安楽病棟 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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感想 : 65
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  • Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101288130

感想・レビュー・書評

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  • 長編ではあるが、ショートストーリーが集まったような構成。一つ一つ良い内容であり、考えされるものである。とても良い。

  • 戦争のクダリは多すぎだと思ったけど、現場の生の声聞いた気持ちになった。

  • 終末期医療の作品。

    閉鎖病棟も読みましたが、痴呆病棟内の描写は秀逸だとかんじました。

    ミステリーに仕上げてあるので、読み続ける愉しみも持ちつつ、また、主人公の看護師の公私ともの心の動きも興味深く読める帚木氏ならではの作品だと思います。

    看護師さんが、ある種語り部みたいな役割を担っているので、
    作品全体が優しいかんじになっているのかな。

    ただ、ミステリーとして読むとラストは、ちょっと寂しかったなあ。

  • 先輩に薦められて読んだ本、その2。最後のほうを読むまでミステリーだと気付かなかった。

  • 痴呆になりつつある数人の老人の描写から始まる。この人のようになるのかあの人のようになるのか……。それぞれの理由で痴呆病棟に入院になる。
    次は病院での様子を看護婦の目で教えてくれる。家族にとっての毎日は身内であるゆえの辛さや苦しさがあるのだと思える。仕事としてのほうが冷静に対応できるのかも知れない。痴呆になった人はもう人ではないのか?動く屍なのか?他人に迷惑をかけるなら早く死んだほうがいいのか?割り切れる回答は無いのかもしれないけれど、痴呆になっても生きていることを許していける社会だといいなと思う。
    安楽死を、死なせることを医者が選ぶのではなく自然に、命の火が消えるのがいいな。ぽっくり逝きたいと言う気持ちもある。病院で沢山の管につながれて生かされるのはいやかもしれない。
    見えてきた生の終わりを考える時期にきたと最近良く思う。

  •  安楽病棟(痴呆病棟)で働く新人看護師・城野。ここには認知症が進んで家で生活できなくなった患者さんがたくさん入院している。一口に認知症といっても症状は十人十色。基本的に回復の見込みは無い患者さんばかりだが、城野は先輩看護師達と一緒に、どうすれば患者さんが快適に過ごせるか、楽しく人生を謳歌できるか。介護を工夫したりイベントを企画したりと毎日一生懸命働いていた。

     裏表紙のあらすじを読んでこの本を購入したのは随分前である。そして、私はいざその本を読み始める時に改めてもう一度あらすじを読んでから読み始めることはしない。ということで、どんな話なのかわからないまま読み始めたのも同然だったので、これは痴呆病棟で奮闘する新人看護師と患者さんの日常が実録風に書かれている小説なんだと思いながら9割読んでいた。ところが最終章の「動屍」で雰囲気は一変。そうか、ミステリーだったのね(^^;残りの1割は食い入るように読んだが、いかんせんそれまでが冗長すぎたのが残念。主人公の城野看護師がとても熱血な優しい看護師だったおかげで、想像していたような重々しい痴呆病棟の話ではなかったのだが、もっとスマートに削れると思う。こうした病棟では切っても切れない糞尿騒動や家族と介護の問題なども、驚く程ポジティブに、そして何より患者さんのことを考えた看護がされていて、「こういう病棟や看護師さんばかりだったら幸せだなぁ」と思わされるものだったので余計にそう思った。タイトルからすると”安楽死”について書かれている部分が大半かと思われたが、そうでもなかったなぁ。それよりも、認知症介護について読みたい人に薦めたい。

  • サスペンスとしては★★。終末医療の現場をリアルに描いた作品としては★★★★★。この作品にでてくる患者さんは純粋で生き生きしており、訴えかけられる部分が多い。なのでサスペンスにしてしまったのはとても残念。

  • ラストで全てが台無し。急遽サスペンスで締めくくったという印象。凄まじい介護の現場の描写など、後で読み返したいと思えた場面も多々あっただけに残念でした。

  • 分類では医療サスペンス?だけど、小説の本質と良さとは全く違うところにある。なので本書がサスペンスの角度で紹介され、また呆け老人の行動の描写でまるで好奇心を煽るような紹介文には個人的に違和感を感じる。
    小説の構成は、病院の中の老人個人個人のストーリを集めて構成される病院の日常、新人看護婦の視点、サスペンスのキーとなる医師の講演、その後老人のあいつぐ急死、手紙での告発。
    小説後半のスピードが早く、たたみかけるような終結も箒木蓬生さんのパターンではあるが、今回も終盤で一気にギアチェンジし急にサスペンスに入った。だから医療サスペンスなんやけど、なんかちょっと奇妙。

    本質は老人医療、安楽死等の倫理を問うもので小説中に答えもなく、私にもまとまった考えはないけれど、老人ひとりひとり生きてきた人生(特に戦争を体験した人の話は今の私のブーム)と、呆け方、呆けた後の人とのかかわり方、死に方については人間ドラマが凝縮されており興味深かった。この人の書く小説は淡々と書かれているのが余計、感情を深くさせる。(日本語が謎)

    印象的で忘れられないのは、腰が痛くて曲がってしまったおばあさんが性格のキツイ実の娘に嫌味を言われ生活しにくい日常を過ごし、とうとう老人病棟への入院にあたり医者に対して語る言葉。
    「本当にもう自分の体は焼いた方が楽かなと思ったりもします。何もかも焼いてしまって煙だけになり、まっすぐ空に昇っていくのもよさそうなきがします。・・・ほんに無様な格好になってしまいました。せめて煙になるときには背をピンと伸ばして空に昇っていきたいと思います。」っていうところ。
    泣けた。

  • 面白くない。

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著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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