独創は闘いにあり (新潮文庫 に 12-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101124216

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  • 著者の西澤博士がどんな方かは、このインタヴューをどうぞ。
    <a href=http://www.innovative.jp/2004/0611.html>社会に役立ってこその科学技術 - イノベーティブワン</a>

    本書には、「独創」と、それを取り巻く周辺の状況が描かれています。<blockquote>半導体素子や光通信の分野で数多くの世界的発明を成し遂げた著者</blockquote>その道程は、あまりにも理不尽で情けない「日本の文化」の壁に邪魔された道程でした。
    常々思っていたとおり、この国の「文化意識」はきわめて低いです。
    その「低さ」が、具体的な例として、本書には山ほど記載されています。
    そして、その情けない国を見捨てず、そこを変えようと奮闘したのが、西澤博士です。
    凄まじい逆境の中で、世界に誇る技術の数々を産み出された。
    その事実を目の当たりにすると、この国は何なんだと本当に情けなくなります。

    新しいものとは、必然的に、理解者が居ないと云うことに繋がります。
    世界で、「それ」を知っているのは、「それ」を創りあげた本人だけなのです。
    しかし、「それ」の本質が分からなくても、「それ」は分かる筈です。
    何故そうなるかの原理が分からなくても、その素晴らしさは理解出来なきゃおかしい。
    あくまでも客観的に、「価値」を見ることの出来る人が、エンジニアと呼ばれるべきです。
    同じ分野に居る以上、説明を聞き、質問をすれば、そのものの正当性は理解出来るはずです。
    理解出来ないとしたら、それは、理解出来ない人の能力が欠けていると云うことです。
    能力が劣る以上、その対象の判断なんて出来るはずがない。
    なのにも関わらず、「理解出来ない」という理由で、捨てられるものがあるという事実。
    これは、重大な損失であり、大罪だとすら云えることです。

    ようやく最近、「技術立国」という言葉に血が通ってきたような気がします。
    「産学連携」という言葉も、実感を伴ってきたように思います。
    けれど、欧米の諸国は、既に何年も前から、この仕組みを創りあげています。
    情報産業を見渡してみれば、その結果は一目瞭然です。

    今、何をするべきなのか。
    インドや中国の台頭を見て、驚愕している場合じゃないのです。
    というよりも、インドや中国を相手にしていては駄目なんです。
    日本が急成長しても、アメリカやヨーロッパ諸国は揺らぎませんでした。
    その理由を、考えるべきなのです。
    「資源」の意味と、その所在、その価値、そして、その使い方。
    日本の頭脳は、世界を相手に戦えるだけのポテンシャルは持っています。
    日本語という言葉の力は、英語ですらも遙かに上回ることが出来るのです。

    高度経済成長を経て、土台は築かれた。
    バブルの打撃からも立ち直りつつあり、資金もある。
    あとは、行動あるのみ。
    目先の5年ではなく、これからの50年を考えましょう。

  • 「ミスター半導体」と呼ばれ、その名声の高い西沢潤一氏の研究回想録である。その経歴はさぞ輝きに満ちたものと思いきや、若き頃は、学会において同業研究者からの厳しい攻撃にさらされるとともに、研究資金の獲得が極めて困難であったなど、決して順風満帆なものとは言えなかった。ごく限られた資金を有効活用すべく、実験設備は自作、その部品も三年がかりで少しずつ集めたというが、「そうした厳しい制約下におかれたからこそ、それを克服する過程で、氏の業績につながる様々な発見ができた、最初から研究環境に恵まれていたら、このようにはいかなかった」というのは、傾聴に値する。要するに、自身を取り巻く環境が不利なものであったとしても、捉え方次第であるとともに、それを理由に逃げてはダメだということだ。

  • 20年程前の本ですが、とても勉強になります。若い方に是非読んでほしい。お勧めです。

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