深尾くれない (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101199221

感想・レビュー・書評

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  •  市井の時代物の名手がこんな骨太の史伝小説を書いているとは。題材は雖井蛙流の開祖である鳥取藩剣士深尾角馬。新しい剣法を編み出す傍ら、牡丹栽培に精魂を傾け、深尾紅とよばれる大輪の花を育てている。戦国の世も過ぎた時代で新流派といっても道場剣法であり鳥取という地方の地味な舞台にあって、剛直苛烈な人柄ゆえに不義密通をした妻女を二度までも斬り捨て、愛娘の縁談がらみで庄屋一家を斬殺し、最期は藩命により自裁して果てるという壮絶な生涯が描かれる。まず不器用にしか生きられなかった角馬が憐れであり、その父のもとで幼くして母を失い孤立して成長しなければならなかった一人娘ふきが不憫でならない。お転婆にみえて素直な心根をもったふきと角馬の、言葉は少なくとも心が通い合う後半のシーン。正直であるがために人並みの幸せな暮らしさえ叶わなかった二人に、作者の目はどこまでも温かい。それが心を打つ。

  • すごく切なかったです。

    角馬は武士で、男(不器用さも含め)なんだなあと感じました。
    このどうしようもない切なさはどうしたらいいでしょうか

  • 実在した鳥取藩士の物語。

    宇江佐センセ流の「剣豪小説」であります。渾身の力作です。
    いや~、ものすごく重い。

  • L 実在する人物を残された史料から膨らませた話?
    これを読んで、なにを思う、というよりも、そういう人がいました。という感じ。不器用な「侍」の生涯をたんたんと追うような。あとがき、がなければさらりと読み終わったものの読んでしまったあとはシラけた気持ちも。この角馬という人が特別なのか?剣術の始祖と呼ばれる人はすくなくとも家族との確執や自分の思いと周りがずれていってしまうような武士は珍しくなかったのでは?時代が江戸にあっては珍しいのか。
    …こういうひとがいました。っと。  それにしても娘がヒドイ。

  • まあまあ、面白かった。史実として読んで楽しかった。

    しかし、主人公の角馬の魅力が表現できておらず、あとがきに鳥取の人から何も反響がないとの愚痴がかかれていたが、これは、魅力的に書かなかったため、仕方ないと思った。

  • 背が低いというコンプレックスから女性に愛されるという実感が持てなかったのだろうか、かのを手にかけたときは読んでいて切なかった。もっと、もっと、良い家庭が築けたはずなのに。角馬の天晴れな最期もやりきれないものがあったけど、読後は不思議と爽やかな感じがした。

  • 宇江佐真理さんです。


    (本の紹介文より)

    短躯ゆえの反骨心から剣の道に邁進し、「雖井蛙流」を興した鳥取藩士、深尾角馬。


    牡丹を愛したことと、壮絶な最期で知られる一人の剣客。・・・・のお話です。


    江戸ものが好きな方なら、

    宇江佐さんの作品も楽しめると思います

  • 剣術指南役深尾が植えた牡丹。
    誰もがうらやむとても立派な牡丹。

    深尾は牡丹と剣術に夢中。ヒトの愛し方を知らない深尾。
    侍としてあるべき姿を追うあまり、妻も娘も理解できない。
    また、妻も娘も深尾を理解できず、剣術も牡丹も愛せない。

    そんな家族の中で間男した妻を切り捨てた深尾が、庄屋の息子に誑かされた娘
    のためにしたことは。その結果の侍としての最期とは…。

    帯にあるとおり最期まで良くも悪くも侍であり続けた男の話。

  • 実在した剣豪・深尾角馬について書かれた数行の資料を元に書き起こされた物語。

    角馬の後妻の視点の「星斬の章」、
    後妻との間にできた娘の視点の「落露の章」、
    2つの視点から角馬を眺める事で浮かび上がる武士の姿。

    宇江佐さんの作品のなかでは珍しい、全体的にもの悲しさが漂う本。
    でも締めくくりのおかげで読後感は晴れやか。その辺はやっぱり宇江佐さんだなぁ。

  • 2007.9.x 了/武士道とは.男とは何か.山陰の田舎で,ずっと昔に起こったこと.そんな時代のそんな場所での出来事にも,僕らの心を揺さぶる人間の心の闘いがあったことを伝えてくれた作者に感謝.まったく史実どおりではないのでしょうが.作者の作品は初めて読みましたが,とてもいいですね.

  • 読みながら自分自身を「かの」「ふき」と置き換えて読んでしまい、最初は嫌いだった角馬を、最後には好きになった。読んでいて感情的になってしまいました。

  • 主人公の好き嫌いはともかく、ガツンとくる一冊。結末の衝撃的な事件に至る侍の意地が悲しい。

  • 鳥取藩に実在した藩士、深尾角馬と妻と娘と角馬が大切にしている牡丹のハナシ。角馬の男気が◎

  • 日本男児の不器用さと申しますか、その典型ともいうべき深尾角馬の武士道に、乾杯☆

  • 武士の中の武士を描きたいという作者、その武士が深尾角馬、その姿は壮絶です。

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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