東の海神(わだつみ) 西の滄海 十二国記 3 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101240558

感想・レビュー・書評

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  • このシリーズ全般に言えることだが、物語後半のカタルシスがすごい。有能だけど己の過ちを隠しに隠す斡由、出鱈目だけど一本筋が通った尚隆。なんかこれって現代の日本でもこれに当てはまる例はありそうだなぁ。

  • さーて、前作とどう繋がってくるのかなーと思いきや、さらに拡大。まだ繋がらないんかーい。とツッコミを入れたくなるもののこういう下準備は大事。しかもその下準備が面白いからまた良い。

    今回は雁国のお話。尚隆が延王になるまでの経緯と延王になってからのお話と過去と現在を行ったり来たりしながら進んでいく。

    過去編では雁の麒麟、延麒である六太の視点から六太の生い立ちや尚隆との出会い、人物が描かれる。

    現在編では延王、尚隆が、会議には出席しない、気づけば王宮から抜け出している、超呑気者な性格で家臣からも呆れられるほどの人物だと描写。こんなんが王様で大丈夫か?と思いたくなるような延王。彼が荒れた雁国を立て直している最中に延麒、六太が攫われてしまう。斡由なる人物が州の窮状を直訴するためにこれを命令したのであった。一気に高まる緊張、争いの予感...。
    散々な人物描写をされた延王であるがこの危機、いかにして乗り越えるか。そして王の器を見せる事ができるのか。

    どんどんこの世界観にハマっていきます。キャラクターの魅力にも。ネタバレできないけど延王かっこいいー!ってなる。色んな思惑が絡む政治の世界でうまく立ち回るの難しいだろうなー、そして国を治めるってほんと大変だなって思う。賢さも器の大きさも度量のでかさも強かさも必要...。

    自作こそは色々繋がってくるかな!?

  • 十二国の一つである雁を統治する、延王と延麒のお話。
    小野不由美がイメージしているのであろう王という存在の一つの形が、2人の出会いと、様々な戦いを通して描かれる。
    細々とした政務を放り出し、街で好き放題やっている王を果たして王と呼んでよいのか。上に立つものは常に民の事を考え、粛々と物事に向き合い、国に奉仕するべきではないのか。そう訴える高官と、その一方で、雑務をこなすよりも、実際に民が暮らす街を歩き、その空気を感じたいと主張する延王の考えは交わる事なく、民は水害の危機に怯えたまま、徒らに日々は過ぎる。
    もし日本に王がいたとしたら、どちらの姿勢も正しいのではと感じる。この国に住む人々は誰もが国の事を想っていて、考え方は違っても、その根っこにあるものは同じだと思えるからだ。
    私達の生活にも言える事だが、理解し合えない関係性には、圧倒的に会話が足りない。それが難しい関係性もあるのだろうが、それ故に起こした行動から相手に伝わるメッセージは、大抵良い結果を生み出さない事も私達は知っている。でも、そうせずにはいられない。そして、そこにとても人間らしさを感じてしまうのだ。
    そういった意味で、王や麒麟、高官や民、皆が皆とても人間らしく、共感しやすい。人々のすれ違う様子に、もどかしさも感じつつ、なんとなく自分達の日常にも重ね合わせてしまうような良い作品だった。

  • 十二国記の中で非常に重要な役割を持つ麒麟、その誘拐から始まる国王への謀反とそれに対し王である尚隆はどのように対応するのか、を描いた十二国記シリーズ三作目。

    冒頭の妖魔を操ることのできる少年と麒麟の六太の出会いは、ファンタジーの世界観らしい雰囲気でわくわくしました。
    ただやはりこのシリーズはファンタジーらしくないな、と思いました(笑)
    というのも六太誘拐以後、話は国とは、王の存在意義とは、という話に移っていくからです。尚隆は臣下たちからも呆れられる自由奔放さ、それに対し謀反を起こした斡由は臣下たちからも評判が良い様子で、そしてこの事件を通し二人の姿の対比がくっきり浮かび上がってくるのです。これがとても読ませます!

    個人的に印象深いのは彼らに使える臣たちや国の民の姿。尚隆の治める雁国は先王の圧政のせいで生活は苦しく、国王軍と反乱軍の戦いについていろいろ思うわけです。そこで民たちが国王軍に加勢するかどうか、という決断を下さなければいけないときどうするか、この本の中ではあっという間に終わってしまう一場面なのですが、改めて戦いのむなしさを感じました。

    読んでいて非常に気持ちのいいラスト!作戦がぴたりとハマるのも爽快ですし、なによりこの国はきっと素晴らしい国になるんだろうな、と思わせてくれました。

  • おもしろい!!自分にとってど真ん中の作品
    こういうのが好きなのかって気づくことが出来ました


    尚隆と六太の出会いの物語
    国とは?王とは?と骨太のストーリーで、細部の設定は緻密
    ひとの奥に部分を繊細に描いてる

    天帝が麒麟を遣わし、王を選び玉座に据える。だからといって十二ある国すべてが安寧というわけではない

    大国・雁もかつては荒れ果て、民は新王の誕生を待ち続けていた

    • 松子さん
      風が吹くようにさん、はじめまして(^^)
      フォローありがとうございます。
      このシリーズ先日読み終わったばかりで
      興味津々で風の吹くようにさん...
      風が吹くようにさん、はじめまして(^^)
      フォローありがとうございます。
      このシリーズ先日読み終わったばかりで
      興味津々で風の吹くようにさんのレビューを
      読んでいました♪
      フォローしあえて嬉しいです。
      どうぞ宜しくお願いします(^^)
      2022/11/27
    • 風が吹くようにさん
      松子さん 宜しくお願いします(^^)

      まだまだ先は長いので、松子さんは大先輩になります!読み終える毎に感想を伺いに行かせていただきます。
      松子さん 宜しくお願いします(^^)

      まだまだ先は長いので、松子さんは大先輩になります!読み終える毎に感想を伺いに行かせていただきます。
      2022/11/27
    • 松子さん
      風が吹くようにさん、
      そうなんです!このシリーズ長くて壮大なんです
      でも、どのエピソードも面白くてハズレ無しなんです☆
      先は長いのでどうぞゆ...
      風が吹くようにさん、
      そうなんです!このシリーズ長くて壮大なんです
      でも、どのエピソードも面白くてハズレ無しなんです☆
      先は長いのでどうぞゆったり楽しんで下さい。
      レビュー楽しみにしてます(^^)
      2022/11/27
  • 好きだわ、この手の話。興国記というでも言うのか、国を作り治める話。そういえば、「アルスラーン戦記」(そういや今どうなっている?)とか「マヴァール年代記」、「黄金の王白銀の王」や「瞳の中の大河」とかと系列的には一緒か。読みながら帝王学が学べます、的な。いずれも個人的に好きなお話。

    国を興す困難さ、組織の在り方、トレードオフの選択、何を助けて何を捨てる、全部は手に入らない時の最善策とは、なんてのは中間管理職的なところにいるオッサンには身につまされるような。心の奥底で王に憧れているのかなあ。

    とにかく延王がかっこよすぎる。延麒もね、泰麒とはまた別の、麒麟の苦悩というものが描かれていたなあと。

    衝撃的だったのは驪媚の行動。延麒をしばる自分の身を自ら絶ってしまう。その行動の前の語りがとても重く深く、後になってその思いの深さをより一層感じてしまう。そして白沢の『玉座の重み』の語り。

    斡由の言動、なんだか自分を見るようなところがあって、ちょっと嫌な気分に。自ら注意しよう。

    そして、妖魔の生きていける国へ。妖獣が街を歩ける国へ。これが、「月の影影の海」の楽俊と歩く港町に続き、延王との謁見につながる。いやーたまらん伏線ですねぇ。
    延王尚隆の国作り、民の期待に応えんとする姿勢。莫迦殿のように振る舞いながらも、実はよく見ている考えているあたりは読んでいて心に響く。
    「民のいない王に何の意味がある。国を頼むと民から託されているからこそ、俺は王でいられるのだぞ!その民が国など滅んでいいと言う。では俺は何のためにここにおるのだ!」と更夜と延麒六太へ語るシーン。王のあるべき姿、上に立つものの責任の重さとそれを全うすることの大事さに心揺さぶられる。
    前巻の解説にもあったけど、十二国記のルールがすごく生かされている。どんなに延王が素晴らしくても、人間の一生ではできることが知れている。ここを「王は不老不死」なんて一見ムチャクチャなルールが、時間をかけてじっくりと妖魔が住める国にしていった、という納得できる答えに導いているな、と感心。

    ふと感じたのが、ココは永野護氏のFSSと同じ世界観というか構成だなと。世界と時間が広大で、でも確固としたルールがあって。その場所ごとに時代ごとに、人の分だけ物語が出てくる。この世界ではいくらでも物語が紡がれるのだな、と。
    で、読む方はどっぷりハマるわけですわ。

    さて、今回はいまいちタイトルと中身がうまくリンクできなかったのだが。

  • 楽しみにしていた延国編!!いきなり子供を捨てる親の描写から始まりヘビーです……子供を将来的に捨てる親のところにも子供を授けるんですか天帝は。天帝も流石に未来は見えないのかしら。
    荒廃した国をどうやって作り上げるかの話。物語は延麒が地方官に攫われるところから始まります。新しい王、尚隆が王になって20年ほど。月の影 影の海から500年ほど前の時代が舞台です。麒麟は国の要だからこそそりゃ狙われますね……
    びっくりしたのは周代がモデルと聞いていたのにすでに法の概念と律令制に近い何かがある世界ってこと。ここまで神々にきつく支配されている世界なのに社会の仕組みは発達するんだな。
    調べてみたら周代の封建制が元のようですね。もうちょっと官僚を登用する基準が明確であれば良いのですがそこまでにたどりついていないのかもしれません。科挙とかなさそうだし……
    一度託された国を滅ぼしてしまった尚隆が雁国を今度こそは豊かにする。全ての民を幸せにすると思って動く話であったのだと知り、延麒六太の目線で見るこの十二国は今までで一番リアリティを持って私の目に映りました。今のところシリーズ通して1番感情移入できるのが雁国の麒、六太かと思います。六太が動いたことにより尊い命が奪われてしまったことも顧みながら、尚隆と六太と雁国のみんなは500年に渡る大王朝を作るのだ。その始まりの話なのだなと思いました。

    誰かが自分のために何かをしてくれるのではないか、誰かが自分を大切にしてくれるのではないかと期待を寄せることはとても大切なことだけれども、しかし期待を寄せすぎると寄せられた相手は奢るし苦しむ。それは王侯であっても変わらない。まずは己が己自身のためにできることをやっていくしかないのだという話だとも思えた。

    しかしさぁ〜〜官僚登用システムの基準が明確でないのに官僚になれたら仙人になれて長生きできるのやっぱり国の発展を阻害しない?だっておんなじ人が延々と政治やり続けるんでしょう?新しい風が入りにくいしそりゃ胎果の王や麒麟の治める国が長続きするのは当然じゃない?とか思っていたら解説の養老孟司先生に「まずは読め」と諭されました。読みます。養老先生の解説も素晴らしいので是非。
    次の巻もワクワクしながら読みます。

  • 全てを背負う覚悟を持つが、おくびにも出さない。それが延王尚隆である。出番が多いとは言えないが、このエピソードは尚隆に尽きる。
    彼の言動は出鱈目に見えても意味があり、心酔した部下たちは尚隆のためなら命を賭してくれる。
    そして、ここがポイントなのだが、全ての言動に隠された真意があるわけではなく、単に羽目を外しているだけだと思えるエピソードがあるのだ。
    格好いい、というしかない。

  • 雁国に尚隆が王に就いた20年後の話。
    元州斡由の謀反内乱、を経て国、臣下や六太(雁国麒麟)の成長が描かれていた。

    最初や最後の少しラノベっぽいイチャコラ感が苦手だったけれど、物語は急転直下の大騒動。
    女性の役割もとても尊いです。兵役志願する若い母親、驪媚や元州の女官… 胸をうたれた。
    国を司る者たちにとっては寿命がないので、
    時はほぼ永遠だけれど、民には違うから焦る。
    六太だって直感で王を選んだ13の時の見た目のまま、33年生きても人のなり、理なぞ未だ詠みきれない。
    後世に500年続く王とはどんなものか
    全編とてもドキドキして楽しめました。

    斡由の厚顔さったら… こういう人いますよね実際。

    設定も細かく、どんどんハマって行くけれど、壮大すぎる。どんどん広がる風呂敷ちゃんとたたまるのだろうか?
    小野先生の世界へもう足を踏み入れてしまったのであとは楽しむだけ。
    続きが気になります。

    ■尚隆の着眼大局な采配。
    朱衡:秋官(法整備、裁判、外交)の朝士。
       位は下大夫。
    帷湍:地官 (土地、戸籍の管理)の遂人(山野、治水の管理)。
       位は中大夫。
    成笙:夏官 (軍事、警備。警邏・土木事業。
       地誌の編纂。)の大僕(平時、内宮での王の身辺警護。小臣の指揮。)
       位は下大夫。
    驪媚:元州牧伯。
       元は秋官の司刑(裁判を司り、刑の最終的な決を下す)官。位は下大夫だったが、
       王の勅命により州にあって州侯を監視・監督する牧伯になった。位は卿伯。

    ■雁国元州の重要人物
    斡由:元州侯元魁の息子。実権を握る。
    院白沢:元・元州州宰で、斡由の部下。
    更夜:元州夏官射士(貴人の私的な護衛官の長)

  • 十二国記のエピソード3。
    延王と延麒の物語。

    内乱が起きて戦いになるのかと思いきや、、ならない笑
    作者は戦いのストーリーは好きじゃないのかな。

    延王が戦国時代に村上水軍に滅ぼされてから
    こっちの世界にやってくるというあたりも歴史好きには面白いです。
    モデルは実在しなさそうですけど。。。

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著者プロフィール

大分県出身。講談社X文庫ティーンズハートでデビュー。代表作に『悪霊シリーズ』 『十二国記シリーズ』『東亰異問』『屍鬼』など。重厚な世界観、繊細な人物描写、 怒濤の展開のホラー・ミステリー作品で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『悪夢の棲む家 ゴーストハント(1)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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