- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101133287
感想・レビュー・書評
-
指揮官たちの特攻 城山三郎
8月は毎年、戦争に関する本を読むことにしている。今年は、コロナ対応が後手後手に回っていることなどの政治の失敗が先の戦争の体制と酷似している点などが叫ばれ、「やはり日本は戦争をしてはいけない」というムードが流れているように感じる。神風特攻隊などというものは、作戦としては最低の代物であり、パニックに陥った当時の政府にとっての苦し紛れのものであったことが想定される。特に、本書では特攻によって死にゆく若者たちの悲哀を描いている。無論、神風特攻隊によって死にゆく道を取った人々は、しっかりと弔われるべきであり、なお本書を読むと彼ら自身が作戦に不服としながらこの世を去っていったことがわかる。航空のプロたる彼らは、飛行機乗りとして育成されながら、最終的には片道切符の特攻作戦を実行する理不尽さ、悲しみに思いを馳せる。特攻は飛行機といい、プロのパイロットを一瞬にして砂塵にしてしまう極めて非効率な作戦であり、そのコストとリターンを考えれば竹やり作戦よりもタチが悪い。しかし、思うにこれらも平常時だからわかることであり、今回のコロナ禍における緊急時の心理状況をして、現代の私たちもこのような手段を取ってしまう危うさについて認知すべきであろう。パニックに陥ったときにこそ、絶対にとってはならない手段を知るということが重要であり、それこそが歴史を学ぶ意義である。
本書では特攻の最初の犠牲となった関大尉と最後の特攻隊である中津留大尉という同期にスポットライトを当てて、城山氏の体験も交えながら特攻や当時の軍部について述懐するものである。特に中津留大尉の死はつらいものがある。戦争が終わっているにもかかわらず、指揮官の宇垣纏の死に場所探しに突き合わされたという印象がぬぐえない。しかも、これは城山氏の予測ではあるが、戦争終了の米軍のパーティーに突っ込むことを命じられたうえで、あえて米軍のパーティーを避けて近隣の水田に突っ込むという最後は、真珠湾に始まる日本の国際的な戦争の了解事項の無視ということをこれ以上起こしてはならないとする中津留大尉の最後の覚悟であった。城山氏は天皇に戦争責任が及ばぬよう最後に罪状を被った広田首相に重ね合わせ、その矜持を虚しく称賛する。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
海軍兵学校の同期で、最初と最後の特攻隊員となった関行男大尉と中津留達雄大尉。「永遠の0」の宮部さんは中津留大尉がモデルになってるのかと、読み終えて思いました。本当に特攻作戦に関する文献は何度読んでも心が痛むし、憤りを覚える。親の気持ちも辛い。
-
またまた城山三郎さんの本。城山さんの集大成。
海軍兵学校の同期である2人は、片方が特攻隊の第一号となり、一方は終戦後に敗戦を知らぬまま飛び立っていった。同じ二十三歳で世を去り、特攻の幕開けとその幕を下ろした二人の対比が印象に残る作品です。
https://amzn.to/3bUJCKl -
23歳で特攻で散った関大尉と中津留大尉を中心としたドキュメント.城山三郎の渾身の一冊.経済小説のイメージが強いが自身の経験も踏まえた戦争関係の著書も多い.改めて強く戦争の不毛さをしる.
-
2015年3月
-
数年前に読んだのですが、久しぶりに再読中です。
-
この本の中津留大尉と、後に読んだ永遠のゼロの主人公がかぶってしまう。
あれだけ、特攻には頑とした考えの大尉が、なぜ終戦後に、と当初考えてしまった。終戦を知らなかったのか、それとも。ラストは考えさされる内容でした。
宇垣纒の特攻の操縦士が中津留大尉だったとは。 -
特攻とは何だったんだろう・・・
-
永遠の0を読んでから読みたくなって。ドキュメンタリー小説ですね。城山三郎ってすごいです。