ローマ人の物語 (39) キリストの勝利(中) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181899

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  • ユリアヌスの活躍を書く。無血で帝位についたユリアヌスは皇宮の宦官を放逐し、理髪師に助手が20人もいたとされる肥大した官僚機構をリストラし、ミラノ勅令の精神にもとづき、信教の自由を回復しようとし、キリスト教の特権的保護を解除、減税もおこなった。ギリシア・ローマの伝統宗教にも司祭階級をつくろうとしたが、これは失敗したようである。コンスタンティノポリスで7ヶ月ほど滞在したが、東方安定のため、アンティオキアにうつる。アンティオキアでは穀物投機を行う議員を見せしめに投獄したため上層部の反感を買い、また、ギリシアの神の神殿を再興したため、半世紀の間特権を受けていたキリスト教徒の反感も買う。アンティオキアの地は二度と踏まないと覚悟し、ペルシア戦役に向かうが、軍団の分割、補給のリスク分散を怠った。それでも、ペルシア国内に深く侵攻したが、クテシフォン城下の決定的場面でたづなを引いてしまい、以後は焦土作戦・ゲリラ戦のなか、軍団合流を果てせず撤退戦となり、ユリアヌスは誰のものか分からない槍を腹部にうけ死亡。甲冑もつけていなかった。ユリアヌスは古代でただ一人、一神教の弊害、それも他者に布教する一神教の弊害を知っていた人物だとされる。ユリアヌスの死後、ヨヴィアヌスがたち、ユリアヌスの改革を無にし、7ヶ月で死亡。蛮族だがキリスト教徒のヴァレンティアヌスが立つことになる。

  • 長かった「ローマ人の物語」もそろそろ終わりが見え初めてきた。
    それはローマ帝国の終わりでもあるわけだが、この巻の主人公は「ユリアヌス」。
    いわゆる貴種流離譚そのものの人生といえるかと思う。
    キリスト教主観では「背教者」と呼ばれ、自分もその通称で記憶してたが、実際は最後の「ローマ」的な皇帝で、決して暴君とかではないと知って面白かった。

  • 2012/07/28 購入
    2012/08/04 読了

  • 著者のユリアヌスに対する賛辞。

    宗教が現世をも支配することに反対の声を上げたユリアヌス。古代では唯一人、一神教のもたらす弊害に気づいた人ではなかったであろうか。背教者という別称は、彼にとってはもっとも輝かしい贈り名であった。

    歴史に”もし”が許されれば、彼の治世が19ヶ月では無く、19年であったなら、その後の世界は変わっていただろう。

  • ユリアヌスさん、残念でした。時代の大きな流れには逆らえず、、、後鳥羽上皇とかぶります。僕は大好きです♪

  • 背教者と言われるユリアヌスの治世が書かれていますが、やはりもう少し長く生きて色々なことをやらせてみたかったなあという思いに囚われます。
    ユリアヌスはあまりにも真面目で一本気すぎた。塩野氏も言うように老獪な助言者がそばにいれば上手くいった部分もあっただろうに。
    それにしても既得権に対する改革というのは本当に難しいということがよく分かります。

  • 軍事も政治も知らず、学究の徒として生活して来たユリアヌスだが、
    副帝として任されたガリア再興で目覚ましい成果を挙げる。この

    ことによって、ガリア防衛の兵士たちからの信頼を獲得する。

    荒れ放題だったガリアの再興に尽力しているユリアヌスの元に届いた

    のは、コンスタンティウス帝からの「お前のところの精鋭、送ってくれな

    い?」という要求だった。




    あぁ…ただでさえ少ない軍団兵を取り上げようというのか。

    これに異を唱えたのはユリアヌス本人ではなく兵士たちだった。「家族と

    離れて東方へなんか行きたくな~い」と、ユリアヌスの天幕を囲んで

    抗議である。説得を試みるユリアヌスだが、兵士たちは指揮官を

    「アウグストゥス!(皇帝)」と言って、自分たちの盾の上に担ぎ上げて

    しまった。

    さぁ、大変。このままでは帝位簒奪者とされてしまう。だが、コンスタン

    ティウス帝がタイミング良く病没したことで、ユリアヌスは帝位に就くこ

    とになった。

    そうして始まったのが、改革である。コンスタンティヌス、コンスタン

    ティウス親子が「ミラノ勅令」を無視して大幅なキリスト教支援をしたことに

    よって、優遇されていたキリスト教関係者の特権をはく奪し、「すべての宗教

    の信仰の自由」という「ミラノ勅令」の本来の姿を取り戻そうとする。

    宗教改革と共に、ユリアヌスが手を付けたのか官僚の大幅なリストラだ。
    コンスタンティノポリスの皇宮には、何を仕事としているのか不明な大勢の
    官僚がいたのを、思いっきり「事業仕分け」した。

    しかし、ユリアヌスの治世は長く続かない。ペルシア戦役の最中に、

    馬上で戦場を疾駆している時に腹部に刺さった槍が致命傷となって

    この世を去る。わずか19カ月の皇帝だった。

    著者も言っている。ユリアヌスの治世が19カ月ではなく19年であったなら。
    そうしたら、ローマ帝国のキリスト国教化はなかったかも知れぬ。ローマの
    神々が「異教」として、排除されることはなかったかも知れぬ。

    キリスト教史観では「背教者」とされるユリアヌスだが、帝国に本来の

    ローマの姿を取り戻そうとした彼は「最後のローマ人」だった。




    だが、狂い始めた歯車を止めることは出来なかった。最後のローマ人は、

    ドン・キホーテでもあったのか。

  • キリスト教が蔓延してくる頃2

  • イタリア、ローマなどを舞台とした作品です。

  • ユリアヌスの治世がメイン。19ヶ月という短い期間でったが、312年のミラノ勅令以降、キリスト教が勢力を持ち始めた帝国を、それ以前の姿に戻そうとする姿勢が見られる。
    そのための政策にしても、ペルシャ戦役の成果にしても、この人がやったことというのは、なんかちょっと惜しい感じがした。

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