女龍王神功皇后 上巻 (新潮文庫 く 5-6)

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  • Amazon.co.jp ・本 (522ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101148052

感想・レビュー・書評

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  • 古代の神々や人物について思いを馳せた時、神功皇后についてはほとんど知らないなと気づいて、本を探しました。
    小説として上下巻ほどの内容があるとは。
    「鬼道の女王 卑弥呼」が面白かったので、読んでみました。

    播磨の首長、葛城垂水王の娘・高額媛には、近江の息長宿祢王との縁談が決まったが、実は地元の青年、葛城ムジナのことを想っていた。
    嫁ぐ前のある日、龍神の御業なのか?二人の身に異変が起こる…
    高額媛は嫁いで息長足姫(オキナガタラシヒメ)を生み、姫は大柄で気丈な、武勇にも優れた巫女姫として育っていく。
    一方、傷心のムジナは故郷を離れ、建人(タケル)と名も変えて、日向の諸県で新たな生活を築いていた。ところが、運命の歯車が大きく動き…

    倭建尊の子である足仲彦(タラシナカツヒコ)王子は勇猛で神の力など信じない男。
    息長姫の噂を聞き、自分にふさわしい女性だと婚姻を申し込んでくる。
    巫女として生きようとしていた息長姫は拒みたかったが?
    息長姫の元へやってきた建人は、我が娘であるかもしれない姫の参謀となっていく…

    後に神宮皇后と呼ばれた古代の女性の若き日。
    神宮皇后は古事記と日本書紀に出てくるものの、半ば神話のような内容で、実在したかどうかは疑問視されています。
    ヤマトタケルの息子と結婚した…というと、ヤマトタケルは確かに神話のなかの人物という気もしますが。
    大陸では既にかなり史書も残っている時代。
    事跡の詳細はともかくとして、4世紀後半ごろに、モデルとなった女性はいたのではないか?
    という作者の発想には共感を覚えます。
    当時の勢力図、地理や考古学的発見をまじえて、想像をふくらませたドラマチックな小説です。
    長い名前の人物関係はややこしいけど、わかりやすく面白い作品でした。

  • 神功皇后の生い立ちから仲哀帝と結婚する前までの話が上巻。
    本当は神に仕えたいが神託を受け結婚を承諾するがそれでも延期を願う。神話の要素も入っているが情景がうまく描写されているからか頭に入ってくるので分厚い本でもあるが一気に読める。

  • 名前は聞いたことがある神功皇后。名前以外はよく知らなかったのですが、まだ“神話”が混じった頃の人物だったのですね。古代の人物の名前は長くて馴染みがないので覚えるのが大変。読むのに時間がかかります。上巻では、まだ後の仲哀帝(タラシナカツヒコ王)の妃になっていません。息長姫(神功皇后)がタラシナカツヒコ王との婚姻を嫌がっているのが何とも…(笑)。神託だから仕方なく、という感じです。下巻はどうなっていくのか楽しみです。

  • 葛城垂水王の娘である高額姫の子供を息長姫といい,後にヤマトタケルの子供であるタラシナカツヒコ王(仲哀帝)の妃となる。いわゆる神功皇后である。
    神功皇后は応神帝を生む。神功皇后の参謀とも言える葛城建人のちの武内宿禰が傍で補佐し,宿禰の日向の国の妻との子の葛城渦刺がのちの葛城襲津彦である。
    宿禰は後に応神,仁徳にも仕えたという。
    葛城襲津彦の娘の磐之姫は仁徳の皇后となり,履中(りちゅう),反正(はんぜい),允恭(いんぎょう)の三大王を生む。
    神功皇后は実在したかどうかは疑わしいということだが,九州の香椎宮を拠点として九州勢をまとめて大和地方に攻めてきた巫女王がいて,その中に後の応神帝がいたということだろう。卑弥呼の時代から一旦巫女的権威は薄れたが,戦乱の世では宗教的なものに誰もがすがりたくなるのか,神功皇后は応神を1年以上もお腹の中で育てたとか色々と神秘的な説話も多い。
    本書は神功皇后と題されているが,武内宿禰と応神を身ごもった巫女王の話といった感が強い。
    全2巻

  • 後に神功皇后として古代日本に名を残した伝説上の人物である。

    今まで古代史に触れ、神功皇后について持っていたあたしの知識は
    卑弥呼のような強大な呪力を元に、群衆を統制し、新羅征伐をしたくらい。

    架空の人物とされているほど、伝承もさまざまで史料も少ない。
    そんな人物を史実に基づき、想像力をめぐらせ、
    こんな魅力的な作品を書くなんて黒岩せんせはほんと素晴らしい!
    最初から最後まで、どっぷりと黒岩ワールドに浸かれる珠玉の一作。

  • 古代史上、架空の人物として神話的な色合いの濃い、神功皇后の話し。
    4〜5世紀の大陸や朝鮮半島との関係や史料から、丹念に推理し、それを元に、大胆に描いたお話と言える。
    巫女王と言う事で、卑弥呼とキャラがかぶる印象があるけれど、卑弥呼よりも後の時代と言うこともあり、また新羅征討の逸話がある事を元に、勇ましい武のイメージも強い女性となっている。
    神がかり的な部分も強いけれど、大胆な発想の中にも、残された史料にしっかり基づいていることが伺えて、小説としても、歴史の新説としても楽しめ勉強になったと思う。
    日本の古代史は、大陸や朝鮮半島との関係が特に密で、切っても切れない関係でもある事から、その変の事情が丹念に事細かく描かれてあるのだけれど、
    その部分が、ちょっと退屈な時もある。
    時代背景、社会背景としては必要な部分でもあるのだが、この辺が、単純に物語を楽しむ小説ならではの世界とは少し違う感じがするのは、まぁ、仕方の無い事かな。
    上下2巻だったのだけれど、読み始めから終わるまで、1年近くかかってしまったのは、やはりなかなか物語りの世界に没入できなかったせいだと思う。面白いことは、面白かったんだけどね〜。

  • 四世紀の末、明石海峡に面した垂水。葛城垂水王の娘、タカヌカヒメが、近江の息長宿祢王のもとへ嫁ぐ日が近づいていた。
    しかし、タカヌカヒメには、想う人がいた。同族の青年、ムジナである。
    ある時、神懸りしたタカヌカヒメは、伊川の上流にある神の谷に走り去る。後を追う垂水王とムジナ。ムジナはタカヌカヒメを捕らえようとするものの、龍神にとり憑かれ、意識のないままタカヌカヒメを犯す。
    秘密を胸に秘め、ヒメは近江へと嫁いでいった。傷心のムジナも、新天地を求め、日向の国・諸県へと旅立つ。

    かつて景行天皇がとった領土拡大政策は失敗に終わり、大和の王権に弱体化をもたらしていた。病弱な成務帝には子がいない。王族たちが王位をめぐって暗闘するなか、神の力を信じない偉丈夫・タラシナカツヒコ王子は政権を奪取すべく立ち上がる。

    息長宿祢王とタカヌカヒメの間に産まれた息長姫は、巫女の資質と大柄な体をもつ、圧倒的な存在感を発する娘に成長した。姫の豪勇譚を耳にしたタラシナカツヒコ王子は、彼女こそ王者の妃にふさわしいと考え、近江を訪れる。
    二年後にタラシナカツヒコの妃になるという神託をうけた息長姫は、その間、海の神に仕えるべく敦賀へ移る。

    息長姫の住む鶴賀の地へ、一人の男が漂着する。それは、日向から大陸へ交易の旅に向かう途中、嵐にあい、記憶を失ったムジナだった。

    黒岩作品のなかでも特にシモネタが不愉快な本作。苦手な人は注意。

  • ちはやぶる神々の力が天地に満ちていた古代日本。龍神の加護により、生まれながらにして恐るべき呪力を備えた一人の姫が誕生した。のちに神功皇后となる息長姫である。倭建の息子である偉丈夫タラシナカツヒコ王子(仲哀帝)は、この息長姫との婚姻を強く望む一方で、大和の政権を奪取すべく立ち上がる―。四世紀の大和の地で、武力と呪力が妖しく交錯する闘いの火蓋が切られた。

     2002年2月27日購入

  • 神話
    神功皇后

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著者プロフィール

1924-2003年。大阪市生まれ。同志社大学法学部卒。在学中に学徒動員で満洲に出征、ソ満国境で敗戦を迎える。日本へ帰国後、様々な職業を転々としたあと、59年に「近代説話」の同人となる。60年に『背徳のメス』で直木賞を受賞、金や権力に捉われた人間を描く社会派作家として活躍する。また古代史への関心も深く、80年には歴史小説の『天の川の太陽』で吉川英治文学賞を受賞する。84年からは直木賞の選考委員も務めた。91年紫綬褒章受章、92年菊池寛賞受賞。他の著書に『飛田ホテル』(ちくま文庫)。

「2018年 『西成山王ホテル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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