天国旅行 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 402
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101167626

感想・レビュー・書評

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  • 「心中」がテーマのお話。
    命について考えさせられた…。

    死んでしまったらもう、その人がどんなことを考えていたかなんてわからない。
    だからこの本はどの話も、謎は完全には解けない。読者としては「え、この謎は??気になる!」という気持ちでモヤッと感は残る。
    けれどそれこそが残された者の立場。死者とは話せないので、記憶で推し量ることしかできない。

    物語だから解決した方が読者的にいいだろう、とするのではなくリアルに謎のままにするのが好きだったな。

    他の方の口コミを見ていたら、結構重たい内容だったり、モヤっとした終わり方な部分に賛否両論あるみたい。メンタルが落ち気味な時に読むとちょっとつらいかもしれないので、万全なメンタルで読むのがオススメかも。

    展開が早くてサクサクと読みやすいし、物語としておもしろかった。(テーマがテーマなので、おもしろいとは言いにくいけれど…)
    私はこの本好きでした!

  • あんたにはわからないだろう。心配してくれる人が1人もいないまま生きていくってのが、どんなことなのか
    渕上:でも、そのはずだった自分が来ると出るのだと覚えれば夜だけど、もう充電ないような気がした
    君と出会い君と生きたからこそ、私はこの世に生を受ける意味と感情をすべてを味わい知ることができたのだ
    現実には、なんの仕返しも抗議もできない無力な私たちは、死によって、神のごとく他者を罰し、傷つけ、深い後悔を負わせることができると、どこかで思っている

  • 文楽を基にしたエッセイと小説を著した著者ならではの作品と言えよう。特に「君は夜」は、現代を生きる理紗が、夢の世界では江戸に生き、そして死に至る(?)記憶を宿す物語に、不条理な心中を強く感じさせた。衝撃的なのは、富士の樹海で自死を目論む男を描く「森の奥」。好きなのは、戦時下の男女を描いた「初盆の客」。戦死した最初の夫、そして、戦後まで添い遂げた二番目の夫のどちらも愛したおばあちゃん。これも壮大な心中……ということなんだね。

  • 「遺言」が私宛だったらいいのに

  • 人の数だけ物語があって、人の数だけ愛の形がある。一人じゃ前に進めなかった未来も、君となら何処までも行けるんだって思えた。たとえその先が暗闇だったとしても。喜びも悲しみも痛みも恐怖も全て分かち合おう。 君と成し遂げられる 最期の計画、天国旅行。

  • 「心中」をテーマにした短編集。
    心中が共通のテーマというだけあって、起きている事件はヘビーだったりするのだか、物語は淡々と進む。作者の文体も影響してるとは思うのだが、おそらく生も死も、好きな子に告白されたことも並列な出来事だと捉えているからなのだろう。
    人は生死に関わるイベントを重く捉えがちだが、それも日常の一場面なのだと感じさせられた。
    テイストは異なるが是枝作品を見た後の感覚に似ている。

    ●森の奥
    自殺しようと樹海に入ったサラリーマン。中で出会った若い男と行動するうちに生きることを考え始める。
    ●遺言
    若い頃、心中を試みたが生きることを選んだ二人。老人になり、あの時に死ねば良かったと繰り返すパートナーとの暮らし。
    ●初盆の客
    ある年の盆、一人留守番をしている女のもとに遠縁と名乗る男がやって来る。男は亡くなった祖母の前夫の孫と言うが…。
    ●君は夜
    前世の記憶が夢に出て来る少女は大人になり、不倫の恋をするが…。
    ●炎
    憧れの先輩が早朝の校庭で焼身自殺を遂げる。少女は先輩の彼女であら同級生と真相を探り始める…。
    ●星くずドライブ
    彼女の幽霊と同棲している大学生。なかなか成仏しな彼女との二人暮らしにも慣れ始めるが、ある条件のもとで消失することに気づく…。
    ●SINK
    一家心中の生き残りである主人公が、ある言葉をきっかけに母親の行動に別の意味があったことに気づく…。

  • ほぼジャケ買い。
    死(心中)に纏わる短編集とのことで、コロナ禍で自殺する人が増えてる今、何か心がぞわぞわした。
    何で自殺なんてとか思うけど、、死にたいと思う理由なんて本当人それぞれで、そう簡単に推測出来るようなもんじゃないんだろうな、とも思う。
    色んなパターンのお話だったけど、星くずドライブが好き。

  • 心中ものが大好きなので。本当に好きな一冊。
    「遺書」が一番好きかな。

  • 「心中」をテーマに7つの短編集がおさめられている。
    森の奥:樹海の中で自殺をしようとした男性が樹海で男性と出会い、最後救われる話。
    遺言:心中願望のある「きみ」に宛てた私からの手紙。最後の1ページの言葉が美しい。そして、夫から妻へ宛てた手紙だと思ってたけど、角田光代さんのあとがきを読んで、そういう解釈もあるのかと納得した。
    『きみと出会い、きみと生きたからこそ、私はこの世に生を受ける意味の感情とすべてを味わい、知ることができたのだ。』
    『焼いたらきっと、あの日私が目にしたままの姿で恋の矢が出てくるだろうから、お骨のあいだを探してごらん。』
    『私のすべては君のものだ。きみと過ごした長い年月も、私の生も死も、すべて。』
    炎:高校生の先輩が焼身自殺した。みんなから憧れていた先輩がなぜ?わたしと先輩の元彼女が一緒に行動を共にする。真実は何?最初から最後まで少し不気味なお話。その暗さが良かった。 

    全体的に暗く重たいお話だけど、どの話も短編集なのに、短編集だと思えない重厚感のあるお話で良かった。特に、遺言と炎が好き。

  • 死ぬことがテーマだけど、短編ということもあって、重すぎない。不思議で、滑稽で、心配で、きれいな作品。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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