きつねのはなし (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101290522

感想・レビュー・書評

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  • いつもの森見登美彦節は少し鳴りを潜めるがクセはある。怪談も書けるんですね、読者に委ねる部分というか、考えて繋げる部分がある。面白かった。再読するときっと再発見があると思う。二度読み確定。

  • ファンタジー色の強い森見さんの作品に最近はまっていて手に取った一冊。
    その中でもホラー寄りではあるが、怖いというよりも不思議な正体のつかめなさが強く出ていて、そこが好きなところ。

    いつも通り京都を舞台にしていて、古道具を扱う芳蓮堂、胴の長い狐のような化け物、狐面の男などの複数の作品に共通する人物や小物が登場する。
    しかし少しずつ描写が違ったりしていて、本当に同じものなのか実は違うのか、並行世界にあるのかなどの想像の余地のあるはっきりしない感じがいい。

    「きつねのはなし」☆☆☆☆
    指定されたものを差し出せば、それと引き換えに何か願いをかなえてくれる狐面の男の話。
    どうやら要求されるものは段々価値が高くなっているようで、最終的に「もう君は私の欲しいものを持っていない」「可哀相に」と言われた時の絶望感たるや。

    「果実の中の龍」☆☆☆☆
    主人公の大学の先輩は大学を休学してシルクロードを旅したという男で、ほかにも京都市内のあちこちでバイトをしていたり変わった経歴を持っていて、とにかく経験豊富で話題の尽きない人であった。
    しかし、先輩の彼女は彼について「つまらない人」だと評している。
    それはどういう意味なのか。

    先輩は狂気に飲まれつつも、自らそれを理解している様子だ。
    でもそれなら、クリスマスの日の振る舞いは何だったのか。
    自分がおかしいとわかっていながらあの振る舞いだったのか、それとも完全に狂気に飲まれてしまったのか。

    「魔」☆☆
    狐のような胴の長いケモノに襲われる事件が起き、町内では見回りを強化していた。
    しかし、見回りを行う登場人物の誰もが怪しい挙動をしており、また互いに警戒しているようでもある。
    その不穏な空気がとてもよかったのだが、最後の最後に「魔王決戦!俺たちの戦いはこれからだ!先生の次回作にご期待ください!-完-」みたいな終わりになったのが残念。

    「水神」☆☆☆
    主人公の祖父が亡くなり、その葬式で水にまつわる不思議な出来事が起こる。
    古い家屋に歴史のある一族が出てきて、呪いに水神といかにもジャパニーズホラーっぽい作品。
    結局どういう理屈の話だったのかはっきりしないが、そこがいい。

  • 京都の町、日常に何かが潜んでいる、じりじりとした不気味さのある話。

    ぞっとする怖さではなく、気がついたら日が暮れていて、1人置き去りにされたような心細い気持ちになる。

    2021年9月8日

  • 読んでいて終始湿度の高いジメッとした雰囲気を感じれる作品。
    いつもの森見登美彦さんの作品と同じなようで、毎度おなじみ京都物語からポップさと阿保な大学生を排して、不気味さとヌメッとさと無表情の何かをプラスした。そんなイメージ。
    あとはいつもの幻想的な京都。そこはいつも通り。と思いつつ、話の雰囲気が違うだけで同じ場所でもガラッと恐ろしい不気味な夜道を想像してしまう。そこは言葉で表現しにくいので読んで体感じて欲しい…!
    ホラー作品と呼べる今作だけど、呪いや人の悪や殺意など一般的なホラー描写はなく、闇に潜んで本能に訴えかけてくる不気味さのようなモノを感じる作品。恐怖というより不気味。
    4つの短編からなる今作だがそれぞれ全く別の作品というわけでもなく、同じ京都が舞台であるが故に同様の店、物が登場したり、恐らく同様の獣が姿を見せる。しかし、今作品全てに共通して最後まで読んでもハッキリとせずよくわからないまま終わるため何故なのか?という疑問は解決しない。まぁそこが不気味さをさらに際立てているのかも!
    また、特に最後の「水神」に見て取れたが、段落が変わるごとになんの脈絡もなく話が変わる、もしくわ途切れるため、??となることがしばしばあり、少々読みづらいところがある。
    しかし全体を通して何故か引き込まれて、スルッと読み終わってしまう。そんな本でした。

  • 摩訶不思議な短編集。
    ともすれば後味の悪い話になりそうだが、読後感は悪くない。
    まさに、きつねにつままれたような感じ。
    それぞれの話は、つながっているようでつながっていないのか。それすらも分からないが、想像を掻き立てられてよい。

  • 昔、京都に住んでいたことがあり出町柳、今出川、下賀茂神社、高野橋、一乗寺、北白川等ちょうど私が住んでいた生活県内の話で懐かしさがあった。確かに京都と言えば一本、道を入れば摩訶不思議尾なイメージがあり、魑魅魍魎が跋扈する町、怨念や嫉妬、祟りや妖気が渦巻く町とよく形容されるが、こういう話を持ち出されるとまた違った怖さが。話自体も結末はぼやかしているので読み手にある程度ゆだねているし、暗闇の中から何かがこちらを視ているのではという想像を掻き立てられた。万城目学さんの「鴨川ホルモー」とはまた違った切り口で京都の街の怪奇を読まさせていただいた。少し読むのに苦労はしたが、ホラーテイストで面白かった。

  • 面白かった。現実と非現実の境目をふらふら歩くような気持ち。日常にひと匙の不思議を垂らしたような、ちょうど良いトリップ感。果実の中の龍が好きかも。

  • 京都と狐。
    ぼんやり不思議な雰囲気が漂う

  • 読んでなかった森見シリーズ第2弾。
    何か得体の知れないものが、ずっと流れてる。胴の長いケモノと芳蓮堂という古道具屋が共通だけど、答えはない。吉田神社、荒神橋を始め、馴染みの土地の風景を思い浮かべながら読んだ。

  • いつものごとく京都を舞台にし、現実と幻想の間を行ったり来たりと言う感じなのですが、異なるのは他の作品よりも暗いこと。

    ふっと気づくと暗闇が迫ってる感じ。
    結局、得体の知れないものはなんだったのか。
    芳蓮堂は何者なのか。
    4つの話は同じ世界線なのか。

    煙に巻かれたようなお話たちでした。

著者プロフィール

1979年、奈良県生まれ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。2003年『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。07年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を受賞。同作品は、本屋大賞2位にも選ばれる。著書に『きつねのはなし』『有頂天家族』など。

「2022年 『四畳半タイムマシンブルース』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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