恍惚の人 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.93
  • (155)
  • (214)
  • (172)
  • (7)
  • (2)
本棚登録 : 1670
感想 : 196
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101132181

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 人の死について、目を背けてしまいたくなるけれど背けさせずに向き合わせてくれる作品だと思う。

  • 恍惚の人

    著者:有吉佐和子
    発行:1982年5月25日
    新潮文庫
    初出:1972年6月単行本(新潮社)

    いうまでもなく、昭和時代の大ベストセラーにして、衝撃作。1月か2月ほど前、何を考えたのかこの本をブックオフで探して他の本と一緒に購入した。これをどうして読もうと思ったのか自分が分からないが、もしかして、先月、「作家の証言~四畳半襖の下張裁判」で有吉佐和子の証言を読んで何かを感じたのかもしれない。

    僕は、彼女はばりばり体制側の人間だと思っていた。80年代、「笑っていいとも」のテレホンショッキングに三木のり平が出演し、翌日のゲストとして有吉佐和子を紹介して電話をした時、彼女はタモリの服装を叱りつけた。三木のり平が何とかという国家系の芸術賞を受賞しているすごい人なのに、そんなレストランのボーイみたいな格好をして、失礼ですよ!と。タモリはその時、蝶ネクタイをしていた(ジャケットなし)。今ならとんでもない差別だと糾弾されかねない発言だった。

    でも、機会があって彼女の発言なんかを読んでいると、結構、体制批判的めいたことも言っているので、そうでもないのかとも思う。「作家の証言」では、言論の自由を阻害するような裁判を厳しく批判していた。

    この小説に関しては、もちろん読んだ記憶はないが、有名すぎるので話の内容は知っているし、もっとも有名な場面も知っていた。だから読んで新鮮さを感じるとしたら、1972年ってこんな社会だったんだなあという面だ。70年代はやっぱり反体制というか、文化的にも新しい価値観がどんどん入ってきた、〝ついこの前〟の時代みたいに思えているが、この本を読むとそれがまったくの錯覚で、随分と〝昔〟だったんだなあと思える。

    平均寿命が、当時、男性69歳、女性74歳となっている。今や81歳を超えている男性がなんと60代だったとは。「男女共稼ぎ」という言い方も懐かしい。「老人ホームへ親を送り込むって気の毒」という台詞。「老人性痴呆も齲歯(むしば)も文明病、原始時代にはなかった」という医師の話。「今から何十年後の日本では60歳以上の老人が全人口の80%を占めるという」との解説。いずれも、当時はそんな考え、そんな言い方をしていたんだなあと感慨深い。

    ********

    主人公:立花昭子(40代)
    夫:信利
    息子:敏(高校生)
    姑、舅(茂造)

    主人公の家族3人は夫の実家に住み、夫の両親は昭子と信利が負担して建てた離れに住む。小説は、姑が74歳で急死するところから始まる。舅が老人性痴呆であることがそれで判明する。舅は以前から昭子の悪口を言いまくり、意地悪をし尽くしてきた。姑も昭子に同情していたが、身勝手な舅をうまくコントロールしてきたこともわかってくる。

    そんなにいじめられ、恨みがあるはずの舅の面倒を見るのは、嫁である昭子。夜中に起こされ、徘徊を追い掛け、疲労困憊で限界だったが、ある日、舅が肺炎で死が近い状態になったが、必至の看病で奇跡の回復を遂げると、逆に生きがいとなって最後の最後までしっかり面倒を見ようと決意する。

    離れに間借りして住む学生結婚した2人の若者。考え方は生活の違いなど、その比較なども盛り込んでいる。日本語もさすがに鮮やか(一部、それってダブっているという表現もあったけれど)。

  • 1972年出版、売上194万部、タイトルである恍惚の人は当時の流行語大賞になったようだ。私はまだ生まれておらず、恍惚の人というワードは、ミドリカワ書房が歌う「恍惚の人」で知った。

    徘徊が一般的な言葉でなかった時代、老人ホームや介護施設などの制度が少しずつ形作られていく時代、姑と舅の介護生活の始まりが描かれる。

    重たい内容かと思ったが、悲壮感一色ではない。最後は衰退し、知能も幼児化した舅に息子の育児を重ねる場面もあり後半は穏やかな気持ちで読み進んだ。

    また、登場人物の年齢、性別、職業等によって老化する事への捉え方の違いが面白い。

    正直、私も、今の自分が恍惚の人になるというイメージは湧かない‥‥

  • 「パパママこんなに長生きしないでね」と子供に言われる日が来るのか、と自分の老いを感じる今日この頃。

  • まじでリアルで共感しすぎて辛かった
    なんか昭子の境地に行けなくて、だったら敏のまま無邪気な悪でいた方が楽だろうなーって考えながら読んでた自分おそろしーってなった

  • 同居の義母の突然死のあと義父の惚けに気づき…。
    徘徊、老人ホーム、同居家族の生活は?
    正解のわからない問題がずっと続く。
    共働きの多い昨今では、一発で家庭崩壊、貧困へとまっしぐらの気がする。

    いつどこで起こってもおかしくない。
    自分は大丈夫か?介護などできるのか?
    全く自信がない。

  • 記録

  • 姫路大学附属図書館の蔵書を確認する→
    http://library.koutoku.ac.jp/CARINOPACLINK.HTM?IS=4101132186

  • これが40年前の物語とは。
    認知症によってもたらされる本人の変化、周りの苦労。
    それが手にとるように伝わってくる。
    心理描写が絶妙。

  • 老いを考えさせられる作品である。

全196件中 51 - 60件を表示

著者プロフィール

昭和6年、和歌山市生まれ。東京女子短期大学英文科卒。昭和31年『地唄』で芥川賞候補となり、文壇デビュー。以降、『紀ノ川』『華岡青洲の妻』『恍惚の人』『複合汚染』など話題作を発表し続けた。昭和59年没。

「2023年 『挿絵の女 単行本未収録作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

有吉佐和子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×