日本人の矜持―九人との対話 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101248103

作品紹介・あらすじ

国家は将来ある子供たちの芽を摘もうとしている。英語早期教育、薄い国語教科書、愚かな平等教育、歪んだ個性の尊重-。真に身につけるべきは、読書による国語力、基礎の反復訓練による我慢力、儚いものの美を感得する感受性、歌う心、卑怯を憎む心。そして、大人たちは、カネと論理を妄信するアメリカ化を避けねばならない。碩学賢者九名が我らが藤原先生と縦横無尽に語り合う。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は筆者と9人のゲストによる対談を1冊にまとめたものです。「英語よりも日本語」「ゆとり教育よりも詰め込み教育」「読書の大切さ」といったことが縦横無尽に語られており、読んでいて面白かったです。

    これは、楽天の三木谷氏による『たかが英語!』と並行して読んでいましたので、なんとも感慨深いものがあり、もはやほとんど聞かなくなった『矜持』という言葉を久々に聞いた感じがします。手にとって読んだきっかけは筆者の対談相手の一人に作家(ここに紹介されているときは『起訴休職外務事務官』という肩書きがついていた)の佐藤優氏がいたというのがきっかけでありました。

    僕は筆者が有名な数学者であるということも読み終えた後に知るという体たらくでありましたが、そのこと事態に関しては本書を読むのにはあまりマイナスにはなりませんでした。対談の相手といたしましては齋藤孝氏、ビートたけし氏、五木寛之氏、山田太一氏、阿川弘之氏などとの9人であり、各分野の碩学ぞろいで、どの人とも穏やかな雰囲気で対談が進められたのだろうなと行間から察せられます。

    齋藤氏とは英語教育よりも国語教育の必要性を論じ、佐藤優氏とはロシアとインテリジェンスの世界とロシア人の発するシグナルを理解できなくなってしまった日本外務省の体たらくを嘆き、五木寛之氏とは歌謡曲の叙情性を論じながらも満州引き上げの壮絶な体験を語り合う姿には本当に引き寄せられるものがありました。さらに、ビートたけし氏との対談では全ての問題に対して「イッツ・ソー・イージー」と言う事の大切さを語り、阿川弘之氏とは『たかが経済』という僕も含めてほぼ全ての日本人にはいえないであろうことを語っており、9人9様の人柄と筆者の教育観や人間観が垣間見えて面白かったです。

  • 現代日本のあり方を問題視し、どのような解決策があるかを九人の文化人と藤原正彦氏が対談した一冊。
    藤原氏の父は新田次郎。教育が市場原理偏重の実利主義になっていることを問題視し、子供にはとにかく読書させることが大切との主張が重ねて述べられている。本を通して過去の人々と交信でき、そこから忍耐、誠実、慈愛、正義、惻隠といった日本が古来から大切にしている価値観を学べる。
    た、文化を学べばそこにある美しさも体得でき、それは他の学問にも応用できる。数学では数式の美しい方が常に正しく、醜い方は間違っているという。
    文化に裏打ちされた美的感覚があるから、日本は世界でも有数の数学王国だという。
    外国語の力も母国語の能力に比例するので、まずは国語の時間を増やすのが先決と、数理学の名誉教授である藤原氏が断言していることが説得力を生んでいる。
    対談相手の一人、山田太一氏の随筆集がとてもよかったので、彼の他の随筆も読みたくて手に取った本。本を開くまで随筆集だと思っていたけれど、実は対談集だった。
    でも、内容は私の好み。
    読書が大切というだけあって、魅力的な本の紹介が多々あったので、それらも読んでいきたい。

  • 学校教育を憂える。国語教育の重要性を説く。小学生には押しつけの教育でよい。数学には美的感受性と忍耐が必要。頑張って解けた快感は、暗記の社会科では味わえない。数学パズルをやりたくなってきた。2020.7.18

  • 読了 20200417

  •  その国にとって先人が培ってきた歴史と伝統という大切な「価値」を未来永劫に渡り繋いでいくということの重要性は言を俟たないところです。
     そのため、その国の未来を担ってくれる少年少女への教育がいかに大切かはいう間でもないことであります。
     この本で藤原正彦さんと対談された方々の言われる日本の伝統的な価値がどれだけ世界の人々が憧憬の念でもって眺めているのか、改めて感じさせられました。
     イギリスと日本との類似性、ビートたけしさんの数学好き、佐藤優さんのインテリジェンスなどなど、ユーモアあふれる対談、あっという間に楽しく読めてしまいました(笑)

  • 齋藤孝、中西輝政、曽野綾子、山田太一、佐藤優、五木寛之、ビートたけし、佐藤愛子、阿川弘之らとの対談集。どれも滅法面白い。佐藤優に冴えがないのは保守派の藤原を警戒したためだろう(笑)。五木寛之なんぞは自虐史観の持ち主だが、古い歌謡曲を巡るやり取りには阿吽(あうん)の呼吸すら感じた。
    https://sessendo.blogspot.com/2019/02/blog-post_59.html

  • 藤原正彦さんの対話9編を収めた一冊。

    中でも、ワタシが好きなのは、齋藤孝
    さんとの対談と、曽野綾子さんとの対談。

    他の著書でも藤原さんが力説されている
    国語の重要性、読書の重要性について
    このお二方と語っているくだりは、この
    主張に賛同するワタシとしてはイチオシの
    ポイント。

    齋藤さんが「藤原さんが文部科学大臣に
    なればいい」と言うのも頷ける。
    ただ、それを受けて「失言ですぐクビに
    なる」と言う藤原さんの言葉にも頷ける(笑)。


    ただ、佐藤愛子さんとの対談には、ちょっと
    違和感が。ケータイ・メールや「2ちゃんねる」
    に関するところは、ちょっと不勉強じゃないの?
    と突っ込みを入れたくなった。


    ところで、本書のタイトル『日本人の矜持』を
    藤原さんがあとがきの中で自画自賛している。
    矜持…確かに今忘れられがちだけれど、絶対に
    持っていなければいけないものだ、という思いが
    本書を読むと強くなる。

  • 著者と文化人・碩学9人(齋藤孝、中西輝政、曽野綾子、山田太一、佐藤優、五木寛之、ビートたけし、佐藤愛子、阿川弘之)との対談。

    主なテーマは教育論。読み書きそろばんが基本中の基本(小学校から英語教育なんてもってのほか)、美的感受性、情緒を育むことが一番大事。その為に若い頃の読書をとにかく奨励せよ、と言う著者の強い主張、頷ける。

  • 私は素直だからこういうの読むともっともだ!って思うんだけど、読書すればいいって言うのはイマイチ納得しかねるなー。自分が小さいころから本だけはたくさん読んでたのにろくな人間にならなかったから。

  • 藤原正彦はぶれない。読書は教養の土台、教養は大局観の土台。文学、芸術、歴史、思想、科学といった、実用に役立たぬ教養なくして、健全な大局観を持つのは至難である。
    大局観は日常の処理判断にはさして有用でないが、これなくして長期的視野や国家戦略は得られない。

    大局観を養うためには読書の習慣を! 国語教育は読書の習慣を身に着けさせるために。

    山田太一との対談が印象深い。
    生きているものが亡くなってしまったり、古い建物が消えてしまったりすると、欧米の人でも悲しむ。しかし、儚いものに対して美を見出しているのは日本人だけで、これは日本人の独壇場だと。如何にグローバル化されても我々は日本人であることを捨てる事は出来ない。日本人としての特性'上記のような"ものの哀れ"を感じる感性)を活かしつつ勝負すべきではないかと個人的には思う。

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著者プロフィール

お茶の水女子大学名誉教授

「2020年 『本屋を守れ 読書とは国力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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