残穢(ざんえ) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101240299

感想・レビュー・書評

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  • 怪異が起こるというマンションを調査する過程で、平成から昭和、大正、明治へと時代を遡っていき、根源と思われる事象を突き止める。
    事件で残った「穢れ」が怪異となり、土地、建物、人を通して伝播していき、今もそれは続く(と思われる)。
    昔、私自身が以前住んでいたマンションで体験したことに似た体験が、後に読んだ「新・耳・袋」に収録されていて驚いたことがある。
    だからなのか、そういうこともあるかもなぁという感じで本書を読んだので、それほど恐怖は感じなかった。
    怪異の原因となる事象、その事象は怪異が影響、そしてまたその怪異の原因となる事象という風に遡っていく過程はとても興味深かった。
    フィクションかノンフィクションかは作者は明言していないとのこと。そういう意味でも興味深い。
    (なにしろ怪談作家が実名で登場する)

  • 最近ではワケあり物件というものに一定の需要があるそうだ。
    事件事故で人が亡くなったり、近くに迷惑施設があったりするものをいうらしい。
    過去にそこで人が亡くなっていても気にしない、という人なら、かなり安く済むそうだから、良い物件なのかもしれない。
    そもそも、この狭い国土の中で、人が亡くなっていない場所などあるのかという疑問もあることだし、恐れることはないのかもしれない。
    私はさすがに前の住人がそこで亡くなっていたとしたらあまりいい気持ちにはなれないので、できるだけ避けたいと思っている。
    ま、寿命なら仕方ないよね!なんて努めて明るく書きたいのだが、その理由はある文章があまりにも恐ろしかった反動だ。
    食器を洗っていて、ふとステンレスの蛇口に目を向けると、人が映っている。
    それだけでも不気味なのに、高さがおかしい。
    人がぶら下がっているような高さだった、という内容なのだが、それがあまりに怖くて、今もぞくりとしながら書いているというわけだ。
    もう、食器洗えないよ!!!!!

    今は真昼なのに、騒がしい子供がいてくれないとこんなに後ろが恐ろしいとは。
    この文章は今後読み返したくない。
    せっかく忘れかけていたのに!!!書いたことで思い出してしまった!!!!

    本書の恐ろしいところは、穢れが感染するということ。
    見えないけれど感じる何かの存在、誰も逃れられない死の恐怖。
    しかし、そんな怖がりの私でも怖くないものがあった。
    それは赤ん坊の泣き声と、飛び出てくる赤ん坊の姿を描いた場面。
    ずっと昔は赤ん坊の泣き声が怖くて仕方がなかったが、今はそうではなくなっていた。
    このことに自分でも驚いた。
    泣いているならこっちにおいで、という気持ちになったのだ。
    もしかしたら赤ん坊の幽霊は私を引き込んでしまうかもしれないけれど哀れでならなかった。
    私は決して模範的な、立派な母親ではないけれど、泣いていたら抱き上げてあげたいと思った。
    本物の泣き声にはうんざりするのに、これは一体なぜだろう?

    どこまで本当でどこからが虚構なのか?
    こんなの作り話でしょ、と一笑に付すのは勝手だが、恐れと哀れを感じることが人の思念を昇華させるのではないだろうか。
    現実とは、人の心が作った摩訶不思議なものだから。

  • 怖かった…。

    本当に怖いのに、圧倒的な文章力に引き込まれてしまう。
    引き込まれて、読み進めずにはいられない。
    のだけれど、さすがに部屋では読む気になれず外出している時間で読み切った。

    呪い、でも
    祟り、でもなく、
    穢れを持ってくるあたり。

    どんな超常現象も、まずは理論的に解明しようとする語り口。
    だからこそ、否定しきれなくなったときの怖さが際立つ。

    理不尽でどうしようもない。

  • 文庫化による再読。やっぱり、怖い。最初に単行本で読んだ当時、それぞれの土地の移り変わりが把握できず(人の名前を覚えるのが苦手で…)図面と年表のようなものを作ったけど、今回もやっぱり覚えられず、何度も前後を行き来。
    ホラー描写が流石。ショッキングな、幽霊バーン!!という物は少ないのに、背中がぞくぞくする、身体が冷たくなるような怖さ。現実的に進んでいく謎解きや、作者自身の実体験がどこまでリアルに反映されているのか分からない現実と創作の境目を考えるのも楽しい(悪霊シリーズ大好きです)
    やっぱりこの本は、鬼談百景と同時進行で読むシリーズで、違う出版社からでも同時に発売された事は素晴らしいと思う。
    あと、個人的には平山夢明さんが好きなので、実名で登場されるのが大変嬉しかった。この描写がまた、格好いい。

  • ドキュメンタリー・タッチなのがリアルで怖い。

  • 小野不由美さんの小説、初めて読んだので記念すべく
    デビュー作(笑)

    ホラー系は苦手なのに(夜中思い出して、トイレに行けない人間なので;;;)何故かこの本のあらすじに惹かれて、購入。

    途中まではひたすら、怖かった。でも、そこから先は謎解きみたいな展開になっていったので、怖いけれど読まずにはいられなかった。

    ある1つの怪現象から端を発して、それが"穢れ"と発覚。原因を突き詰めていく内にどんどんと拡大し、えらいスケールのでっかい話になってしまった。
    しかもその土地や物件についた穢れなのだから、どうしようもないー。だって、自分の身近な人の家に遊びに行って知らない間に、その穢れを持って帰ってるかもしれない。なんて考えたら怖い。怖すぎる。
    これ書いてる今も背中が、ゾッとしている。

    ただし、話は過去へ過去へと遡っていく為、現住民の前に誰それが住んでいて、その前は誰それで〜と繋がっていくので登場人物が多くゴチャゴチャしてくるのでその辺は要注意。

  • ずっと怖い、夜ひとりで読めなかった。
    昼間に読もう、昼間に。うんうん。

  • 映画版がビビる程、恐かったので期待して読んだけど全然、恐くなくて途中で飽きてきて読了するのに、苦労した。

  • 事実の羅列、ドキュメンタリーみたいだった。
    前に住んでいた人の祟りで呪われるみたいな話はよくあるが、あまりにも荒唐無稽すぎて怖さを感じることは無かった。(ていうかウチは新築だし)
    だがこの本は、全世界どの地域の人が読んでも、恐怖を感じるであろう上手い設定で、とにかくこれ以上読んでいると自分も呪われそうだった。それでも調査の内容は早く読みたくて、ページを進めるか進めまいか迷いながら日々読んでいた

  • ちょっとした民俗学的うんちくも語られ
    時系列的に遡って謎解きのような段階を踏み
    なかなか面白かったですよ
    前半の遅々とした進展に飽きが来そうになったり
    いかにも怪談噺的な怖さがなかったりしたところが
    不満点かな
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    この家は、どこか可怪(おか)しい。転居したばかりの部屋で、何かが畳を擦る音が聞こえ、背後には気配が……。だから、人が居着かないのか。何の変哲もないマンションで起きる怪異現象を調べるうち、ある因縁が浮かび上がる。かつて、ここでむかえた最期とは。怨みを伴う死は「穢(けが)れ」となり、感染は拡大するというのだが──山本周五郎賞受賞、戦慄の傑作ドキュメンタリー・ホラー長編!

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著者プロフィール

大分県出身。講談社X文庫ティーンズハートでデビュー。代表作に『悪霊シリーズ』 『十二国記シリーズ』『東亰異問』『屍鬼』など。重厚な世界観、繊細な人物描写、 怒濤の展開のホラー・ミステリー作品で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『悪夢の棲む家 ゴーストハント(1)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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