海 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101215242

感想・レビュー・書評

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  • 日常の中に非現実的な要素を少しだけ織り交ぜてあって
    独特な雰囲気を感じられる作品でした。
    ノスタルジックで淡いフィルターをかけたような文章が好きです。

  • お気に入りの章は
    『鳴鱗琴』 『バタフライ和文タイプ事務所』 『缶入りドロップ』 『ひよこトラック』の4章。

    どのタイトルも素敵。

    普段ボーとしてるときについつい考えたり、ひらめいたりする。でも、自分の頭から外部に出すにはためらってしまうような世界で溢れていて読んでいて心地よい。外で読むにはそわそわする。そんな短編集でした。

  • 小川洋子さんの短編集を読むのは「妊娠カレンダー」「薬指の標本」に続けて3作目。
    最近は小川さんの長編を続けて読んでいたので、箸休め的に読めるものがいいなと思って、書店で何の気なしに手に取ったこの本。
    結果として私にとってはとても大事な、何度でも読み返したい本になった。
    優しいけどどこか不穏、官能的なのにちょっと笑える、切ないのにどこまでも穏やか。
    忘れていた色んな感情を思い出させてくれる、そんな物語のアラカルト。
    今の私にはぴったりな作品だったように思う。

  • 優しい。ありそうでどこにも無い不思議な世界で、人々は誰かと会話する。一つしかない楽器を持つ義弟だったり、言葉を話せない少女だったり。いいな、夢に出てこないかな、こんな世界。個人的には「ガイド」が一番好きだった。題名屋のおじいさんに題名をつけてほしい。

  • 「ガイド」が好き。
    巻末のインタビューと解説を読んで、ああ確かに「バタフライ和文タイプ事務所」はコメディーだなあと思う。多分またあれが読みたいなあってこの本を思い出すきっかけになる一遍だった。

  • 短編5つ掌編2つ、184頁。この長さ、気負わず楽しめた。

    2006年単行本発行。もう少しで20年経つというのに古さがない。スマホはなくても違和感皆無の小川ワールド。

    一人ホテルステイのために数冊持参した中でホテルのカフェエリアで読むのに最適な一冊でした。ゆるゆるとした思考の波に漂いながら読み終えました。

    「海」
    なさそうでありそうな楽器、鳴鱗琴(メイリンキン)、欲しい。

    「風薫るウィーンの旅六日間」
    「こんな旅の同行者は嫌だ」が穏やかに描かれている…。

    「バタフライ和文タイプ事務所」
    本書の個人的No.1。タイプライターってパソコンにはない哀愁を備えているなぁ。ひんやりした感じが良い。小川さんの文字に対するこだわりも見えて面白かった。

    「銀色のかぎ針」
    「缶入りドロップ」
    どちらもほんわかした。

    「ひよこトラック」
    ひよこが積まれたトラック、虫の抜け殻、ドアマンの男と6歳の女の子。慣れ合わない2人の距離感、お互いを尊重している交流の方法はとても居心地が良さそう。

    「ガイド」
    ママの仕事を手伝う良い息子。『博士の愛した数式』を思い出しました。

    著者へのインタビュー
    「誰が書いたかなんてこともだんだん分からなくなって、最後に言葉だけが残る。」(P168)という小川さんの理想、その姿勢、潔さがたまらなく好きです。

    『ことり』や『博士の愛した数式』が好きな人にはぜひお勧めしたいです

  • 短編集形式。

    ★バタフライ和文タイプ事務所:が最高だった
    ・あとがきの後の講評を記載していた人も唸っていた内容で、タイプライターの活字を介して顔の見えない活字の管理人?職人?への慕情を伝えている表現が堪らなかった。

    ・「ことり」もそうだが、小川洋子さんの作品の中でも「言葉」や「コミュニケーション」について扱っている作品は、登場人物の会話などが少ない分、それ以外の描写がとても丁寧で、言葉の豊かさをたっぷり味わえる感じがして、読後の満足感がある。

    ・どの作品もちょっと変わったチャーミングな登場人物が出てくる。最初のヨーロッパ旅行のおばあちゃんの話も素敵。

  • よくよくブクログの積読本を眺めてみたところ、内、数冊が小川洋子さんのものであることに初めて気づき、呼ばれているような気がして初めて著者の作品を手に取りました。とても綺麗な作品で、高校生のころに夢中になったクラフト・エヴィング商会を思い出していたら、後書きで触れられていて驚きました。

    どれもよくて甲乙つけ難く思いますが、バタフライ和文タイプ事務所とひよこトラックが好みでした。

  • 最後の"ガイド"がとても好きだった。
    "銀色のかぎ針"は、最近の旅の旅程にあったところそのまま通っていて情景がよく思い浮かんだ。

  • 情景描写が綺麗な本を読みたくて、繊細な文章を書く作家、とGoogle検索してヒットした作者。さっそく本屋に行って1番初めに目について手に取った本。読んでみて、ヒット上位になるのが納得の本だった。前知識で小川洋子さんの作風は透明感や美しさがありながら、どこか不安で残酷な特徴があると聞いていて、「海」「銀色のかぎ針」は正しく幻想的で綺麗で繊細な話だった。「ひよこトラック」は不安で残酷な特徴、という部分が顕著にあった。話全体でみたら温かい気持ちになるのに、綺麗な情景描写の中に、ひよこの行方の部分や虫や蛇の抜け殻など不穏な、ザワザワした雰囲気が急に出てきて、これか…と皆が言う小川洋子ワールドを少し体感できた。その他にも「風薫るウィーンの旅六日間」「缶入りドロップ」はクスッと笑えたり、「バタフライ和文タイプ事務所」なんかは、最後の展開に思わず「えっ」と声が出たし、2、3回ページをペラペラ読み返しても最終的に官能小説に移行してて、新しいタイプのアハ体験した気持ちになった。短編集だったけど、密度の濃い大満足な本。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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