悪人正機 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101289229

感想・レビュー・書評

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  • 個人的に面白いと感じたところは、職業人としての一人前の基準を10年とおく根拠に自己評価の正確さを挙げていたところ。自己評価よりも高いことに手を出すなというのは妙に納得です。また、震災やフランステロ以前の対談でありながら、未来を予感させるような社会情勢の推察は見事でした。

    あとがきでは中学生に読んでもらいたいと綴ってありますが、20代後半~30歳くらいの働き始めて数年したところで出会っておきたかった本。もう少し力の抜けたものの考え方や批判的な見方もできたのかなと。

  • 「ほとんど全部の人が本当は友だちがゼロだと思うんです」

    「挫折を知らないからダメだって言われても,…「わかりました。これから挫折してみます」ってことを言えるわけじゃないし…」

    「大学は,まあ,国立公園みたいなところなんですよ」

    「10年やれば誰でも一丁前になるんです。…毎日やるのが大事なんですね。要するに,この場合は掛け算になるんです。例えば,昨日より今日は2倍巧くなったとしましょうか。で,明日もやると。そうすると2×2の4倍で,その次の日もやったら,また×2で8倍になる。だけど毎日やらずに間を空けると,足し算になっちゃうんです。…「2+2+2…」と「2×2×2…」と長くやればやるほど,全然違ってきちゃうんですよ。」

    「なるほどなぁ」っていうところはもちろんたくさんあるし,「えっ!そんな考え方ありなんですか?」っていう発言も山のようにあって,目からウロコとはまさにこのことだなぁと思った。
    大秀才といわれた夏目漱石だって,ろくに勉強せずにやんちゃばっかりしていて,一度落第しているんだという話もおもしろかった。
    要するに,「鈍な刃のほうが,実はよく切れるんだぜ」っていうこと。

    高校の音楽の先生が「糸井のアホが…」みたいなことを言っていて,僕もずっとそういう認識でいたけれど,この本に関してはGood Job!だな。

    吉本さんの意表を突く言葉の数々は肩の力を抜いてくれます。

  • 吉本隆明という人が考えたことの帰結は、人によって意見が合ったり違ったりするかもしれないですが、それよりも、感じること考えることに素直でいるそのあり方に、なんか元気をもらいました。

  • 2016/10/22:読了
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     P240ページ 『「ネット社会」ってなんだ』での糸井さんによる”吉本さんの発言要旨”ページ。
     「ITが発達することと、人間の精神の発達にはなんの関係もないのだ」という考え。こりゃ、すげぇー。
     「感覚が発達することは、魂の発達を意味しない。」
     「ITの基本にあるのは”利益”と”損害”だ、という視点は理解できるが、なにか過大に人間が変化すると思おうとしているのは遊びの範疇なんだ」と。
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     P250ページ『「情報」ってなんだ』での糸井さんによる”吉本さんの発言要旨”ページ。
     「情報は、基本的には新聞でだいたい間に合います」
     「酸素と水素を見つけられれば、水ができる」
     「分析したい問題を水としたら、酸素にあたる情報はどれで、水素に当たる情報はどれか、ということをうまく見つけることができれば、どこの国のどんな問題だって、だいたい当たるものだ」と。 

  • 「例えば、「生きる」ってなんだ? という問いにいわく「泥棒して食ったっていいんだぜ」――。ほかにも「働くのがいいなんてウソだよ」「円満な家庭なんてねえんだよ」「有名になるっておっかないことだ」……。糸井重里が、吉本隆明から引き出すコトバの数々。驚きに充ちた逆説的人生論だ。「今、中学と大学が危ない」と考える吉本さんが、若者から大人まで元気づけてくれる一冊である」 文庫本裏表紙より。
     この連載が読みたくて、週刊プレーボーイ買ってたなぁ。本になって嬉しい。読めば、「え、こんな物の見かた、考えかたがあるの!」と感心したり、唸ったり、励まされたり。糸井さんが良い聞き手となって、吉本さんの本当の言葉を伝えてくれる一冊です。

  • 普段考えることないような、もしくはその幅が広すぎるかのような身近なことを、「思想界の巨人」はどのように考えているか。平易な言葉で語ってくれている。そして聞いてまとめているのが糸井重里。うむー、これはいい。

    吉本隆明さんはあらゆるイメージの大海を縦横無尽に泳ぎ回っているんでしょうね。自分は泳ぎ方の種類も知らないし泳ぎそのものもヘタなんだろうな。

    『現在は日本の「第二の敗戦」だと思っている』
    といった言葉から
    『自己評価より下のことなら何やってもいい』
    『素質って。。。』

    自分の日常を落ち着かせるためにも、忘れたころに読み直しています。

    ちなみに、吉本隆明さんはあとがきで、「中学生に読んでもらえると嬉しい」と言ってます。是非。

  • 分かったような気になったが、たぶん分かっていない。
    感性の鋭い人は、自分が気づかないことを感じて考えながら生きているんだと実感した。吉本隆明氏の感性の鋭さはすごい。
    知識はあっても、感性が鋭くなければ宝の持ち腐れなのだとも思った。

  • 人生とは孤独との戦いである。ある青年時期に友人と一緒に過ごした人間とは深く人間を理解できるがこの時期を過ぎしたら人間同士を相互に理解することはできなくなる。

  • 友人から「もう読んだから」といただいた本


    思想界の巨人、吉本隆明氏が語る人生論。仕事とは?挫折とは?友だちとは、などなど。

    語り口調で書かれているので、読みやすいんだけど、たぶん、全部は理解できていない。パッと開いたところをぱっと読めるので、また読み返そう。きっと新しい発見があると思う。


    ・大学へ行くことは失恋の経験と似ている。がっかりすることが重要で、こんなもんかって見当がつくようになるから。憧れて過剰な思い入れみたいなのは、無駄なエネルギーを使うだけ。

    ・現代の文学はパートタイム文学。非パートタイムで、成長がたどれる現代の作家は、村上春樹で終わり。

    ・10年続ければその道のプロになる。一日も休まないことが大切。一日も休まないことで、足し算が掛け算になる。

    ・過去の友人は、自分の記憶のなかにのみ生きる

  • "うまく言葉にしにくいんだけどとても大切な感情・感覚"をとても軽やかに語られていて、「そう、そうなんだよ!うひゃー!」と何度も感じた。脳みそほぐされました。

著者プロフィール

1924年、東京・月島生まれ。詩人、文芸批評家、思想家。東京工業大学工学部電気化学科卒業後、工場に勤務しながら詩作や評論活動をつづける。日本の戦後思想に大きな影響を与え「戦後思想界の巨人」と呼ばれる。著書多数。2012年3月16日逝去。

「2023年 『吉本隆明全集33 1999-2001』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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