一瞬の夏 (下) (新潮文庫)

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著者 : 沢木耕太郎
  • 新潮社 (1984年5月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101235035

一瞬の夏 (下) (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • ノンフィクションというのだから、小説とは違い、かなりの部分が事実というところか。
    正直なところ、長すぎる作品だが、読後感は良い。

  • 再起第一戦を勝利で飾り、続く第二戦にもKO勝ちをおさめた
    カシアス内藤。そして、次に狙うは東洋ミドル級チャンピオンで
    ある柳済斗との試合だ。

    それは、内藤が望んだ「オトシマエ」だった。「クレイになれな
    かった男」で敗れた相手ともう一度闘いたい。その思いが、
    内藤をトレーニングに駆り立てた。

    しかし、事は順調には運ばない。韓国のプロモーターとの
    交渉、契約に際しての駆け引き。ルポライターであるはず
    の著者は、いつの間にか内藤の為に、試合のマッチメイク
    に奔走する。

    度重なる試合の延期と、難航する契約。その中で、1年を
    かけて作り上げて来た内藤の肉体と生活に変化が現れ、
    同じ夢に向かって走っていたはずの人々の間には徐々に
    亀裂が入って行く。

    1979年8月22日、韓国・ソウル。この日の為に疾走して来た。
    運命の日。分かっていて、読めなかった。最後の50ページ
    弱が、どうしても読めなくて丸1日、本を開くことが出来な
    かった。

    小説なら大団円で終わっているのだろう。だが、これは現実
    に起こった話だ。夢は、ソウルの夏の夜にあっけなく散った。

    「リングに上がって……初めて、足が震えなかったのに……
    生まれて初めて、怖くなかったのに……」

    生来の気の優しさから臆病とも評されることもあった内藤が、
    持てる力を掛けた時は終わった。

    そこへ辿り着くまでには、同じ時に、同じ夢に向かって、走り
    続けた男たちがいた。

    物悲しい結末だが、最終章の「リア」で救われる。一瞬の夏
    に、夢は終わった。だが、夢の終わりから、また違う夢が
    始まるのだ。

  • 実在したボクサー カシアス内藤の現役復帰を描いたノンフィクション。この作品を読んでボクシングの興業に少し興味がわいた。機会があったら生で観戦してみたい。

  • ついに生活が逼迫し、仕事を始めてしまう。
    そして練習時間が取れなくなり、体に肉が付く。
    万全では無い状態でリングに上がらざるを得なくなる。
    そして敗北。
    ボクシングとは本当に厳しい世界だと思う。
    実力だけではなく、お金、周りの人の協力、特にひいきにしてくれる力のある人物などが、この世界で成功するためには必要なのだ。

  • ボクサー、カシアス内藤の復活にまつわる人間ドラマ。一度破れた、韓国のボクサー柳に対戦を申し込み、リベンジに挑戦する。

    上巻とかなり話が変わってくる下巻。というのも、作者自身が試合のマッチングやそのための金策をする話が多く、そこでスポーツに関係のない、人間の嫌な部分が、これでもかというくらいに描かれる。

    不謹慎ながら、そこが一番面白かったのは、冷静な筆致ながら、かなり感情が顕になっていたからであろう。

    試合結果は結局ダメで、ダメなりのハッピーエンドというのは予想していたが、グーッと上下2巻で引っ張って、割とあっさりなのは、個人的には好感を持った。こういう作品だと、試合こそ全て、という具合に、パンチ一つ一つを事細かに描く物が多いわけで、その点、この本は異質なのではないかと思う。

    最終的に、何も背景を知らずに、小説として読んでも、そこそこ面白いという1冊だが、ちょっとボリュームが有るのが難点か。

  • 纏わりつくような粘度の高い人間ドラマ。次から次に起こる問題はノンフィクションを疑わせるほどだが、そこにある結末は残酷であり一抹の希望を感じさせるものである。

    決意と現実に揺れる内藤、柳戦をマッチメイクするためのハードな交渉を担う沢木、内藤とエディとの強い信頼関係の裏にある極度に脆い緊張状態。すべては何のための闘いなのか。そこ先に何があるのか。目指した「いつか」は見つかったのか。

    読む人にとっては内藤たちの格闘は大いなる敗北に映るかもしれない。朴戦に至るまでの1年の行跡は無駄足に映るかもしれない。しかし理亜ちゃんを膝の上に乗せて思い出した沢木氏の本心と、理亜ちゃんの笑顔は、不要なことはない偶然と必然と積み重ねを感じさせる。

  • 人生の中で凝縮された時間

    「優しさ」はボクサーにとってはマイナス

    人生にとっては必要なことかも・・・

    最終章のリアでなんか救われた・・・

  • カシアス内藤という実在するボクサーの再起を描いたノンフィクションの後編。

    ノンフィクションというだけあって、純然たる創作よりも都合良く話はすすまない。王道的な物語展開を期待しているならこの作品は読まない方がいいと思う。筆者自身が、ボクサーとしての正しいあり方を最後の最後になってひっくり返したところは、私的にポイント高かった。それとやはり某隣国汚い。汚いなさすが某隣国汚い。

  • 大のボクシングファンなので期待して読んだが、期待に応える内容だった。ボクサーの生活や試合を興業として行うまでの過程のリアリティーが素晴らしい。そしてすべてが終わった後の締めくくり方も秀逸で本当に引き込まれた。

  • 不完全な大人の夢物語。沢木さんは自分の話の中だと、胸ぐらを掴もうとはするけどそれ以上にはいつもならない。ナルシストなヘタレなのかな

  • 沢木と内藤の友情に胸を打たれる。全体的に物哀しい雰囲気の話だった。そこがいいんだけど

  • 実在のボクサーと著者自身の話。
    終始じっとりした部屋にいるような肌触りが文章が伝わってくる。
    ちょっともやもや感が残ったなあ。
    ノンフィクションて何を求めて読めばよいのか、難しい。
    よくある、いちボクサーの話じゃないか、と言われればそれまでかもしれない。

  • 自分から巻き込まれにいく。当事者になって内側から見えたものを書いていく。そんな方法もあるんだと知りました

  • 東洋チャンプにまでなったあと
    ずるずると姿を消したボクサー「カシアス内藤」

    その復帰への道筋を、描いた作品

    内藤に惚れ込み、すべてを共に歩んだ作者の文章だけに
    内容が迫ってきます

    夢と現実、努力と失意、挫折・・・

    それでもボクサーって
    戦うことをやめられないんだね・・・

  • ノンフィクションということもあり、沢木作品ということもあり、やはりと言うべきか読後感にカタルシスはなくある意味消化不良満載だが、それこそが人生というものだろう。
    絶えず選択を迫られ、それにつき自問自答を繰り返す。
    「勝たなければ」と思う時もあれば、それだけではないと思い返す。
    濃密に普遍的な人生を描き出しているこの作品に爽快感など求めてはいかんでしょうな。

  • とにかく暗い。
    題材としてのボクシングが・・・というより、ボクサーの日常が暗い。何かこと(特に些細なこと)が起こったときの、沢木耕太郎の捉え方が暗い。毎度毎度中途半端に肯定するところがさらに暗さを増している。ストーリーも暗い。最後まで暗い。もちろん結果も暗い。
    もっと気持ちの持ちようで変わる気がする。打開できたんじゃないの?と思わずにはいられない。

  • 人と人とが、思いを伝え合うのは、言葉だけによらない。その言葉を発したときの表情、声の調子、身振り手振り、間合いの取り方、そして、話し手たちの周囲の状況、過去の経緯、そういうものがすべてないまぜになる。どう伝わるかは相手にどんな感性があるかにもよる。だから、本当に伝えられるかどうかは、わからない。そういうやり取りの様を見事に言語化する筆者である。

    自分に伝わったこと:
    自らの幻想に支えられて現実逃避せず、現実に目を向け地に足をつけて歩む。そんな覚悟が必要なときがある。

  • あぁ、こんなもんか
    のほうで終わったね。

    でも、ノンフィクションだからなのかな、熱はすごい伝わってきた。
    燃え上がるわかりやすいものではなくて、あつくなってるときも、冷えていってしまうときも、リアルな温度を常にもってた。
    自分で見たものしか書かないとあとがきに書いてあったけど、だからなのかもしんない。

  • 【No.58】最後の終わり方が残念。沢木さんの行動力がすごすぎる。個人的にはカシアス内藤の生き方には共感できなかった。「すべての努力が空しいものとなったことを知ったとき、不意に自分の内部がからっぽになってしまったような空虚さを覚えた」「僅かな金で、人の心は離れたり近づいたりする」「親切を押しつけがましく誇示することがない。言葉は少なくとも、その心遣いの優しさは充分に理解できた」「ある時期、ある目的のために、共に力を尽くして生き切ったあとで、まだダラダラと結びついているというのは気持ち悪かった。すべてが終わった以上、あとはそれぞれの道を歩いていけばいい。必要ならば、偶然という名の必然が、また互いに二人を呼び寄せてくれるだろう」

  • 血沸き肉躍る話。

    これを読んだのは大学生のころだったと思う。
    いま改めて読み直して、自分が当時のカシアス内藤と沢木耕太郎の年齢にあることを知った。
    なんとなく沢木耕太郎が読み直したくて手にしたのだけれど、そのことに気づくと、呼ばれたような気がした。

    自分が何者にもなれていなくって、何かをしなければという焦燥感に駆られる。そいうのって、この年代にはつきものなのかなとも思う。
    そして、そのタイミングで、夏が訪れた、夏を作り出せた彼らは幸せなのだと思える。

    ひとつの目標に向かってみんながまとまっていく姿、現実の生活というものを目の前にして、亀裂が生じ、誰もがそのことに気付きながら、翻弄され崩壊していく様、そのすべてがノンフィクションで、だからこそ美しい物語だった。

    当事者だからこその葛藤と、傍観者だからこその諦念。
    沢木さんの傍観者としての線引きは、ある面で正しく、だからこそもどかしい。

  • 初めて読んだノンフィクション。そして何度も読んだ。ここまで他人に関わりのめり込める作者がうらやましい。そりゃ旅にも出たくなるさ。

  • ボクシング好きなら一気に読むと思う。
    自分はそうでした。

  • 「やはり、それでも勝たなければならないのだ…。」

    再起を賭ける天才ボクサー・元東洋ミドル級王者カシアス内藤と、彼の夢に関わる人々の力強くも儚い物語。熱いタイトルが秀逸すぎの、沢木耕太郎による私ノンフィクション作品。

    カシアス内藤の内面から発せられる言葉の数々には、正直心打たれます。その分、最終話に向かって徐々に崩壊していくそれぞれの想いと繋がりは、読んでいて辛い。自分の生きかたに躓きかけたとき、再読すべき本のひとつだと僕は思います。

  • 沢木耕太郎が、元々は取材相手であるカシアス内藤と仕事抜きでここまで深く付き合い、私財を投じてマッチメイクまでしたことに驚かされる。しかしそれ以上に、今でもその二人にカメラマンの内藤利朗を加えた三人の友情が続いており、それによってジムが設立され、当時の写真集まで出版されるという人のつながりに驚かされた。その写真集「カシアス」も早速購入したが、それが少しでも「E&J カシアス・ボクシングジム」の運営資金の足しになればと思う。2007/10/21読了

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