殺人者はそこにいる―逃げ切れない狂気、非情の13事件 (新潮文庫)

制作 : 「新潮45」編集部 
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101239132

感想・レビュー・書評

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  • すごく怖いです。

    特に恐怖したのが、「自殺実況テープ(音声のみのね)」の話。

    自殺する前に録音したテープが、作中に記されています。
    このテープ、プロのテープ起こし業者に、このテープを文字に起こすよう依頼したそうですが、あまりの内容に最後まで起こせなかったそうです。
    それくらい、このテープには詰まっている。
    それは文字を読むだけで、充分に伝わってくる。


    「事実は小説よりも奇なり」
    ミステリー作家の道夫氏はこの言葉を座右の銘にしているようですが、
    この本を読むと本当にそうだと思う。

    動機、手法、衝動。全てが現実で起こる。

    事実は、小説よりも怖い。

  • グロや残酷な描写が苦手な人は読まないほうがいい。

    ノンフィクションとしては良質。先入観によった決めつけや取材不足による投げっぱなしは見られない。しかし、この本の引力の源は、ライターの力量以上に、収録されている「13事件」の異様さにある。

    文字どおり「事実は小説より奇なり」な13個の事件は、報道の内容が記憶にあるような凄惨な大事件ばかり。供述調書や取材に基づき、事件の背景、犯人の人となり、被害者の生活や遺族の思いの積み重ねで浮き彫りにされる事件の全容の異様さに圧倒される。

    犯人の本性、そんな犯人を育んだ家庭の異常さ、再犯を防げない司法・警察制度の欠陥、犯罪被害者のやりきれない思い、あるいは未解決事件の不気味さ。今の安定した、安全な生活の足元に真っ暗で底なしの穴が開いているような、そんな気がする。

    なお、『「自殺実況テープ」の出してはいけない中身』はなまじっかな怪談を読むより余程背筋が寒くなる。テープ起こしを依頼された担当者は、その内容のあまりの凄惨さに、最後まで聞くことができなかったんだそうな。

  • 記憶にある事件のその後が書かれていて、とても興味深かった。
    続編も読みたい。

  • あんまりおもしろくない

  • 08.7.27

  • こういった種の本は随分読んだけれど、読み終わった後これほど心に暗雲を立ち込めさせてくれるものはなかったと思う。

    未解決事件を含む13件の事件について触れた、ドキュメンタリー。

    加害者、被害者、どちらに感情移入したとしても狂ってしまいそうだった。
    特に、葛飾「社長一家」無理心中事件の章は、読むのにかなりのパワーを要する。

    心の体力があまり無い人にはおすすめできないかな…

  • これも「新潮45」の事件レポ。他に紹介した二冊より紹介事件数が多く13ある。
    この本の記事の中で一番印象に残っているのは、間違いなく無理心中事件の自殺実況テープの記事。ヤケに淡々と語られる中盤までに対し、一気に切迫した心情が溢れだしている最後の瞬間への転化は、そこに息づかいすら感じるようで怖ろしい。

  • ■西宮「森安九段」刺殺事件
     今から9年前の事件。当時は相当大きく取り上げられていたのでは。
     著名な棋士の殺人事件は、その息子(当時中一)が最重要参考人だったらしい。
     その捜査過程で少年法による規制があった為、未解決扱いになった。
     少年は、事件が発覚したあと母親を刺して逃走しているが、わずか12〜13歳で
     親に傷を負わせる心境って・・。事件当時の感情や記憶は今も当然消えることなく
     残っているだろう。それを思うと・・頭の中が真っ暗になる。
     そんな罪って重過ぎて、持ちつづけることが、耐えることが到底不可能な気がする。

     ■井の頭公園バラバラ殺人事件
     手足と胸部は27の塊に分けられて、ゴミ箱に捨てられていた。
     すべての部分は血を一滴残らず抜かれ、20cmのサイズに切り揃えられ、
     太さも均一にされていた。
     そのサイズはゴミ箱の蓋のサイズちょうどだったという。
     その事実を読むと「作業」という言葉が浮かんでくる。
     怨恨といった感情の結果ではなく。
     この事件はいまだに全く解決の糸口が見つからないそうだ。
     何も分からないことが、周囲の残された人たちの時間を止めてしまっている。
     「とにかく真実、本当のことが知りたい」という遺族の言葉・・辛い。

     ■京都「主婦首なし」殺人事件
     ・・ここまで物証があっても釈放されるものなのか。
     元容疑者は現在夫婦円満に暮らしているらしいが、真犯人だとしたら、
     他人の首を切ったことのある人間は普通に暮らしていけるものなのかな。

     ■柴又「上智大生」殺人放火事件
     全く恨みを買う覚えのなさそうな女の子が殺され、犯人はわからない。
     分からないのは、何故犯罪に「時効」があるのかということ。
     ある一定の時間がたてばなかったことになるのは何故だ。
     21歳なんて、死んでいい年じゃない。

     (上記4事件はすべて未解決事件)

     ■熊本「お礼参り」連続殺人事件
     こういった実録もので一番読んでて憤りを感じるのは、やはり「逆恨み」による殺人
     だろう。この章で紹介されている事件は、3件ともすべて無期懲役犯が仮出獄中に
     犯した事件だ。

     まとめると、無期懲役という刑は、終身刑という概念とイコールではない。
     懲役10年を経過し、かつ行政官庁の処分によって認可が下りた場合、仮出獄が
     許可される。(実は無期刑は有期刑と同じく矯正を目的としている向きがある)
     申請の棄却率はなんと2%。殆どの無期懲役囚が簡単に仮出獄を果たし、
     その期間の再犯率は50%を超える。
     章中で例に挙げられているケースでは、無期囚が2度の仮出獄中に報復殺人を
     犯している。無期囚は簡単に出て来る事ができるのだ!

     「終身刑導入は、人間性の破壊につながるため、慎重に検討する必要がある」とは
     司法側のコメントだが、実は私はこの手の考え方にはさっぱり賛同できない。
     無期になるほどの罪を犯した人間の矯正に力を注いでどうするって言うんだろう?
     殺された人は、もうそこで永遠に時間がとまってしまっているのに、殺した人間に
     そこから先の時間を有効に、人間らしく過ごす可能性を与えるのか?
     (この点については、少年法にも同じことが言えると思うのだが。)
     日本の法律はおかしい点が多すぎると、常々思っているが、こういうものを読むとまた
     その考えを新たにしてしまう。それって全然「無期」じゃないだろう。

     にしてもこの章は、心底恐ろしかった。
     最もゾッとしたのは・・「手紙」のくだりだろうか。読んでもらえると分かると思うが。
     しかし私は根っから「ハムラビ法典」の人間みたいだ。

     ■名古屋「臨月妊婦」殺人事件
     あまりにも有名な未解決事件。凄惨な事件なので概略は省く。(詳しくはこちら参照)
     この事件で赤ん坊は生き残った。そのことだけが救いだと思う。
     赤ちゃんの深層意識に現場の情景が焼きついていないことを祈る。
     現在、ハワイで暮らすこの子は母親がいない理由を全く知らないそうだ。

     ■埼玉「富士銀行行員」顧客殺人事件
     こんな人間が罪もない老夫婦を残忍に殺害することができる・・ことが恐ろしい。
     でも誰でもその可能性は持っているんだろう。殺人を犯す可能性は万人に等しく
     あると思っている。

     ■札幌「両親」強盗殺人事件
     実の親を彼氏とともに滅多刺しにした挙句、車に積んで焼き払い、金を盗んで逃走
     って・・どんな人間だったら可能なんだ?完璧に理解の範疇を超えている。
     わからない。わからない。

     ■葛飾「社長一家」無理心中事件
     この章、タイトルは「『自殺実況テープ』の出してはいけない中身」というもの。
     そう、この章は録音時間40分にわたる自殺の実況中継テープを起こした中身を
     交えて構成されている。ぶっ続けで読んでいると・・本当にテープを実際に
     聞いているような気がしてくる。ふと、昔TVで放映されていた・・あれは・・
     そうだ、不倫相手の自宅に乗り込んで、自分でガソリンかぶって焼身自殺した女の
     声が入ったテープ(「あついーっ」という声が延々と)を聞いたときと同じ恐怖だ。

     無理心中なんて最低だ。殺された母娘はさぞかし無念だっただろう。
     生きていれば、なんとかやり直しが効くのに。

     しかし、このテープに入っていたという「ゴーッ」という轟音は・・
     一体なんだったんだろう。

     ■つくば「エリート医師」母子殺人事件
     まだ記憶に新しいこの事件、渦中の犯人がこんな男だったとは。
     女癖悪すぎるぞ。そんなディテールまで知らなかったので吃驚した。
     しかしなにが怖いって・・最後のとこで記されているある事実が・・
     殺人現場になった家には、同僚の独身男性3人が共同で住んでいる、とのこと。
     なにがあったかはそりゃ知ってるだろう・・普通住むか?

     ■札幌「社長令息」誘拐殺人事件
     これこそ記憶に新しい事件。現在(平成14年3月)から約一年前に無罪判決が
     下されたこの事件は、その判決理由が訳のわからないものだったという印象が
     あった。 なんと「殺意を立証できないから」という理由。なんだそれは?
     被害者を死に至らしめた経過は殆ど認められているのに、時効の問題が絡んできた
     ためこんな結果になったらしい。
     なんというか・・・納得できない事件という印象ばかりが強く。

     ■世田谷「青学大生」殺人事件
     こんなアホなカップルがターゲットにした人間の、たまたま隣に住んでいたというだけで
     殺された被害者は死んでも死にきれなかっただろう。
     もうなんともいえない・・。
     漫画のハッピーピープルを思い出した。

     ■広島「タクシー運転手」連続四人殺人事件
     「自分の人生は本当はこんなはずじゃなかった・・」と思いつづけ生活することは、
     本来自分が理想とする姿に近づけたかもしれない可能性を遠ざけ続ける。
     その輪にはまると一生ぐるぐる回ったまま、元のところには戻れなくなる。



     人を殺す、殺される事象というのは本当に簡単に、日常の中に存在し得るものだ。

  • 平成15.7.15 1刷 476
    屠られた者たちは、その刹那、眼前に何を見たのか。あの殺人鬼たちはどこへ消えたのか……。市民という仮面の下で、人間の業深き本性が嗤う。男と女の痴情殺人から、自壊していく家族の惨劇、どす黒い邪欲に溺れた鬼畜の凶行、さらに、ほくそ笑む凶徒の姿が見え隠れする未解決事件――。隣人が羅刹と化す恐怖、突然襲う不条理。「新潮45」誌上で大反響を呼んだ、傑作ノンフィクション集。

  • 平成の事件にあまり詳しくなかったので、多くの知識が得られた。
    何よりも興味深かったのは『自殺テープの中身』。
    人の死に際とは、こんなものなのだろうか。
    それから、『井の頭公園バラバラ殺人事件』。
    そろそろ時効なので、早期解決を望む。

    他のシリーズもあるようなので、是非読んでみたい。

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