用心棒日月抄 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (519ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101247014

感想・レビュー・書評

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  • 藩主暗殺の陰謀を知ってしまった故に許嫁の父を斬り脱藩、刺客に追われる身となった青江又八郎。
    江戸の裏長屋に暮らし、用心棒稼業で糊口をしのぐが、浅野内匠頭の刃傷事件からの浅野浪士討ち入りの噂が流布するにつれ、請け負う仕事に浅野、吉良両家の争いの匂いが立ち込める。
    10篇の連作は忠臣蔵に関わる浅野浪士の動きと心情をとらえている。

    そして青江個人は用心棒生活を続けるうちに時として感じる堅苦しい侍暮らしからの解放感と、そんな暮らしに満足してしまいそうな堕ちていく自分を良しとしないせめぎあいに心を痛める。
    許嫁の娘が自分を仇として討ちに来るならば討たれようという気持ちになる理由の一つにはそんな自分の人生を終わらせたいという思いがあるのではないかと感じた。

  • 以前、蝉しぐれの周辺を調べた際に、蝉しぐれの映画化の折に出版されたムック本で、作家たちが好きな藤沢作品は?ときかれて、この本を挙げるひとが多いのをみて、私も気になって読んでみた。
    事情があって脱藩した青江又八郎が、江戸に出て、ちょっとわけありな仕事斡旋業者、相模屋のタヌキ親父・吉蔵に頼んで、主に用心棒稼業を世話してもらいながら、そこでのアクシデントを体験していく連作集。
    そのなかで、浅野家の浪人たちが吉良邸への討ち入りを計画していることと関わっていく。
    同僚、細谷もユーモラス。全体にシニカルな明るさがある。
    デビュー以降、暗い作風が続いた藤沢作品が、ここから転換点を迎えたと表される作品で、確かに明暗、重軽、乾湿のバランスが絶妙な作品。

    奇妙な縁で、浅野の浪人たちを見知っていた又八郎が、討ち入りののち、本懐を遂げて練り歩く彼らを見た独白。
    堀部にしろ、大石にしろただの男たちだったと思い返すと、命をかけて復讐ということを仕とげた男たちのけな気さが胸にせまってくるようだった。(p461)

    国許に変えるも、意外にアッサリしたラストに驚き。
    最後の女暗殺者はなんだろう?おりんはどうなったんだろう?

    主人公が特になんの努力もなく、女にモテやすいのは藤沢作品共通のナゾ。

  • 家の事情にわが身の事情、用心棒の赴くところ、ドラマがある。青江又八郎は二十六歳、故あって人を斬り脱藩、国許からの刺客に追われながらの用心棒稼業。だが、巷間を騒がす赤穂浪人の隠れた動きが活発になるにつれて、請負う仕事はなぜか、浅野・吉良両家の争いの周辺に……。

  • 良かった

  • 時代劇の主人公はこうでなくては、と定番の心地よさがあった。敵の人相は大抵頬がこけてどす黒い。堅物すぎず、女性関係も程よく楽しむ。斬り合いの描写は長い立ち回りではなく、一瞬の勝負が多くリアルだった。

  • 藩の悪事を知ってしまい脱藩して江戸で用心棒を生業とする二十六歳の主人公が出会う事件や庶民の生活を描いてます。藩からの刺客や赤穂浪士・吉良家の闘いを絡ませて、一つ一つの事件を全体の物語として繋げています。
    良くも悪くも引っ掛かりがなく、つるっと面白く読める江戸チャンバラ活劇でした。

  • 久々に自主課題図書以外の本。
    息抜きバンザイ。

    初「藤沢周平」でした。面白かったです。
    主人公・青江がものすっごい格好よかった。男前。
    時代モノに出てくる男前って、周りの女たちが純情で慎ましくて尻の軽い、つまりは都合のイイ女ばっかりでイラッとするんだけど、(少なくとも私の読んだ本は。「かわせみ」とか「はやぶさ」とか。)これはギリ許容範囲。OKOK。

    それにしても、マイテーマ「日本人論」に必ず出てくる忠臣蔵。
    息抜きのつもりだったのに、こんなところでも出会うとは。
    何か日本人の心の琴線に触れるものがあるんだろーなあ。
    ううむ。きちんと調べなくてはならんだろうか。

  • これは、、、
    読んでみてわかったのが、昔NHKで放送された時代劇「腕におぼえあり」の原作だ、ってことだ。
    いやー村上弘明が青江又八郎役でかっこよかったのだ!!
    で、本の内容に戻ると。
    とある事情で脱藩した青江又八郎が江戸へ来て、祖国の敵が放つ刺客に対峙しつつ、用心棒で食いぶちを稼ぐという話である。
    一話完結にはなっているが、シリーズ第一作目のこの巻は、吉良上野介と浅野内匠頭の
    刃傷沙汰事件を中心に話が進んでゆく。
    何かの書評に書いてあったが、確かにこの巻では、青江の人格っていうかポリシーがいまいちはっきりしていない。
    個性があまり感じられないのである。
    やむない事情で自国を逃れ、半分は世情に押し流され生きているように見える。
    ま、著者がシリーズものとして書き始めたとしたなら、この巻はまだ序盤だということなのだろう。
    今後に期待(面白くなりそう♪)。

  • しみじみと、良かった。主人公達が、今でいえば専門職フリーター(浪人)で、生活に追われて様々なバイト(しばしば危険手当の高額手当て付)に励み、事件に遭う。主人公の、若いながら飄々とした高潔なキャラクターと生活苦のアンマッチが面白い。
    訳ありの過去により仇持ちとなっている主人公は、しばしば刺客に襲われ、また、主人公らのバイト生活は、所々で忠臣蔵の仇討ちに纏わる関係者の暗躍とバッティングするため、かなりハラハラ感が煽られる。面白い。予想外のラストには救われた。

  • 藤沢周平の時代劇は面白いな~。続編もある様なので読んでみよう。

著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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