わが友マキアヴェッリ 2 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181394

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  • 第二部はマキアヴェッリがなにをした、を描く。
    彼がついていた書記局とは、議事録とかを作成するような字句に思えるが、実際は外交などを担当する部署。
    各国に外交交渉を行うために飛び回る日々。その中で、彼は、チェーザレ・ボルジアやフランス王や法王などとも交渉を重ねて行ったり、内政面ではフィレンツェの国民軍を祖国の独立を防衛するために設立したりする。
    しかし、フィレンツェを追われたはずのメディチ家が復活したことにより、15年にも渡る官僚生活が終わってしまうことになる。

  • 全3巻の2冊目

    1498年にフィレンツェ政府の第二書記官に選出され、1512年に職を追われたのち、翌年には逮捕・投獄されるまでの、15年間がこの第2巻で描かれている。

    第1巻はマキアヴェッリが世に出るまでのフィレンツェ史であり、そのため主役はマキアヴェッリではなく、その時々にフィレンツェ政治の第一人者であった人々、コシモ、ロレンツォ、サボナローラであった。もしくは、フィレンツェという都市自体が主役であったかもしれない。

    この巻で、ようやくマキアヴェッリが表舞台に登場する。フィレンツェ政府の官僚として実力を認められ、他国との交渉を任されるが、マキアヴェッリには大した権限が与えられない。フィレンツェ自体が大国に翻弄され、金だけいいように毟り取られる斜陽都市だった。それでもがむしゃらに動き回るマキアヴェッリの姿が痛ましい。
    『君主論』の君主像のモデルと言われるチェーザレ・ボルジアはこの巻に登場する。
    先行研究の成果を踏まえつつ、あくまで一次資料に依拠して独自のマキアヴェッリ像を提示しているが、そこは作家らしく自宅から勤務地であるフィレンツェ政庁までの通勤ルートや、終業後はここから同僚と飲みに行ったのだろうなど、人間マキアヴェッリを想像させる種があちこちに散りばめられていて楽しかった。

  • 仕事にやりがいがあれば、稼ぎが悪くても、がんばれる。今も昔も同じ。一線を退いてどう生きる?三巻でじっくり参考にさせていただきます。

  • 第二部の本書では、マキアヴェッリの官僚としての日々を描いている。

    マキアヴェッリは、フィレンツェ共和国の第二書記局書記官という役職に29歳で就任した。家柄や人脈がものをいう当時の世界でそれらに決して恵まれているとは言えなかったマキアヴェッリが就いたのは、いわばノンキャリのポストであり、最初から大きな出世は見込めないポジションであった。

    一方で、このポストは官房副長官と言ってもいいような、すべての情報が集まり、ここを通ってトップや各部局に伝わっていくという性格を持ったポストでもあった。フィレンツェ共和国の内政・外交に関するさまざまな動向が手に取るように分かるという意味で、マキアヴェッリにとっては興味の尽きない役職であったと言えるだろう。

    状況を見極める力、文章力に長けていたマキアヴェッリは、仕事自体にも精力的に取り組んだようで、約15年間の官僚としての生活の中で、事実上大統領補佐官とでも言ってよいような役割を果たすようになる。そして、マキアヴェッリが特に多く関与し、恐らく本人としても力を入れたのであろう分野が、外交の分野だった。

    本書では、マキアヴェッリが外交官として任に当たった多くの出張と交渉の記録のようになっている。

    第二書記局書記官というのはノンキャリのポジションであることから、共和国の顔をしてではなく、副使として補佐をするか、それほど重要ではない、もしくは当面時間稼ぎをしたいような案件で派遣されることが多かったようである。しかしその分、交渉の前捌きなど、実質的な交渉を行うことも多く、分析力が求められる仕事でもある。

    第一部で描かれた共和国としての全盛期を過ぎ、イタリア諸国の中での主導権を失っていたフィレンツェ共和国は、この時代複雑な外交関係を生き抜いていく必要があった。そのような環境で仕事をしたマキアヴェッリは、非常に現実主義的なものの見方を磨いていくことになったように思う。

    1500年当時のフィレンツェ共和国は、自業自得と言えなくもないのだが、フランス王国のイタリア半島内での権益拡大の動きに悩まされていた。また、この問題が片付いた後にも、時のローマ法王の息子、チェーザレ・ボルジアが、イタリアの秩序を大きく変えようとする動乱があった。

    これらの課題に取り組んだマキアヴェッリであるが、『君主論』の著者として権謀術数を説いた姿とは異なり、悪戦苦闘という方が相応しいような仕事ぶりである点が、非常に印象に残った。

    地位として高い交渉権限が与えられていなかったということもあるが、それ以上にフィレンツェ共和国が交渉の主導権を握り得ない状況にあり、そのような環境下では、相手を動かすことよりも、いかに負けない形で交渉を推移させるかという、受動的な交渉にならざるを得ないということが、要因であるように感じた。

    しかし、そのような中でも、何を最も重要なラインであると認識し、交渉を組み立てるかということは重要である。マキアヴェッリも、当時の自らの地位や出る杭は打たれるというようなフィレンツェ共和国の政治環境には不釣り合いながら、外交のポイントをついた報告書を本国に送っている。

    ただ、マキアヴェッリがいかに主張をしようとも、当時の外交の状況を鑑みると、交渉において相手より優位な立場に立つことより劣勢に回りながらの防戦を強いられることの方が多かったであろう。そしてそのような環境が、後年のマキアヴェッリの著作の主張の多くを形づくったのではないかと感じる。

    チェーザレ・ボルジアを鏡とする君主制を理想とするところや、傭兵制に強く反対し自前の軍隊の重要性を説くところなどは、マキアヴェッリの外交官としての実体験から導き出された考え方のように思えてならない。

    この作品の第二部は、スペイン王国の後ろ盾を得たメディチ家の復権とマキアヴェッリの解任で終わっている。

    君主の統治のあり方を説いたマキアヴェッリであるが、実務としてはノンキャリアの一外交官としてその役割を果たし続けた。このことがかえって、彼の冷静な視点を作ったのではないかとも感じた。そして、解任された後もまじめに引き継ぎをこなし、その後は再度の任用を願いながら隠遁生活を送る姿からは、あくまで官僚としての彼の姿を強く印象付けられた。

    同時代でもクーデターによって政権の中枢に返り咲こうとする事件は何度も起こっている。権謀術数を理解し、政治の実務にも長けているマキアヴェッリがそのような動きを主導するどころか加担もしなかったというのは、彼自身が自らの立場をそのような権力闘争の場からは離れたところに置いていたからではないかと思う。

    外交の現場を当事者としてつぶさに垣間見る機会と、官僚として客観的に物事を見る立場という二つの面が、マキアヴェッリという人物と『君主論』をはじめとする著作を結びつけたのだということが分かる内容だった。

  • 第一部の「マキアヴェッリは、なにを見たか」に続き、第二部は「マキアヴェッリは、なにをしたか」。

    ノンキャリア官僚として主に外交と国民軍創設に奔走する姿を描いている。

    色々な事情が絡み合った中での膨大かつ複雑な仕事にマキアヴェッリがのめりこんでいく姿に共感を覚える。

    決して高給ではないものの、その仕事の面白さを味わい尽くしているのだ。

    そして、虚しさも味わう。

    とはいえ、ここまでは序章にすぎない。

    第三部の「マキアヴェッリは、なにを考えたか」の導入部にすぎないように感じてならない。

    3巻、どのような展開で進んでいくのか楽しみだ。

    本巻の解説も、前巻同様、佐藤優氏。
    自らとマキアヴェッリを重ねながらの解説は、一読の価値がある。

  • 1巻は「何をみたか」であったが、2巻は「何をしたか」。いよいよ登場。彼の仕事ぶりが綴られる。 もうこれ以上出世しないことがわかっているのに精力的に仕事をする。”欲張り婆さん”と言われるほどに仕事を引き受ける。現代の勤労者にも何かわかるところがある。「頑張っていれば何か報われる」そんな思いもあったのかもしれない。実際、彼を歴史に残すほどの出会いもあった。しかし、いくら親近感をもったとしてもやはり彼は歴史上の偉人である。我々とは違う(勿論巻末の解説者とも)。何が違うか、経緯を払って考えたい。

  • 感想は3巻でまとめて

  • イタリア中世の歴史を著者の語り口で流れるように進んでいく。

  • マキアヴェッリ第2巻。1巻がフィレンツェの歴史や時代背景を詳細に書き込んでいたのに対し、この巻はマキアヴェッリがどのようなことをしていたのかに重きを置いて書かれてます。
    マキアヴェッリって仕事中毒と言うか、抱え込みたい質だったんですね。。。能力があり、愚直に自分の職務に向かっていっても、最後は運としか言いようの無い荒波に飲まれ無職に。
    このあとから君主論・政策論が書かれるということですが、どのような考えでこれらの本を書いたのか、気になるところ。ディテールがこの1・2巻ではっきりしたので、3巻ですっと入ってくるような気がします。楽しみです。

  • フィレンツェという都市国家の
    盛衰を見たトップ官僚マキアヴェッリ。

    マキアヴェッリは実務の人だった。
    フィレンツェという都市国家の
    トップ官僚だった。

    このことを知らなかった私は
    知らなすぎだが
    この官僚としての活躍を描いたのが
    第2巻である。

    次第に周囲で出現しつつある大国家。
    その狭間で大国家の意思を図りつつ
    自らの繁栄のために動くフィレンツェ。
    その事務方トップの一人として
    何とか国を守ろうとするマキアヴェッリ。
    その獅子奮迅の動きを描きながら
    往時のフィレンツェの姿が甦ってくるのが
    塩野文学の凄さだ。

    当時傭兵が主流だった軍隊。
    しかし、自国を守るために
    自前の軍隊をもとうと奔走する
    マキアヴェッリ。
    彼の悲願は叶ったのだったが……。

    なぜか日本の置かれた今との相関を感じた読後だった。
    そして、マキアヴェッリの物語は
    いよいよ佳境の第3巻へと向かう。

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