美しいアナベル・リイ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 136
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101126227

作品紹介・あらすじ

かつてチャイルド・ポルノ疑惑を招いて消えた映画企画があった。それから30年、小説家の私は、その仲間と美しき国際派女優に再会。そして、ポオの詩篇に息づく永遠の少女アナベル・リイへの憧れを、再度の映画制作に託そうと決意するのだが。破天荒な目論見へ突き進む「おかしな老人」たちを描く、不敵なる大江版「ロリータ」。

感想・レビュー・書評

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  • 初・大江作品。とても面白かった!読みながら「こういう小説を書く方なんだ...」と何度も思った。かなりエロティックな箇所、チャイルド・ポルノが絡んでくる部分があるので、そういう話が苦手だと読み進めるのが辛いかもしれないが、途中から続きが気になって仕方がないほど、面白かった。あちこちのレビューで、大江さんの作品の中では理解しやすい、と書かれてあったので、他作品を読むのは心の準備が必要そうだけど、こういう小説を書かれる方なら、初期作品から読んだ方がよいのでしょうね。

    ところで文庫版はタイトルが変わってしまっていて、何の差しさわりがあったのか、これでは情緒もへったくれもないし、文庫は借り本なので、勢い余って単行本を買ってしまった。このアナベル・リイが日夏耿之介訳だということが重要なのに。

  • ポーのアナベルリーを原文で読み終えた後で、再読。登場人物の鮮やかなキャラクター設定にため息は出たが、前半は時間の移動もあってやや退屈気味。中間部、サクラさんの体温が上がり始めてからはこちらも一気に読み終えた。人が年をとる、ということを考えさせられた。

  • 【本の内容】
    かつてチャイルド・ポルノ疑惑を招いて消えた映画企画があった。

    それから30年、小説家の私は、その仲間と美しき国際派女優に再会。

    そして、ポオの詩篇に息づく永遠の少女アナベル・リイへの憧れを、再度の映画制作に託そうと決意するのだが。

    破天荒な目論見へ突き進む「おかしな老人」たちを描く、不敵なる大江版「ロリータ」。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    長く小説を書いてきた作家である「私」、少女の頃「アナベル・リイ」という8ミリ映画に撮られ、今は国際派女優のサクラさん、新しい映画のプロデュースをする大学時代の同級生……幾重にも時間が重なり、四国の森で起きた一揆の記憶が読み返される。

    単行本からは改題された。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 一見したところは私小説風に書かれている。しかし、物語の核をなすヒロインのサクラさんは、その存在自体がどうやらフィクションのようなのだ。しかも、大江にとってはきわめて重要な「メイスケさん」や長男の光までをもメタフィクションに巻き込んでいく。大江文学の新しい表現の方法がここにあると見るべきなのだろうか。今すぐには、どう評価していいのか悩むところ。

  • クライストの小説「ミヒャエル・コールハースの運命」を映画化するという
    国際的なプロジェクトの一端に
    シナリオライターとして参加することになった語り手は
    「万延元年のフットボール」に書ききれなかった民衆蜂起のエネルギーを
    その映画で再現しようともくろむ
    しかし、企画は思わぬところで頓挫した
    集められた子役のフィルムと、それを撮影したカメラマンに
    児童ポルノ制作の疑いがかけられたのである

    主演女優のサクラ・オギ・マガーシャックなる人物は
    幼い頃、戦争で焼け出されてひとりぼっちだったところを
    アメリカ人将校に引き取られ
    後にはその将校との結婚に至ったという過去を持っている
    彼女自身は、そんな人生を幸福なものだったと考えているけれど
    しかし映画の中では、女性の自立を叫ばずにいられない
    そしてなぜか夜毎の悪夢にうなされている

    高校時代の語り手は
    かつて松山市の堀端にあったとされるアメリカ文化センターにおいて
    後に映画監督となり、義兄となる年長の友人とともに
    幼いサクラさんの出演するフィルムを見ていた
    ポーの「アナベル・リイ」を題材とした美しい映像であったが
    それにはおぞましい秘密が隠されていたのだった

  • 高高遊民が悩んだり動いたりしながら映画を上映すべきか右往左往する物語。背徳的な描写だけ楽しめた。飼育や万延元年と比べるとショッキングさがないなあ。個人的には「大江衰えたり」な印象。【D】

  • アナベル・リイの夏目訳が読みたくて気になる。”ろうたし”がきいてる。それから強烈な甘い思い出。追体験してみたくもなる。
    誰しも心の中に”アナベル・リイ”なり”ロリータ”なるファム・ファタールがいるものだろう。彼女はわすれられない思い出をまとって、甘い甘い魅力をふりまきながらふてぶてしくどうどうとしている。クライマックスの鮮烈さに思春期の圧倒的な影響力と、目の前という今の力の恐ろしさを感じた。すごく面白かった!

  • 一見私小説かと思われる基本設定(私=ノーベル賞受賞作家で作品名も実際のもの。家族など実在の登場人物多数)でありながら、巧妙にフィクションの人物とエピソードを織り交ぜて、最終的には幻想的ともいえるカタルシスを迎えます。日夏訳のポー詩集はかつて私も読みましたが、現代人には難解ながら、あの文章の美しさはやはり稀有なものですね。

  • 正直良くわかりませんでした…

  • 読み終わりました。
    
また以下内容でコメント更新予定。


    作者略歴&他作品:
大江健三郎
    本作品履歴:

    全体印象・キーワード:大人な雰囲気、勉強になる、これ本当に小説なの?

    オススメ読者:

    全体感想:
あくまで淡々とした展開と自然体な語り口である一方、頭の中を「これはゼロから作られたものなのか?」という疑問が拭い切れない。中々読んだことが無いぐらいの作り様に、寒気がしました。小説家としての力を目の当たりに出来る。

    部分感想:

    Amazonなどコメントへの感想:

    他類似作品:まだ思い付かない。

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著者プロフィール

大江健三郎(おおえけんざぶろう)
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。

「2019年 『大江健三郎全小説 第13巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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