ローマ人の物語 (39) キリストの勝利(中) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181899

感想・レビュー・書評

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  • 背教者ユリアヌスを読まねば。
    ユリアヌスvsシャプール2世

  • キリスト教会の主導で行われている、貧しく身よりのない人や孤児や未亡人を救済するための事業が、キリスト教の勢力の拡大に役立った事実に目を付けたのだった。

    キリスト教へ移行しようとしていた時代に、ローマ多神教への回帰を求めた稀有な皇帝ユリアヌスの物語。彼の視線(そして塩野氏の視線)から眺めると、司教階級への税金優遇が、キリスト教への改宗を速めたことが見て取れる。また、蛮族に脅かされていたこの時代、強いリーダー=絶対的な神への寄与が唯一残された希望の道であったことも分かる。そして、今まで社会のつまはじき者とされていた人々にとっては、今こんなにも困難がのしかかっているのも、天国での善き暮らしのためだという理由が与えられ、生きる希望が見出せたのだと思う。つくづく、キリスト教は頭がいい宗教だと感じてしまう。こうして、なるべくしてなったキリストの支配。ユリアヌスがもう少し長く生きていたら…という想いを塩野氏ともども抱いてしまった。

  • 若き副帝ユリアヌスは、前線での活躍で将兵や民衆の心を掴んでゆく。コンスタンティウスは討伐に向かうが突然病に倒れ、紀元361年、ユリアヌスはついに皇帝となる。登位の後は先帝たちの定めたキリスト教会優遇策を全廃。ローマ帝国をかつて支えた精神の再興を目指し、伝統的な多神教を擁護した。この改革は既得権層から強硬な反対に遭うが、ユリアヌスは改革を次々と断行していくのだったー。

  •  時代の流れに逆らうと決めたユリアヌスの物語です。ユリアヌスが表舞台に出てからのローマ史は,これまでと違う方向に時代が舵を切ったときに,その流れに乗るのか,それとも逆らうとした場合に,どのように逆らうのかまた逆らった場合にどのような環境に置かれることになるのかを考えさせられる物語とも読めると思います。
     アンティオキアでの統治の失敗や,ペルシア遠征の失敗など,失政も多かった皇帝ですが,「このような時代に,一石を投じた」というユリアヌスへの塩野さんの評価は,最後の「皇帝ユリアヌスの生と死」にまとめられていると思います。そして,ローマ人の物語の中でも,限られた主要人物には,1ページの全身彫像の写真が掲載されていますが,ユリアヌスもその1人になっています。
     4世紀という時代に生き,時代に一石を投じるほどに駆け抜けたからこそ,文庫本で1冊割かれるだけの価値があり,1ページの全身彫像写真が掲載されているのでしょう。

  • ユリアヌス帝、なかなか立派だった。ローマ人の物語は歴史書ではなく塩野七生の”小説”なので、塩野七生のその人に対する評価がそのまま人物像として描かれる。とすると、ユリアヌス帝に対する塩野七生の評価も相当高いのだろう。
    ユリアヌス帝は、古代では唯一人、一神教のもたらす弊害に気づいた人で、それを排除しようと尽力した人だった。性格的にも真っ当だ。
    本当にこの人の治世が19カ月ではなく、19年だったら、この後の世界はどうなっていただろうか。ローマ帝国も復活していただろうか。少なくとも、その後に続く暗黒の中世はなかったのだろうか。もはや皇帝をもってしても、その流れは止めることはできなかったということなのだろうか。
    この人のそばに完全に信頼でき、軍事政事ともに優れた能力をもち、皇帝の前であろうとはっきりと自分の意見を述べることができた協力者がいれば、19年の治世も可能だったのだろうか。

  • 教義自体より、それに従っていく人々の振る舞いに宗教の本質があるような気がする。

  • 4世紀ユリアヌス帝を描いた1冊。在位期間はたったの19ヶ月であったが、その短い期間に時代の転換要素が凝縮している。前帝とキリスト教に対する立ち位置を逆にしていたため、「背教者」の名をキリスト教徒から与えられることになる。一神教徒でない私からすると、決してそんなことはないのですが…。ユリアヌスは哲学者として生きられた方が、幸せだったかもしれないな。

  • コンスタンティウスに反旗を翻し、皇帝として短くもローマを統治した背教者ユリアヌスの治世。
    先帝コンスタンティウスが推し進めたキリスト教興隆施策を廃し、昔のローマをよみがえらせようとするも力及ばず、最後はペルシアとの戦いで命を落とす。
    波瀾万丈な人生を送ることになったユリアヌスを見て、時代の流れとは抗い難いものなのかと感慨深く読んだ。

  • 20130512

  • 読書日:2013年4月18日-19日
    title in Italiana: DE CHRISTI VICTORIA. -RES GESTAE POPULI ROMANI-
    Julianusが皇帝に即位との要請を受けたsceneに笑いを禁じえませんでした。
    ここまで仰天する二十四歳もそうそう居ないでしょう。
    望まれて皇帝になったJulianus。
    彼も兵士や民に応えた政治をしたのだと感じました。
    確かにひとつだけの宗教に偏重すると、他の取分け先祖代々馴染みのある宗教の信仰がおざなりになりかねません。
    彼はそれに一石を投じたのであって、決して時代を逆行したのではないと感じました。
    戦時中に腹に刺さった剣を抜こうとして負ってしまった致命傷さえなければ、位置がずれて死因になった手が完治して、治世が約20年続いてたら、今現在の欧州の宗教はどうなっていたのかと思案してしまいます。
    きっと、Christ教だけじゃなく、Greece Roma宗教も在ったのではないかと考えます。

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