- Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101252339
感想・レビュー・書評
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臨床心理学者として河合先生は、患者さんが直っていく過程はその人のならではの”物語”を自ら獲得していくことであり、医者は隣で話を聞いているだけだと述べられていた。
本書は児童文学から学術書まで、多くの書物を通じて人の心の働きを読み伝えようとしたもの。優れた文学作品が人の心の深い動きに触発され、登場する人物の”物語”を伝えるのであれば、そこに人の心の働きを読み解く鍵が存在しているはず。
我々が通常生活の中で意識できる自我、その背後に存在する無意識の領域(エス)、この総体として人の心がある。心の扉の向こう側の無意識の世界は、時に開かれた扉から顔を出す。夢の中で無意識に自覚される事象に、心の奥深くの世界を求めたのは、ユング、フロイトをはじめとする心理学者でした。
心理学の前提なしに描かれた文学作品が、奇しくも実際の患者と類似点が見られるというところは大変面白い。
紹介される書籍を読んでいなくとも、河合先生の平易な語り口調から、いかに人の心の深い部分と関連しているのか良く伝わってきます。このような視点から未読の本を深く味わうのもまた別の楽しみでしょう。 -
凄く良い本でした。
河合隼雄さんは臨床心理学で専門的なイメージがあってなかなか手がでませんでしたが、タイトルが「心の読書教室」ということで読書が関わっているなら私も楽しく読めるかもと思って読みました。
文章は話し口調で凄く分かりやすい文章です。
隼雄さんが関西の方で関西弁なので、関東の方はしっくりくるのか分かりませんが私はすんなりと読むことができました。
読むだけでセラピーを受けているような少しづつ心の重さが軽くなってきて、本当に本当に不思議な本です。
大して、心理的なことが書いてあるわけではないのですがどこかほっとする、難しく考えなくてもいいやーというような優しく面白く軽い雰囲気がありました。
村上春樹が好きな方には是非よんでほしいと思います!
心理的な見方で村上春樹作品を読んでみたいと思いました。 -
ユング派心理学の第一人者である河合隼雄氏の最晩年の著書。
著者が「読まなきゃ損」と考える書籍を紹介し、自分はどう読んだか、どんなメッセージを受け取ったかを語るという形式になっている。
一番読みたいと思ったのは「一組の男女の関係は6通りある」と語るエマ・ユングの『内なる異性ーアニムスとアニマ』。河合氏のような洞察は不可能にしても、実際の著作に触れてみます。 -
心理学者の故・河合隼雄による書評本。心理学の観点から20冊の本を解説しています。内容は村上春樹やよしもとばななといった身近な本から、児童文学、茂木健一郎のノンフィクションまで、実に多岐にわたっています。読書好きならリストを読むだけでも楽しめるかも。読書家の方、心理学に興味のある方にオススメです。
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タイトルに惹かれて購入。著者が選んだ本を解説しつつ、人の心について解き明かした本。ここに紹介されるのはカフカ、ドストエフスキー、ユング、村上春樹、吉本ばなな、児童文学から絵本まで幅広い。私が読んだことがある作品も取り上げられていたけれど、全く読み方が違っていて、目からウロコが落ちました。色々な読み方が出来るのは文学の楽しさだなと改めて思いました。読んでみたい本が増えたので探して読みます。「人間ていうのは、ほんとうに大事なことがわかるときは、絶対に大事なものを失わないと獲得できないのではないか」この河合隼雄さんの言葉が突き刺さる。
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表紙の笑顔で星5つ・・・
河合先生がお勧めする本のなかに、
子どものころに読んだ本があり、あ・・・中学生の時に読んだ・・・と思いだしたことに軽いめまいが(笑)いったい何十年前でしょうか。
お勧めの20冊の中で、何冊読んだかなと数えてみたら
12冊読んでいた。
河合先生のこの20冊を、読んだものも含めて全部読んでみるのも楽しそうだな。
トムは真夜中の庭で の本を説明しているとき引用した部分があって、おばあちゃんが寝ているだけでも、孫にとっては心の深いところで成長の役に立っている、と河合先生は仰っていた。
他の本でも、人間生きているだけでそれだけで凄いことなのですと仰っていて、つくづくそうだなあと思うし、尊敬する河合先生が仰っていたこと、そのことがとても嬉しい。
何年経っても嬉しい。 -
20冊の本をテーマに心の扉を開く話。膨大な量の中から読む本を選ぶか?書評を参考にするか、尊敬する人の推薦するものは必ず読むとのこと。尊敬する人を増やすには、尊敬できるような人と数多く接する必要がある。対談集を数多く出してる著者や司馬遼太郎さんがすごいのはこういうところにありそうだ。もちろん、今回お薦めの本は読んでいくつもりだ。2015.5.24
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河合隼雄が4つのテーマに即して選んだ本、数冊を解説しながら、それを基にして人間の心のことを考えるという本。講演なので、各章の最後に質疑があり、理解が深まる。
それぞれの章の冒頭に、「まず読んでほしい本」数冊と、「もっと読んでみたい人のために」数冊があげられる。
小説、心理学、宗教学、児童文学、絵本・・・と幅広い。
「読まな、損やでぇ」という。
Ⅰ 私と“それ”
山田太一「遠くの声をさがして」・・・幻聴
ドストエフスキー「二重身」・・・もう一人の自分が見える
カフカ「変身」・・・引きこもりのような
バーネット「秘密の花園」・・「人間はみな心の中に庭を持っている」
Ⅱ 心の深み
村上春樹「アフターダーク」・・・無意識の世界
遠藤周作「スキャンダル」・・・聖人君子のような人の二重身のような二重人格のようなまわりの人の集団ヒステリーのような
山口昌男「道化の民族学」・・・トリックスターの重要性
吉本ばなな「ハゴロモ」・・・
センダック「かいじゅうたちのいるところ」・・・これもなかなか味のある絵本。少年が凄い世界に行って、戻ってくると、温かいご飯がそのまま残っている・・・日常の世界
Ⅲ 内なる異性・・・「心の中に異性がいる」ユング
漱石「それから」・・・東洋的な男女と西洋的な男女
シェイクスピア「ロミオとジュリエット」・・・ジュリエットは14歳だった!
桑原博史「とりかえばや物語全訳注」・・・男と女が入れ替わる
エマ・ユング「内なる異性――アニムスとアニマ」・・・理想的男性像、理想的女性像・・・二人の男女には2人分の男と二人分の女がいる・・・なので話がややこしくなる。
村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」・・・現代人の魂の問題
安部公房「砂の女」・・・凄い女性像
Ⅳ 心――おのれを超えるもの
ユング「ユング自伝――思い出・夢・思想」・・・ユングの深い体験
大江健三郎「人生の親戚」・・・自己実現の悲しみ
白洲正子「明恵上人」 ・・・明恵は河合隼雄の日本における師
茂木健一郎「脳と仮想」・・・イマジネーションは近代科学を超える -
なんかこういう読書教室読んだな…と思ったけど、中身を読んだら記憶にないことも書いてあったので再編集された本かもしれない。私にもよくわからない。
さくさく、ヌルヌルと進んでいって面白かった。
丁度家族の様子が変な時に病院で読んだのだが、「おかしなことをせずに祈ってろ」(意訳)と言われてそりゃそうだなと思った。
コントロールできないものを、畏れを持ってみつめるという行為。
関わり合う、ということ。など。
そして私の本は溜まっていき、記憶だけがフローしていくことなど。
身近なところでも、いろいろなこころの問題を抱えたケースに遭遇します。こころテーマは私自身も興味が...
身近なところでも、いろいろなこころの問題を抱えたケースに遭遇します。こころテーマは私自身も興味があり、河合先生、香山リカさん始め、社会、子供、環境、へと広がってきました。きっかけと直っていく過程をもっと深く考えてみたいのです。