町奉行日記 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134307

感想・レビュー・書評

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  • 山本周五郎の短篇小説集『町奉行日記名』を読みました。
    ここのところ、山本周五郎の作品が続いています。

    -----story-------------
    着任から解任まで一度も奉行所に出仕せずに、奇抜な方法で藩の汚職政治を摘発してゆく町奉行の活躍ぶりを描いた痛快作『町奉行日記』。
    藩中での失敗事をなんでも〈わたくし〉のせいにして、自己の人間的成長をはかる『わたくしです物語』。
    娘婿の過誤をわが身に負ってあの世に逝く父親の愛情を捉えた短篇小説の絶品『寒橋』。
    ほかに『金五十両』『落ち梅記』『法師川八景』など全10篇を収録。
    -----------------------

    1940年(昭和15年)から1960年(昭和35年)に発表された作品10篇が収録されています。

     ■土佐の国柱
     ■晩秋
     ■金五十両
     ■落ち梅記
     ■寒橋
     ■わたくしです物語
     ■修業綺譚
     ■法師川八景
     ■町奉行日記
     ■霜柱
     ■解説 木村久邇典

    『晩秋』と『落ち梅記』、『寒橋』の3篇は再読、残りの7篇は初めて読みました… その10篇の中でイチバン好きなのは『晩秋』ですね、、、

    自刃した父の恨みを果たすため、冷酷な奸臣と言われた老臣・進藤主計を狙う娘・都留の葛藤が描かれており、クライマックスにおける二人の縁側での対決が清々しいんですよねー このような事態で為政者は、どのように振る舞うべきか… 政治家の皆さんの見本にしてほしいですね。

    自らの命を賭けて反対勢力の一味を集めて謀反を図ることにより、反対勢力の一掃を謀る老職・高閑斧兵衛を描いた『土佐の国柱』と冤罪と知りつつ藩政を立て直すために黙って罪をかぶるという忠義に殉じた武士・金之助を描いた『落ち梅記』も、『晩秋』と同じく、己を犠牲にして侍としての筋を通す厳しく美しい物語… このジャンルは感動しちゃいますね。

    行きずりの武士に託された50両を届けることにより報酬だけでなく、人間同士の信頼を知ることになる『金五十両』と、娘婿の過ちを義父が背負ってあの世に逝くことで夫婦が救われる『寒橋』の市井ものもイイ味があり、印象に残りました。

    痛快なこっけい物の『わたくしです物語』と風刺性の濃いこっけい物の『修業綺譚』は、落語を観ているような雰囲気で愉しめましたね。

    やくざな相手に対し徹底した軟派政策により解決を図る町奉行の活躍を描いた『町奉行日記』も痛快で心地良い読後感が味わえました、、、

    好みの作品が多く収録されていたのでトータルで満足度の高い一冊でしたね… 山本周五郎の作品は、読み始めると、やめられないとまらない魅力がありますねー 次も読んでみようと思います。

  • 表題作はいかにも映像化されそうな感じ。
    人物・背景設定の面白さ・痛快さもそうだけれども、この作家が持つ読み手に対するイメージ喚起力は相当なもの。
    実際にクロサワという映画史に残る巨匠への影響力を考えれば分かるというもの。

  • 日本の良さがすごくわかる。昔の人って人情あるし、昔の日本に戻って欲しいと思う作品。

  • 2015/12/7ブックオフ購入
    2015/12/9読み始め
    2015/12/17読了

  • 似た主題の江戸モノを集めた短編集。悪い言い方をすればどれも同工異曲なのだけど飽きさせない。流石。

  • 武家物中心の本著。

    「わたくしです物語」はドラマや舞台映えしそうな話。
    「金五十両」も不幸な主人公の最後の言葉がグッとくる素敵な話。
    滑稽もの、感動ものなど様々な話が読めるので、面白い。

  • 短編集。山本周五郎さんの粋な物語がたくさん入っていて楽しかった。

  • 山本さんのBESTとは言いませんが、なかなか良い本です。
    特に10の短編が発表順に並んでいるのが興味深い。戦前の如何にも青少年向けの作品から、円熟期にかかる昭和30年過ぎまで、周五郎さんの成長ぶりがよく分かります。
    本当に山本さんは成長し続けた作家さんで、短編の出だしを少し読むと何時頃の作品か判ります。例えば勧善懲悪を描く場合、初期は言葉で直接に声高な善を主張し、少しするとストーリの中で明快な勧善懲悪を描きます。そして最後には、時に悪が跋扈し善が虐げられるままで物語は終わり、余韻の中で「それでも善が・・」と語っているようる作品集です。また「滑稽もの」が多いのも特徴的です。
    新潮文庫の周五郎さんの歴史・時代小説はあと1冊でコンプリートです。

  • 短篇集。特に「町奉行日記」は隆慶一郎っぽくて良い

  • このなかの「わたくしです物語」が好きなのよ。大笑いしたのよ。周五郎天才!!

著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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