旅する力―深夜特急ノート (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101235189

感想・レビュー・書評

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  • 私も旅が好きで、沢木さんの言葉にいくつも共感したり、気づかされたりしました。

    〜〜
    旅で目にする風景の中には、不意に私たちの内部が見えることがある。
    ものごとが美しいとかロマンチックだとかに見えるのは、自分自身の中に、美しさやロマンスがあるときにかぎるのだ。
    目で見ているは、実は自分の頭の中を見ているのだ。
    〜〜

    〜〜
    旅にはその旅にふさわしい年齢がある。いまではどこに行っても、どんな旅をしても感動や興奮が少ない。
    年齢や経験が感動や興奮を奪ってしまった。
    〜〜

    ↑これはすごくわかります。旅に限らず、例えば音楽や映画でも同じ感覚になります。
    二十代のころに出会ったからこそ、吸収する力が多く、感動できたのだと。
    そして、十代、二十代の経験や出会いは、その後の人生に大きく影響を与えます。


    「恐れずに、しかし、気を付けて」

  • 旅に出る前、特に一人旅をする計画を立てていると最初は行きたくてしょうがない気持ちでいるが、少し時間が経つと行きたいのか行きたくないのかわからない気持ちになる。
    しかし、沢木さんも旅に出る前はこのような行きたくないような気持ちになるということを知ってなぜか少し安心した。しかし、旅に出てしまえば楽しい。
    自分は沢木さんのようなハードな旅ができるような人間ではないのでしようとは思わないが、旅を通じて面白い人間になっていきたいと思った。

  • 別の雑誌で沢木耕太郎さんの特集があり、久々に沢木さんの作品を読みたいと思った。深夜特急は全6冊読み、本棚にあるが、この旅する力で再び読みたくなった。

  • 深夜特急の裏話的な内容ではあるが、旅についての深い考察にとても興味深く読んだ。深夜特急も本書も、読者は旅行への凄まじい渇望と共に旅行している気持ちになれると思う。
    特に印象に残るのは、20代の感受性だからこそ出来る旅の下りで、とても納得した。話は違うが、若いときに観た映画はとても面白く感じて繰り返し観たくなるが、感受性よ鈍くなった今、そう思える映画には出会えない。同様に作者が食についても語っているが全く同感でした。いつかは活きた旅に出掛けたいという夢を持ち続けるだけでも、例えそれが実現しなくともよい読書体験として心に残ると感じました。

  •  深夜特急では語られなかった裏側や、旅に出ることになった経緯やそれまでの沢木さんの人生が語られていて、とても興味深かった。旅をしてから随分年月が経ってから文章化されたのだが、沢木さんの旅はきっといつの時代も決して古くはならないのだろう。その時の、そこに生きる人たちとの日常的な係わり方が、読む私たちに感動を与え、新鮮な空気を感じさせ、旅立ちたいという欲求を起こさせるのかもしれない。

  • 以前旅行好きだという、女優菅野美穂さんが紹介されていて、読んでみました!
    若い頃、ちょうど留学中に、休みを利用して、バックパックで短期の一人旅をした時期がありました。
    旅する国には、ふさわしい年齢があると、書いてありました、が、確かに…今の年齢で、昔と同じ様に同じ場所を歩いたら、どんな風に、景色が見えるんだろう…と、ふと、考えてしまいました。

  • 深夜特急は読んだことなかったけど、総じてよかった。旅を愛する自分にとって、わかることが多い。そしてその作品が多くのひとぼ旅人に変えていることに感動した。

    --

    "旅人は途上にあること"

    「できるだけ素のままの自分を異国に放ちたい」わかるなぁ。ガイドブックを持たないことの意味。わかる。うまくやれないことも、それもまた学びになるしいい経験になるよね。

    「わかっていることは、わからないということだけ。」無知の知やねぇ

    "旅から帰って、友人や知人から頻繁に訊ねられたのは、どこの国のどの街がらいちばん良かったかという質問だった。はじめのうちは真剣に考え、考えれば考えるほどわからなくなってしまったが、やがてさほど生真面目に対応する必要のないことに気がついた。"

    "それが外国に長いこと行っていた者への、儀礼的な、一種のあいさつがわりの質問だということがわかってきたのだ。" わかるなあ

    "重要なのはアクションではなくリアクションだというのは、紀行文でも同じなのではないだろうか。どんなに珍しい旅をしようと、そこ珍しさに頼っているような紀行文はあまり面白くない。" 最高

    "大事なのは「移動」によって巻き起こる「風」なのだ。いや、もっと正確に言えば、その「風」を受けて、自分の頬が感じる冷たさや暖かさを描くことなのだ。」マジわかる

    "金がなければないほど良く見えるという側面もある。出来ることなら若いうちは、なければないほど見えるという旅をしたほうがいいと思います。" わかりがすぎるのよ

    "too late"

    "二十台を適齢期とする旅は、やはり二十台でしかできないのだ。" "だからこそ、その年代にふさわしい旅はその年代のときにしておいた方がいいと思うのだ。"

    "私のバックパックにつけられていた根根付けが消えているのに気がついた。子供たちの誰かが盗んでしまったのだ。それは私のガールフレンドが出発前にプレゼントしてくれたものだった。私は大いに落胆し、彼女に手紙を書いた。しかし、日本に帰ってから、彼女に笑われてしまった。"

    "まるで、この世が終わったかのような残念がりようだったけれど、それはその子供たちの一種の親愛の情の発露だったのではないのかしら、と。"

    たぶん、僕と僕の彼女も同じような感じなんだろうな、と思った。

    「恐れずに」「しかし、気をつけて」

    "私が旅という学校で学んだのは、確かに自分は無力だということだった。しかし、それは、新たな旅をしようという意欲を奪うものにはならなかったのだ。"

  • 『深夜特急』を一気に読みすすめたのは、社会人になって1年半が経った頃だった。
    深夜特急は「バックパッカーのバイブル」と評され、多くの学生バックパッカーに読まれていた。そのことは、私が学生にみた、なにかのウェブサイトで知っていた。当時の私は留学とひとり旅に強い憧れを抱いていた。
    しかし、そのときは何故か、明確な理由もなく、これは読まない、と決めていた。
    あるいはそれは、あえて読まない、という反骨心のようなものだったかもしれない。

    そして、深夜特急を読まないまま、学生時代の私はフランス南部からスペイン最西端まで900キロの道のりを踏破した。ひとり旅の楽しさに取り憑かれた私はその後、中欧の国々に赴き、そして南米を旅した。

    帰国後、アルバイト先で出会った筋金入りの社会人バックパッカーの女性にプレゼントされたのが、沢木耕太郎の『イルカと墜落』だった。
    しかし、その時も何となしに読む気にはなれず、書棚に仕舞われたままだった。

    外国での日々を忘れられないまま社会人になり一年が経った頃、新型コロナウイルスという感染症が世界中でパンデミックを引き起こした。
    私の勤めていた会社は直接的に大打撃を受け、2ヶ月間の休業が決まった。
    またいつか外国へ行きたい、と思いながら、あるいは外国に行くために仕事を辞めたいと思いながらもだらだらと社会人を続けていた私は、仕事も、外国へ行くことの出来る世界をも失った。

    私が旅に行けないなら、本で旅に行こうと思い手にしたのが『イルカの墜落』であり、『深夜特急』だった。社会人になり、いつの間にか自分自身は何かに縛られているように感じていた私は、活字の上で自由に旅する沢木耕太郎にある種のヒロイズムを感じた。

    その3ヶ月後、私はあてもなく仕事を辞め、さまざまな本を読んだ。
    その多くは、沢木耕太郎の本だった。

    別に本を多く読んでも何かが変わるわけではない。
    しかし、今回『旅する力』を読んでこれまでの読後感とは違うものを感じている。
    それは、ある種自身の経験に基づく忘れかけていた、旅する力なのかも知れない。
    この本に出会えて良かったと心から思う。


  • まず「深夜特急」のような旅を決意するに至る影響を受けた映画や本がいくつも載っていたのが興味深く、自分もそのいくつかを見たり読んだりしたいと思う。

    「アジアだと巻き込まれるように旅は始まるが、ヨーロッパだと自分が動かないと始まらない」という一節に共感した。自分も若い頃はヨーロッパへの憧れ、決めた予定を何があっても自分の力で敢行した時の達成感がたまらなくてそんな旅を繰り返していたが、最近はゆるく決めた予定はあっても、その時の流れに従って出会った人や場所や事柄に楽しみを見つけるアジア方面の放浪に完全にシフトしている。どちらがいいというわけではない、著者の言う通り、旅の仕方には適正年齢があり、もちろんそれには個人差もあるだろうし、私の場合はこの流れが自分の適正年齢に無意識的に従った形なのだと思う。

    今はほぼどんなことでも旅の出発前に調べられてしまう。それはそれでいいのかしれない。でも私は昔のように、人に道を聞きながら、時刻表を鉛筆でメモしながら、紙の地図を縦横にひっくり返したりしながら進んで行く旅が好き。楽しかった。

  • 驚いたことに、旅の価値観がほぼ自分と同じで
    共感の嵐だった。

    この本に出会う前から似た旅のスタイルを身に付けていたと思うが、果たしてどこでみつけたのか

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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