夜のピクニック (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 4005
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  • Amazon.co.jp ・本 (455ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101234175

感想・レビュー・書評

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  • 高校3年生の最後の行事で登場人物が色々な思いをもって過ごします。

    読み心地の良い本でした。
    読書初心者でも最後までスラスラ読めました。
    青春っていいなぁ、友達っていいなぁと思える本でした。
    どデカい衝撃や感動は無いけど、このゆったりした感じがこの本の味だと思います。
    読後感も良かったです。
    娘や嫁にもいつか勧めてみたいと思います!

    • まいけるさん
      はじめまして。
      私もこの高校の卒業生です。
      歩く会
      青春のほろ苦いいい思い出です。
      はじめまして。
      私もこの高校の卒業生です。
      歩く会
      青春のほろ苦いいい思い出です。
      2024/04/23
  • 第二回本屋大賞受賞作。修学旅行の代わりに行われる夜通し80kmを歩き続けるイベント「歩行祭」を舞台にした、男子高生・融と女子高生・貴子のふたりを主人公とした物語。

    二人は三年生になってから同じクラスになった。それまでお互いを避けてきたのにどうして、と困惑する二人は、実は異母兄弟なのだった。「葛藤と対立」からはじまる二日間の人間模様がどのような結末を迎えるのか、わくわくしながらずっと読み続けていられる名作でした。そして結末での「葛藤と対立」の落としどころが素晴らしかったです。しっかり活力がある作風で進んでいくのに、落としどころではさりげないくらいの柔らかさで印象的。緩急や硬軟のメリハリ、だともとることができるのではないでしょうか。

    読んでいると、きっと細かくきっちり、がっちりとしたプロットを立てて書いていったのだろうと思えるのですが、プロットに沿って書いていても文章が生きいきとしているし、アウトラインに沿うように無機的になる部分が無いところもさすがでした。単純計算すると、作家が38,9歳くらいのときに書いたものだと推測できるのですが、作家の実年齢よりも20歳も下の世代のやり取りを、脚が浮つくことなく成立させることに成功しているところは、腕っぷしあってこそでしたね。しっかり血が通っていました。

    そして、哲学や知見が登場人物たちの口から散見されるのですが、なかでも「これは!」と共感したものを引用して終わります。こういうことをなんとなく感じていたけれど、しっかり言葉にしていなかったなあというところがしっかり言葉になっていました。
    ______

    融は未完成の少女たちが苦手だった。ふわふわしていて、サッと表情が変わったり、絡みつくような目をしたり、恨めしい素振りをしたり。その青臭さが魅力であることは認めるものの、あんなふにゃふにゃしたものに手を出したら、大変な目に遭うのではないかという不安の方が大きかったのだ。(p225)
    ______

    ……僕も苦手な方ですね。ひとつこの引用に言い添えるならば、ここで語られている性質って、少女たちだけに限らず、成人を迎えた女性たちのほとんどにも失われずにある、ということです。輪郭がくっきりした大人の女性の存在のほうが珍しいような気がするのですが?

    というわけですが、さまざまな世代の人が読んでもきっと楽しめるだろう佳作なのでした。おもしろかった。

  • 著者の別作品で同じようなコメントを書いた気がするが、読者に考えさせるのが本当に上手いと感じる。その点、結構好き嫌いが分かれる気もしている。(私はかなり好きな部類)

    本作品は、大きな事件が起きるわけではなく、それほど描写も変わらない。タイトルの通り「歩く」というのが一つのキーワードなのだが、不思議と一緒にそこを歩いているような感覚を持った。

    普段、仕事やプライベートで次から次へとやることが降ってくるし、携帯やパソコンさえあれば、大して考えなくても何でもできてしまう(という錯覚に陥っている)。

    うまく言語化できないが、そんな自分を内省し、自分のため、人のために「今」という時間をちゃんと過ごそうと思った。

  • 少しの事前情報はあったものの、本当に高校生がただ一晩歩くだけだった。でもそれがいい。実際にその年齢の生徒たちがどう思うかは分からないが、大人になってから読み、追体験することで「高校生の時は何をやってもキラキラしている」「高校生だから体験できる」青春までもおすそ分けしてもらっている気持ちになる。落雁や草もちみたいに。大きな事件は起きないが、80km歩行という大きな背景に包まれて、主人公含めた生徒たちが自分たちの力で、歩行とともに自分の中の悩みを昇華させていくのもいい。一切教師が絡んでこない。
    単調であるはずの内容を、ここまで景色や感情の移り代わりをリンクさせたり時には対比させて、内面をここまで鮮やかに書けるのは、この作者の特徴だと思う。人間が好きなんだなと分かる作品だった。

  • 「夜」という特別な時間が、普段言えない本音を引き出す時がある。自分の心に素直になるというか。また本当の意味で「その人」を理解することが出来たり、そこで一生ものの友情という「絆」が生まれたり。

    大人になると、本音で話して強い絆で結ばれることって本当稀になる。この話は主人公たちがただ友人と話してるだけなのに(でも同時に歩いてもいるし、内容もなかなかですが)、謎に気持ちが高揚する時ってあったなあーと自分の学生時代を振り返り懐かしい気持ちになった。
    きっと主人公貴子と一緒にゴールした仲間(でもあの人はきっと違う)たちはこれから先も、一生を通して大事な関係を続けていくんだろうな。そんな時間をリアルに過ごせる若者?が、眩しいくらい素直に羨ましい。

    読後強烈に、学生時代の友人に会いたくなった。その人たちとしか作れない空気感とか味わいたいし、くだらない話や真剣な話、いろんな話がリアルにしたくなったよー。

  • 青春の甘酸っぱい匂いのする小説。異母兄妹の反発し合いながらも最後は和解する、というハラハラしながら一気に読んでしまった。ハッピーエンドなだけに後味が非常に良い。映画はあまり話題になった印象は無かったが、読むのは面白いが、映像になると一晩だけの出来事だけで、盛り上がりに欠けるかも知れない。

  • 全校生徒が夜通し歩き続ける。ただ歩く、それだけであるのに、最初から最後まで魅力に溢れていて物語に引きずりこまれた。

    「みんなで、夜歩く。ただそれだけのことがどうしてこんなに特別なんだろう。」

    あとから振り返ると一瞬のことが、歩いている今は永遠のように感じる。その長い長い時間だからこそ、非現実的なイベントだからこそ、共に歩く仲間といつもは話さないことを話し、普段は考えないようなことを考える。
    そして、何気ない歩いている間の一瞬の風景が、周りの友達と共に永遠に残り続ける思い出となる。大きな事件が起こるわけではないけど、感情に溢れたきらめく思い出となる。そんな高校生活のイベントを共に過ごしているかのように感じた。

    あまりにも現実味に富んだ心身の疲労に、飾らないありのままの友人との会話、歩くからこそ初めて気づく景色の描写に心地よい疲労感を感じた。
    歩行祭で成長していく青春物語。喜怒哀楽や辛さ、切なさ、幸せ。沢山の感情が詰め込まれていた。共に歩行祭を歩ききった、そんな爽やかな読後感だった。

  • まだまだ続きます、新潮文庫の100冊。
    キュンタコンプリートできて幸せです。笑
    1枚だけスマホに飾ってます。笑

    今更ですが、本屋大賞に絶大な信頼をおいている私です。
    お盆の連休の夜にこの一冊を読みたい!と購入しました。

    年に一度、北高では「歩行祭」が行われる。
    それは夜通し80キロを歩くというイベント。
    楽しみにしている人も、
    何かを決心するきっかけにする人も、
    思い出になるように楽しむ人もいる。

    貴子と融(とおる)は、周りの友人たちから「付き合っている」「好きでしょ」と言われる。
    だけど二人は話したこともないし、
    融から憎まれているような目で睨まれる。
    好かれているなんて絶対にない。
    きっとこのまま接点もなく卒業していく。

    だけど。

    だけど、歩行祭の力を借りて。

    お祭りとしての高揚感、
    ゴールまでたどり着けるか不安に思い、
    非日常の緊張感、
    体力も気力も極限まで疲労し、
    特別な空気が漂うこの歩行祭の時に。

    貴子はずっと秘めていた気持ちに対して賭けに出ます。

    わたくし事ですが、
    高校生の時のマラソン大会が苦手でした。
    全くランナーズハイにもならないし、
    何で走ってるのか意味がわからず泣きたくなったり。苦笑
    同じように文化祭や体育祭も苦手でした。
    みんなでお祭り!イベント!楽しむ!みたいな同調空気についていくのに必死でした。
    部活に入っていた私は、ある程度免除されてましたが。

    今思えばそんな風に思わず、普通に楽しめば良かったのになあ、と。
    本書を読めば少しだけ追体験のように、自分の気持ちも広がるかなあと思い、読み進めました。

    きっと翌日からは、また日常が続いていくけれど、
    歩行祭の前とは決定的に違う。
    ああ、なんか素敵だなあと思いました。
    景色を見ながら、友達とただただ歩く。
    今なら言えなかったことも言えるかもしれない。
    そんな空気。

    個人的には「蜜蜂と遠雷」の方が合っていたかも。
    でも、夏の夜の読書には最適の一冊でした!

  • なんだかミーハーな感じがして食わず嫌いしていた作品。作者の出身大学に入学したのでついに手を伸ばしてみました。すごく好きでした。なんか自分まで夜のピクニックしてるみたいで。

  • 自分には遠い昔の青春小説かぁ、なんて読み進めると、いやいや感動して泣きそうになりました。
    二人とも話しができて良かったね。
    ここまで高3で考えるか?ということもあったけど、友達同士のやり取りも爽やかで、なんか気恥ずかしい感じも素敵だった。
    娘に薦めたい一冊!

    • まいけるさん
      私も読みました。私、この高校出身なのです。実際に夜のピクニックに参加したので思い出深くて・・・。夜通し歩いた後の自由歩行という名のマラソン大...
      私も読みました。私、この高校出身なのです。実際に夜のピクニックに参加したので思い出深くて・・・。夜通し歩いた後の自由歩行という名のマラソン大会、きつかったです。笑
      2021/09/25
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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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