本を読む女 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101191126

感想・レビュー・書評

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  •  たくましさ、いじらしさ、健気さとか。色んな言葉が似合う本。
     全部が生き生きしてて、苦しくなる。一番心に残ってるのは「しみじみとした絶望」って言葉。見た瞬間、泣きそうになった。
     万亀がとっても魅力的なキャラだからかな。等身大なのに、強くてかっこよくて、女の子の憧れの先輩って感じ。

     戦争とかあの時代に焦点を当ててる。「自分は万亀に比べたら恵まれてる」って最初は思ってた。だけど、「親に縛られてる」「男は嫌なのに、大切に思ってしまう矛盾」とか、私の悩みとそんなに変わらない。
     きっと万亀の時代に生まれていても、きっと私の悩みはそんなに変わらないだろう、って考える。
     それは本を読むから、ずっと自分は自分で、幸せでって思ってられるのかな。最後、いつも本は幸せを連れて来る気がして、今が幸せだと思える。

  • 日本史やってないから時代背景が絡む話はなるべく避けてるんだけど、これはすごく自然に読めた。
    主人公の生き方も感じ方も、結婚への憧れと仕事の狭間で絶望しそうな今の私と全く一緒じゃないか…。しかもそれでも約20年前に書かれたものとは。いつの時代も女性が悩み苦しむことなんて同じという。これは作者が巧妙と言わざるを得ない。感服。

  • 林真理子の小説は、距離の取り方がとても不思議。エッセイを書いているような奇妙な距離感が物語との間にある。自分が生み出している物語なのに、それをどこからか客観的に眺めている自分がいるような。そんな小説な気がする。私はそのグレーの溝、みたいなものが気になって気になってしょうがなかった。なんでこの人、自分の小説で、しかもお母さんがモデルで、自身も相当移入しながら書いているはずなのにこんなに距離感を取りながら書いているのか、みたいな。その距離がなんだか、もどかしいもので、だからグレーって感じなんだけれども。不思議な小説だった。しかし、共感の波はこれまた凄い。時代とか関係ない。まっすぐに響く共感。

  • 本を読むことの楽しさ。それを分かちあえる人、会えない人。家族についての視線・・・かと言って冷酷になれない。やりたいと考えていても、飛び出せない。同感する部分が多かった。

  • 時は昭和のはじめ。
    夢や希望を持ち羽ばたこうとするも、時代の波や家族に翻弄されながらひたむきに生きる一人の女性の半生を描いた物語。
    モデルは著者の母親。本を読むことが好きな万亀という少女でした。

    今よりももっと、自由が制限されていた時代。
    進学、就職、結婚のルートが、もっと限定されていた時代。
    思うように生きられなくても、その時々自分に言い聞かせるようにして現状を受け入れようとする彼女の生き方は、時代をとても反映させているように感じました。
    時折彼女を通して感じる郷愁の念や、どこか夢を見ているような感覚が読了後も残っています。

    人生の大事な場面では、いつも傍らに本がある。
    そのことが彼女の人生において、どんなに心強く励みになったことか。
    読み終わった後抱きしめたくなるような、そんな1冊。
    受け継がれていく人の命のたくましさに、胸がじんとしました。

  • すごく好き

    後半は戦中の時代がかかれていて
    そういう主題のものはどうしても苦手なんだけど
    いい小説だったなーと感じました。

    本作主人公が気に入ったという理由で好感度アップの林真理子ですが
    こないだ読んだ聖家族のランチとはだいぶ違う書き方で
    びっくりしました。うーん小説家ってすごい。

    本を読む女てタイトルの本を
    文字通り女の私がよんでることに少し面白さを感じていたんてすが
    男の人が林真理子読んだらどんな感想もつんだろうなー

    読書らしい読書でした。

  • 結構読むのがむつかしいな〜と思ったけれど、なんとか読み終えた。書き言葉が今と違うから?なんでだろ、設定も戦前〜だからかな。
    昔の風潮にも嫌気が差したし女の人が、というよりも主人公がゆらゆらしているからなのか、煮え切らない。子どもを残し消えていく男たちの無責任なこと。

  • 大正から昭和にかけて生きた物心ついた頃から30代までのある女の人の話。各章はその人が読んだ本の名前で構成されていて、それが良くその人の人生を表しているらしい。戦争がどれだけ人を不幸にするかも分かる小説。しがらみに囚われてるなーって感じる人におすすめ!

  • マリコさんのお母様をモデルにした文学少女の半生を、戦前から戦後直後の昭和という時代にのせて描いた物語です。

    今私が生きている時代は、職業は自由だし、本を読むこと勉強することは奨励され、更に背が高いことが障害になるなんてありえません。
    が、そうではない時代がありました。それが本書の舞台です。

    時代や家族やいろいろなものに阻まれながらも本に支えられながらひたむきに生きる姿には感動しました。
    だから最後に主人公が古本屋を職業として選ぶところがとてもうれしくて、それが実話であると思うと更に感動~
    「林真理子」という作家は、このような母や祖母が下地となって生まれてきたんだ!と思うとファンとしては感慨深い気持ちになりました。

    また、「いつもいい子でいなければならない」という強迫観念にも似たおもいにも共感しました。
    私は親にのびのび育ててもらったと思うのだけど、それでも長女という気負いがあって、私なりに優等生にならなければ、という気持ちはいつもありましたから。
    そういう意味で共感する人は多いんじゃないかなあ。
    だから、本屋さんになるところが余計にうれしかったのかもしれません。。

    あっそれと、主人公がその時読んでた本のタイトルを章のタイトルにしてて、凝ってる、というかおしゃれ~♪って思ってしまった。
    太宰の斜陽とか読んでみたくなりました。
    また積読リストが増えるな。

  • 朝ドラにできそうな話

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著者プロフィール

1954年山梨県生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、コピーライターとして活躍する。1982年、エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を刊行し、ベストセラーとなる。86年『最終便に間に合えば』『京都まで』で「直木賞」を受賞。95年『白蓮れんれん』で「柴田錬三郎賞」、98年『みんなの秘密』で「吉川英治文学賞」、13年『アスクレピオスの愛人』で「島清恋愛文学賞」を受賞する。18年『西郷どん!』がNHK大河ドラマ原作となり、同年「紫綬褒章」を受章する。その他著書に、『葡萄が目にしみる』『不機嫌な果実』『美女入門』『下流の宴』『野心のすすめ』『愉楽にて』『小説8050』『李王家の縁談』『奇跡』等がある。

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