変形の記憶と鉛の卵が好き。
    物とか動物を人間と同列に語るのは好きだな。

  • うーん難しい。
    短編だけに速く読めはするけど、世界観に入れないまま終わってしまうものも…
    解説は腑に落ちた。

  • これも面白かった。

    特に好きなのは、
    『R62号の発明』と『人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち』。

  • 超現実主義派と称されるにふさわしい作品
    ひとつひとつの短編を読むごとにすっきりするようなものではないが、作者の言いたいことを考えさせるものが多かった。
    R62号、鉛の卵あたりは個人的にスタンリーキューブリックに映画化してもらいたいと思った。

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著者プロフィール

安部公房
大正十三(一九二四)年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天(現在の藩陽)で過ごす。昭和二十三(一九四八)年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五(一九九三)年没。

「2019年 『内なる辺境/都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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